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九州地方環境事務所

ツシマヤマネコニュース

ツシマヤマネコ死亡個体の死因究明結果について(お知らせ)

2011年05月18日
ツシマヤマネコニュース
平成22年12月24日に対馬市上県町佐護の国道で収容されたツシマヤマネコの死体について、国道上で発見された事から当初交通事故による死亡であるとして公表しましたが、現場及び死体の状況から死亡には交通事故以外の要因が関与していることが示唆されたため、死因の特定のための検査を行った結果、死亡個体の咬傷からイヌのDNAが検出されました。この結果、死因としてイヌによる攻撃が強く推測される結果となりましたので、お知らせいたします。
 平成4年以降、野犬や放し飼いのイヌによってかみ殺されたと推測されたツシマヤマネコの死体は、これまでにも5件収容され、ヤマネコの減少要因の一つと考えられています。
 今回の結果も受けて、対馬野生生物保護センター(以下、「センター」といいます。)では、長崎県ならびに対馬市と協力し、法令に基づくイヌの適正飼養(登録、けい留の義務)徹底のための普及啓発を全島的に行う予定です。


Ⅰ.死亡個体について
1 死体が収容された経緯
  平成22年12月24日(金)午前7時半頃、対馬市上県町佐護の国道で死亡しているツシマヤマネコをセンター職員が発見し、センターにツシマヤマネコの死体を収容しました。

2 死体の個体情報
(1)性別 ♀
(2)年齢 成獣
(3)体重 1,980g
(4)個体の状況 栄養状態良好。経産。外傷はほとんどなかった。
(5)死因 イヌによる攻撃
(6)FIV、FeLV検査 簡易検査で陰性
   (FIV:ネコ免疫不全ウイルス、FeLV:ネコ白血病ウイルス)

Ⅱ.死因の究明の経緯について
平成22年12月24日に収容されたツシマヤマネコについては、国立環境研究所及び長崎県環境保健研究センターにおいて、個体に認められた創傷周囲組織のDNA検査を実施した。
 その結果、両検査機関でイヌのDNAが検出されたことから、病理解剖所見と合わせてツシマヤマネコの死因を交通事故でなく、イヌによる攻撃であることが強く推測されるものと判断した。

○発見当時の状況で、交通事故以外の要因が関与していると示唆された点
現場の状況
・回収後も頚部背側からの出血は続いていたが、路上に残された血痕が少なかった
死体の状況
・骨折が少ない
・右を下に倒れていたにも関わらず、右眼球が欠失し、周辺から発見されなかった(鳥につつかれたのなら、上側の左眼の方がつつきやすい)
・頚部背側に深い穿孔創があり、そこから出血が続いていた

○剖検所見で交通事故以外の要因が関与していると示唆された点
・頭蓋骨が無傷で環椎(第一頚椎)のみ骨折している(直接の死因は環椎骨折による脊髄の損傷)
・頚部背側の穿孔創
・穿孔創と環椎の骨折部位は位置が一致する

【検査の経過】
2010年12月24日 死体収容、外部計測等実施後、病理解剖のために山口大学へ送付
12月25日 山口大学で病理検査実施、概要報告
2011年 4月20日 国立環境研究所、長崎県環境保健研究センターへ創傷部位の
サンプル送付
    4月28日 県環境保健研究センターより分析結果報告(イヌDNA検出)
    5月 8日 国立環境研究所より分析結果報告(イヌDNA検出)

Ⅲ. 今後の対策について
 長崎県ならびに対馬市と協力し、狂犬病予防法及び対馬市犬取締条例に基づき、イヌの適正飼養(登録、けい留の義務)の徹底を図るため、以下の内容について対馬野生生物保護センターでの掲示や市の広報等による普及啓発を全島的に行う予定です。
  また、今回の事故が発生した佐護区では回覧による広報等、より重点的な対策を実施するよう検討しています。
・イヌの放し飼いは、対馬市の条例違反であり、人のみならず、イヌやネコなど市民の飼育するペット、ツシマヤマネコや野鳥などを殺傷する恐れがあること
・こうした事故を防ぐためにも、イヌを飼育する場合には必ず登録し、けい留すること

参考1 イヌによるツシマヤマネコへの被害状況
野犬や放し飼いのイヌによってかみ殺されたと考えられるツシマヤマネコの死体は、今回を除いて、平成4年以降5頭収容しています。内訳は、成獣が3頭、亜成獣が1頭、幼獣が1頭でした。
イヌに咬まれている所を目撃されたのが1件、咬み跡があったことからイヌによるものと推測したものが3件、DNA検査によってイヌによる咬傷であることが強く推測されたのは、今回が2件目です。

参考2 イヌの飼育について
 イヌを飼育する場合、飼い主には、狂犬病予防法により犬の登録と鑑札等の装着が義務づけられており、これに違反した場合は20万円以下の罰金が科されます。
また、対馬市犬取締条例により、飼い主にはイヌをけい留することが義務づけられており、これに違反し、かつ、人畜その他に被害を与えた犬の飼い主には2万円以下の罰金が科されます(警察犬、狩猟犬をその目的のために使用するとき等を除く)。