対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第7号

 

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フィールドノートから 捕獲編


 1999年3月までで飼育下繁殖のための個体確保は一段落ついた。というのも、目標であったオス3頭・メス2頭を捕獲して、飼育繁殖施設である福岡市動物園のツシマヤマネコ獣舎がいっぱいになったからである。しかし、生態や行動を明らかにすることを目的としたテレメトリー調査のための捕獲は今後も継続することになる。テレメトリー調査と一言で片づけられてもどういったことをやるのかなんてのはわかりづらいことだと思う。で、その調査の実態はどんなものなのか、というところから話を始めることにしよう。

 テレメ調査を行うためには、まず何といっても捕獲をしないことには始まらない。捕獲を成功させるためにはその前にやるべき事がたくさんある。周到な計画を立てたうえで、法律に基づく捕獲申請ってのをやらないと動物を捕まえることはできない。ツシマヤマネコの場合は、鳥獣保護法・文化財保護法・種の保存法、と3つの法律で保護されているので、それぞれの許可が必要だ。許可が得られたら捕獲場所の選定をする。今回は対馬野生生物保護センターの近くでフンがよくみられる、ヤマネコが頻繁に利用していそうな場所に決めた。捕獲する何ヶ月も前から、熱感センサー付きの自動撮影カメラを使ってヤマネコが来ているかどうかを確認する。それでその場所にヤマネコが来ていることがわかると、今度はワナをおいて様子を見る。つまりワナに馴らすのである。最初からワナを何とも思わない奴もいれば、警戒してなかなか馴れない奴もいる。

 ヤマネコがワナに馴れてくると捕獲用の機材の設置にとりかかる。生捕り捕獲には何通りかのやり方があるが、当センターでは、CCDカメラを通してモニターで実地に観察しながら遠隔操作でワナを閉じる方式で捕獲を行っている。観察しながらの捕獲では、ターゲット以外を間違って捕獲することがなく、捕りたいものだけに的を絞ることができる。つまり誘引さえできれば、捕りたい時にどんな個体でも安全に捕れるということである。CCDカメラ用ケーブルとワナ閉じ用ケーブルの2本を基地(センター)まで引いてこないといけないが、これが結構骨の折れる作業だ。何せケーブルが重い。一通りの作業が終わると、いよいよ捕獲作業に入る。

 捕獲個体の健康検査をしていただく獣医さんともスケジュールの調整をして、いよいよ捕獲予定日当日、モニターはきちんと写るか、バッテリーの充電は完璧か、そしてワナはちゃんと閉じられるか、その全てを確認してからワナをセットして待機開始。一晩中待っても姿を現さないこともあるので、緊張の維持が難しい。今回は、しばらく待つとヤマネコが姿を現した。あたりを警戒しながらワナの中に頭を突っ込む。「よし入った!」が、頭を突っ込んだだけで出てしまった。ほどなく再びやって来た。今度は“すーっ”と中に入った。あと2歩入ったらワナを開じようとスイッチを持つ手にもカが入る。10秒が長く感じる。何秒過ぎただろうか、ついにすっぽりとワナの中に入ってしまった。「今だっ!」とスイッチを押した。
 モニターで捕獲できたことを確認して車で現場に向かう。現場に着くとヤマネコはワナの中で意外にもおとなしくしているが、近づくと「フーッ!」と威嚇してくる。とてもきれいなヤマネコだ。ワナごと車でセンターに運ぶ。検疫室のケージに移し替えると捕獲作業終了。やれやれ。(次号につづく)  <Mk>


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