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九州地方環境事務所

ツシマヤマネコニュース

ステーションで行っている調査って?

2019年01月31日
近藤 由佳

今回は下島で行なっている調査についてお話ししたいと思います。

対馬は南北に細長い島で真ん中よりも少し南側に万関橋という橋がかかっており、北と南に分かれています。そのため、北側は上島、南は下島と呼ばれています。

今から約50年前は対馬全島にツシマヤマネコ(以下、ヤマネコとします)が生息していましたが、一時、ヤマネコは上島でしか生息が確認されない状況になってしまいました。しかし、今から約10年前の平成19年に下島で23年ぶりにヤマネコが再発見されました。

23年ぶりに下島で見つかったヤマネコ(平成19年3月長崎県撮影)

それ以降、対馬野生生物保護センターや長崎県、対馬市、林野庁が協力して調査を行ってきました。下島にツシマヤマネコ野生順化ステーションができてからは、野生生物保護センターに代わってステーションが下島での継続した調査を行っています。

調査は主に2種類で行っています。自動撮影調査と痕跡調査です。

自動撮影調査

森の中のヤマネコが通りそうな場所に自動撮影カメラを設置し、動物がカメラの前を通ると自動的にシャッターが落ちるカメラ(自動撮影カメラ)を使用して、撮影しています。ヤマネコがたまたま通るのを待つ方法と誘引するための餌を置き積極的にヤマネコをおびき寄せて撮影する方法がありますが、下島では前者の方法で行っています。

自動撮影調査の様子

痕跡調査

あらかじめ決めておいた約2キロのルートを歩きながら、ツシマヤマネコの糞を探します。ツシマヤマネコを始めとする肉を主に食べている哺乳類は、他の動物や他個体とのコミュニケーション(なわばりの主張など)のために道路の中央などわかりやすい場所に糞をすると言われています。ヤマネコの可能性がある糞があった場合はそれを拾い、アルコールの入ったボトルに入れ、持ち帰ります。糞のDNA分析を長崎県に依頼し、本当にヤマネコのものであるか確認しています。イエネコの糞もヤマネコの糞も見た目だけではわかりにくいためです。1ヶ月に1度調査を行い、ヤマネコ以外の哺乳類の情報も可能な限り記録しています。

痕跡調査の様子

この調査結果は、下島におけるヤマネコの生息状況の把握や交通事故対策に活用しているほか、将来的に下島でヤマネコを野生復帰させる必要があるか考える際にも活用される予定です。

これまでの調査から下島の北部(美津島町黒瀬・箕形や美津島町久須保・大船越)では継続的にヤマネコが確認されており、最近では中部の厳原町小浦や下原、樫根でもヤマネコが見つかってきています。南部の厳原町内山や久根田舎では平成19年以降、10年ほど情報が途絶えましたが、近年またヤマネコが確認されました。

DNA分析からヤマネコが複数頭いることがわかってきましたが、依然として生息数は多くありません。今後も調査を進め、生息状況の把握や交通事故対策を進めていきます。貴重な下島のヤマネコを、今後も温かく見守ってもらえればと思います。

下島北部(美津島町久須保)の山中を歩くヤマネコ(平成30年11月撮影)