対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第5号

 

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対馬野生生物保護センターの活動から


ワナによる怪我、そして死

2月16日-上対馬網代(あじろ)で
 上対馬町網代で二ワトリ小屋に入ったツシマヤマネコが保護されました。この個体には首輪式の電波発信機がついており、すぐに昨年の11月17日に同じ上対馬町内で捕獲されたオスであることがわかりました。外傷などはなく、健康であると判断されたので、現場近くの山へ放しました。その後しばらくは網代周辺におり、その後唐舟志(とうしゅうし)方面へ移動したことが確認されています。

5月12日-上県町仁田(にた)で、そして死す
 上県町仁田の民家の鶏舎でオスのツシマヤマネコが保護されました。数日間ニワトリ小屋を荒らされていたそうで、このいたずらものを捕まえようと仕掛けてあったトラバサミに両前足を挟まれ、骨折していました。すぐにセンターに収容し(3ページをご覧下さい)、獣医師の応急処置をしていただきましたが、骨折の状態はかなり悪く、骨が突き出し、傷口には泥が入り込んでしまっていました。治療後に一時は自力で食事をしたりしていましたが、対馬島内での治療だけでは不十分との判断から17日に福岡市動物園に運ばれて手当を受けました。しかしその後の回復は見られず、19日の朝には死んでしまいました。この個体は12月にも2回二ワトリ小屋に近づいており、2回目の時にはやはりトラバサミに挟まれて怪我をしましたが、治療の結果完治し、野外に復帰していました。繰り返しニワトリ小屋を襲った個体をどのように扱えばよいのか、今後の課題となりました。

ツシマヤマネコの保護収容

2頭目のメスの捕獲に成功
 2月5日19:34、上対馬町内で2頭目のメスの捕獲に成功しました。ウィルス検査を行うためにしばらく対馬野生生物保護センターで検疫飼育を行いましたが、検査の結果で健康であることがわかりましたので、18日に動物園へ移送しました。これにより福岡市動物園の5頭分の獣舎はオス3頭、メス2頭でうまりましたので、これまで行ってきた捕獲作業は終了となりました。

飼育下繁殖に向けて

 この個体は動物園で2頭のオスと対面し、そのうちの1頭とは交尾のような行動も見られたということです。出産にはいたっていませんが、捕獲して間もない状況でも交尾のような行動が見られたことは予想以上で、今後の飼育下繁殖の成功に対する期待は高まります。
 しかし飼育下繁殖の最終的な目標は野外の個体群を増やすことであり、生まれた子どもが対馬の自然の中で暮らしていけるようにしなければなりません。それまでに乗り越えなければならないことは山のようにあり、捕獲作業の終了は飼育下繁殖の第1段階を終えたというところ。ようやく動き始めたばかりだと言えるでしょう。

 昨年度発見されたツシマヤマネコの死体は6頭で、そのうち3頭が交通事故死だと考えられています。1997年度でも交通事故死したと思われるのは3頭。生息頭数が70~90頭と推定されていることを考えれば、これまで以上に注意を呼びかけていく必要があると感じます。

テレメトリー調査

 捕獲されたり保護された個体の多くには、首輪式の電波発信機をつけています。これらの電波を追跡することで、それらの個体がどのような所へ行ったのか、またどんな時間帯に活動しているのかということもわかります。これをテレメトリー調査といいます。
 センターの展示室内に最近の追跡の結果を個体別に掲示しています。どこにどんなヤマネコがいて、どの辺りを利用しているのかをご覧下さい。ヤマネコと言っても山の奥にばかりいるのではなく、下記のように人の生活しているところにもやって来ます。もしかしたら皆さんの家の近くにもいるかも知れません。

ニワトリ小屋の強化について

 西表(いりおもて)島でもニワトリ小屋を襲ったイリオモテヤマネコの話はあるようです。人口も少なく、ニワトリを飼っている家も少ない西表ではニワトリ小屋を頑丈にすることで被害を防ごうとしているのだそうです。しかし対馬の場合はツシマテンやチョウセンイタチがおり、こちらの方が小屋を壊すカは強そうですし、かなり丈夫なものを作らなければ、被害をなくすことは難しいかも知れません。また人口も多く、これを徹底してもらうことには行き届かない場合もあるでしょう。しかしニワトリは野生の生物ではありませんから、野生の動物たちが食物として利用することはその生態を崩すという点でもなくしていきたいことだと思います。木箱に漁網をかぶせただけのような小屋で飼育されている二ワトリを見かけますが、野生生物の不幸な怪我をなくすためにも自分の二ワトリを守るためにも、小屋の構造の強化をお願いしたいと思います。

トラバサミワナの使用について

 自分のニワトリが襲われれば、それを守ろうとするのは当然のことだと思います。しかしヤマネコやテンはもちろんノネコにしろイタチにしろ、野生動物を捕獲するためには本来許可申請をしなければなりませんので、むやみにワナをかけることは違法行為となってしまいます。また危険なワナの使用は許可されません。トラバサミの使用は動物に怪我を負わせ、今回のように死に至ることもあります。目的外の動物が捕獲される可能性がある場合は、他の方法をとっていただきたいと思います。かといってこれを押しつけるようなことはあまりしたくありません。一番心配しているのは「ヤマネコを捕まえたら罰せられるのではないか」という気持ちから連絡をいただけないことです。
 交通事故もそうですが、起きてしまったことはもう仕方のないことですので、少しでも早く連絡をしていただきたいと思います。そしてそのような事故がこれから起きないようにしていくことが重要だと考えています。

昨年度のツシマヤマネコの死体発見は6頭!

3月5日-峰町でメスの死体発見
 峰町大久保の路上でメスの死体が発見されました。目立った外傷はありませんでしたが、内臓破裂を起こしていたようで、交通事故の可能性が高いと考えられています。

3月14日-上対馬町でまたメスの死体
 上対馬町舟志の県道脇でメスの死体が見つかりました。この個体にも外傷はありませんでしたが、解剖してみると内部寄生虫が多かったそうなので、寄生虫による衰弱死ではないかと見られています。

前号でお伝えした4頭の死体の死因について

発見日 発見場所 性別 年齢 死因 その原因
12月1日 上県町国道上 オス 若獣 左大腿骨骨折部周辺の出血による失血死 交通事故
12月26日 上県町椋梨 メス 若獣 頭部・胸部の骨折、内臓破裂 交通事故
1月8日 上対馬町泉 オス 成獣 両側頚背部・右腹側部の刺し傷 イヌによるものと推測される
1月12日 上県町棹崎 オス 成獣 咬傷が髄所にあるが頚椎の脱臼が致命傷 イヌによる咬傷

隔離飼育中のツシマヤマネコのモニター公開開始

 1998年10月9日から対馬野生生物保護センター検疫飼育舎で隔離飼育しているツシマヤマネコ。飼育しているのなら見せてほしいとのご要望が多かったことから、3月26日にモニターによる公開を始めました。これまでに何度もご紹介したとおり、このヤマネコは2種類の伝染性ウィルスを持っており、このうちの1種類は感染カが強いことから、他のヤマネコへの感染を防ぐために、完全に隔離して飼育をしています。ですから檻越しに見るといったことはできませんが、生の映像でツシマヤマネコの姿をご覧下さい。消毒等の都合上、狭い檻の中で飼育されているツシマヤマネコの姿を見てかわいそうだという声も聞かれます。このヤマネコが持っているウィルスはイエネコから伝染したものと考えられ、イエネコとの接触の機会が増えた結果だと考えられます。こういった不幸なヤマネコをこれ以上増やさないためには、我々がイエネコの飼い方に気をつけなければならないのです。こういったことを考えていただくためにも、このヤマネコの姿を見ていただきたいと思います。 <E>


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