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九州地方環境事務所

ツシマヤマネコニュース

ツシマヤマネコ死亡個体の死因究明結果について(お知らせ)

2012年01月06日
ツシマヤマネコニュース
平成23年7月6日に対馬市上県町鹿見で収容されたツシマヤマネコ幼獣の死体について、死因の特定のための検査の結果、死亡個体の咬傷からイエネコのDNAが検出されたこと等から、イエネコによる攻撃が死亡につながった可能性が高いことがわかりましたので、お知らせいたします。

Ⅰ.死亡個体について
1 収容された経緯
平成23年7月6日(水)午前9時頃、上県地域活性化センターを経由して、地域住民からツシマヤマネコの死体があり、カラスにつつかれているとの連絡があり、対馬野生生物保護センター職員が現場に向かい、対馬市上県町鹿見の道路上に横たわっている死体を回収し、午前11時頃に対馬野生生物保護センターに収容しました。

2 個体の情報
(1)性別 メス
(2)年齢 幼獣
(3)体重 360g(死体の一部が欠損していたため参考値)

Ⅱ.死因の究明の経緯について
1 外景検査
  収容後、対馬野生生物保護センターで行った外景検査により、左前肢内測に皮下出血を認めました。

2 病理検査
山口大学農学部獣医学科獣医病理学研究室(久保正仁助教)に依頼した病理検査の結果では左肩甲骨の骨折、左肩甲骨周囲の皮膚における2つの孔、一部頸椎の欠損、が認められ、何らかの小動物による咬傷の可能性が示唆されました。

3 咬傷周辺組織のDNA検査
長崎県環境保健研究センターに依頼した、咬傷部周辺組織のDNA検査の結果、死亡個体の咬傷部周辺の組織からイエネコのDNAが検出されました。

4 死因について
  保護個体は若干やせ気味ではあったものの、衰弱により死亡するほどではなかったと考えられます。イエネコによる咬傷により瀕死の状態となった可能性が高いと考えられます。

Ⅲ. 今後の対策について
 対馬市及び長崎県と協力し、対馬市ネコ適正飼養条例に基づき、ネコの適正飼養の徹底を図るため、市の広報等による普及啓発を全島的に行う予定です。
  

参考1 イエネコによるツシマヤマネコへの被害状況
イエネコによってかみ殺されたと考えられるツシマヤマネコは、これまで認められていません。これまでに1頭がイエネコに咬まれたため保護されています。
イエネコの感染症であるネコ免疫不全ウイルス(FIV。通称ネコエイズウイルス)に感染したツシマヤマネコはこれまでに3頭が確認されています。また、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染したツシマヤマネコがこれまでに1頭確認されています。これらのツシマヤマネコは、闘争などによりイエネコからウイルスを感染させられたと考えられています。

参考2 対馬市におけるネコの適正飼養推進事業について
 対馬市ネコ適正飼養条例により、市内の飼いネコにはマイクロチップによる個体登録が義務づけられています。また、不妊化処置と室内飼育が推奨されています。
 現在対馬市では、対馬地区ネコ適正飼養推進連絡協議会により「ネコの健康生活サポートキャンペーン」が展開されています。このキャンペーンは、対馬市内の飼いネコにマイクロチップによる個体登録、不妊化処置、ワクチン接種などを無料で提供するものです。前身となる活動は九州地区獣医師会連合会によって平成12年から開始されており、平成23年11月末までに1948頭のネコが対象となり1665頭がマイクロチップによる個体登録を受けています。