対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第5号

 

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ある日のツシマヤマネコ飼育日誌(3)


 1999年5月12日(水)

 上県町の民家の鶏舎に忍び込んだツシマヤマネコがトラバサミワナにかかったとの連絡を受けて、対馬野生生物保護センター職員が確認・収容に向かった。

 収容された個体は前号でも紹介したMn-04(通称コテツ)と名付けられたおとなのオスで、これまでにも、1998年の12月10日に豊玉町の民家で鶏舎に入り込んでいたところを保護収容され、センターで検疫後12月19日に保護された場所より少し離れたところで放した。その後12月23日に同じ鶏舎でトラバサミワナにかかっていたところを保護され、福岡市動物園の動物病院に入院、治療を施し、1月11日にセンターに連れ帰り、野外飼育ケージで野生復帰のためのリハビリを行った後、追跡モニターのための電波発信機をつけて3月3日に上県町棹崎地区(対馬自然の森)で再び野外に放した。つまりコテツは今回で3度目の保護収容になる。

 追跡調査の結果、放逐地点から大きく移動して今回収容された付近をウロウロとしているのが確認されていた。このあたりはクルマの往来も多く「交通事故にあわなければいいが」などと心配していたところに、この事故が起きた。

 収容してからすぐに、地元獣医師の森先生に協力していただき処置を開始した。診断の結果、両前足が完全に折れており、骨が皮膚を破って顔を出している状態だった。応急処置を行い、両前足あわせて25針も縫った。経過を見るために、センターの検疫室でしばらくの間、介護飼育することになったが、傷の状態が思わしくなく、対馬ではこれ以上の処置は出来ないため、設備の整った福岡市動物園に空路送ることになった。福岡に送る日の朝にはかなり衰弱しており、祈るような気持ちで送り出した。5月17日(月)の早朝のことだ。

 福岡市動物園に到着後、3時間に及ぶ手術が行われ、その結果、右前足は断脚、左前足はなんとかプレートでつないで固定された。術後も衰弱がひどく、動物園での手厚い処置にもかかわらず、5月19日(水)の朝、対馬の地を二度と踏むことなく、冷たくなっていた。

 今回の事故では悲しい結果になってしまい、非常に残念だ。自分の家の大切な鶏を外敵から守るのに、ワナを使うことは簡単だが、トラバサミにかかった動物はかなりの深手を負い、その傷が原困で死ぬことが多いと思われる。同じワナを使うにしても、怪我させることなく捕獲することができる箱形のワナを使うと痛い思いをさせずに済むかもしれない。また、人間が少し考えを変えて、ワナに頼るのではなく、鶏舎に工夫をして侵入者を未然に防ぐなどの努力をすることも大切だと思う。今後は、このような事故が二度と起こらないことを強く願う。合掌。 <Mk>

備考

「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」の定めるところにより、トラバサミによる狩猟は、

  1. 甲種狩猟免許の資格を有する者が、
  2. 狩猟登録をし、
  3. 狩猟期間中に、
  4. 法で禁じられた区域の外で、
  5. 危険でない方法(直径約10cm以下で鋸歯のないもの)で、
  6. 狩猟鳥獣を捕獲する場合、

に限られています。


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