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とらやまの森第7号

 

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「対馬の7ヶ月での私の動物体験」


長崎県対馬支庁地域振興課
松永順子

 本誌第4号に登場した丈下(じょうした)技師の後任で、4月から対馬に住んでいる松永です。支庁での業務については第4号で紹介済みですので、私は対馬に来てから今までに出会った動物について書かせていただきます。
 私は就職するまでずっと東京で育ち、仕事で神奈川県箱根町に引っ越したのが11年前、9年前に雲仙に転勤してから海の近くの山の中で暮らしてきました。自然に興味がある私たち家族にとって対馬はとても魅力のある場所で、8年前には夏休みに4泊(欠航で1泊増えました)して全島の浦々を回ったことがありました。そのときは滞在期間が短かったので、ダンギクやツシマママコナなどの植物と古墳での記念写真などがアルバムに残っていますが、今回は何年間も住むわけですから、ツシマヤマネコに代表される対馬にしかいない動物や珍しい野鳥を見るチャンスを期待して赴任してきました。
 第1の発見は引っ越した日、厳原町久田の家の庭でうろうろ遊んでいた息子(小2)が、「オレンジ色の変な虫がいる」と呼ぶので見てみると、石の上にウニの身が!・・・ツシマナメクジでした。かわいいので写真を飾っています。(白黒印刷では普通のナメクジと一緒なので残念ですが掲載しません。)
 さらに翌日、夫(40歳)と子供が家の中で荷物を片づけていると、裏の空き地に珍しい鳥の姿が・・・ヤツガシラでした。(残念ながら私は仕事に行っていて見られませんでした。)
 豆酘(つつ)方面に車で出かけると、ツシマテンにはよく出会います。車に気づいてもゆったり逃げ、「早く行ってくれないかな」という感じでたびたび振り向きますが、こちらがずっと見ているとしぶしぶ走って山に隠れます。雲仙にもテンはいますが、ツシマテンはゆったりしている(態度が大きい?)ように思います。対馬の山はイチゴ、ヤマグワ、グミ、ヤマビワ、グベ、アケビなどの果物が豊かなので、テンにとってはご馳走の山なのではないでしょうか。フンの中に入っている種を調べるのもなかなか楽しめます。

 夏の間は涼しい矢立林道をよく利用したのですが、8月の終わり頃、道路脇の同じ石の上にツシママムシが1週間以上、しかも3匹固まっていました。寒くなったわけでもなく、なぜその石の上なのでしょうか。近くで観察させてくれたので、都会育ちでヘビを見慣れていない私もマムシ特有の模様と形を覚えることができました。
 対馬と言えばワシ・タカが多いので有名ですが、アカハラダカは家の窓からも見ることができました。大鳥毛(おおとりげ)山に登ればアカハラダカだけでなく、チョウゲンボウがトンボをぱくっと食べるところが見られたり、もっと大型のタカが飛んでいったり。フンをかけられてもチョウゲンボウなら腹も立ちません。ミサゴならば港の近くでよく見かけるし、よそで珍しいものが対馬では普通なのです。
 1ヶ月ほど前には厳原町内山で、外傷はないのにうまく飛べないツミ(小さなタカの一種)が保護され、我が家で静養しています。鶏のレバーをよく食べ、そろそろ飛べそうなのでリハビリをしないといけません。少し前には衰弱したミサゴ(これはすぐ力尽きました)、その後はさし傷を負ったオオミズナギドリが保護され、これも我が家で回復中です。ケガをして保護され支庁に持ち込まれる野鳥も、ここでは大物が多いようです。しかし、支庁の職員は素人ですし、動物園は佐世保にしかありませんから、なかなか大変な状況です。
 アキマドボタルは家の網戸にくっついていました。楽しみにしていた割にはあっけない出会いでした。ツシマアカガエルも厳原の川端通りのパチンコ屋に入ろうとしていたところを捕まえました。チョウセンコジネズミは家の玄関前で踏まれていました。それだけ住居の周りの自然が豊かだということです。それは裏返してみれば、家に入ってくる虫が多かったり、飼っている鳥や鶏(野鳥は基本的には飼うことができません。メジロは一家に1羽までで許可が必要です。)をヘビやイタチやテンにねらわれたり、山や畑をシカに荒らされたりすることが当然起こる環境だということも、理解しないといけないでしょう。
 よそから来た植物好き・動物好きの人にとって、対馬の自然は驚きと楽しいことがいっぱいです。先日、チョウセンケナガニイニイの取材があったのですが、地元の方でも知らない人がけっこうおられるようでびっくりしました。毎年全国各地から、このセミや珍しいクワガタやトンボやチョウを見に、あるいは採りに来る人たちがいます。バードウォッチングにもたくさんの人が訪れます。地元の方にとっては理解に苦しむこともあるかもしれませんが、ヤマネコはもちろんのこと、いろいろな動物や虫や植物を接点にして一緒に楽しめたらいいな、と思っています。
 来年秋には厳原で「巨木を語ろう全国フォーラム」が予定されています。全国から巨樹好きの人たちが集まりますから、地元の方々のご協力・ご参加を期待しています。


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