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とらやまの森特別号

 

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ツシマヤマネコにせまる危機


交通事故

交通事故

 交通事故はツシマヤマネコの死亡原因で最も多く、1992年から2004年までの間に25頭が死亡しています。ツシマヤマネコの推定生息数(1997年発表)が70~90頭であることを考えると、交通事故は大きな脅威です。

(写真:交通事故で死亡したツシマヤマネコ)


イエネコからの感染症

FIV感染

 ネコ免疫不全ウィルス(FIV)はイエネコなどネコ科動物に感染するウィルスで通称ネコエイズウィルスとも呼ばれています。ツシマヤマネコでは1996年に初めてFIV感染が判明して以来、2004年2月現在まで3頭のFIVに感染したヤマネコが保護されてきました。このFIVはイエネコからヤマネコにうつった可能性があります。

(写真:FIVに感染し、保護されたツシマヤマネコ。もう野生に帰ることはできない。)


 日本各地で本来の自然環境にはいなかった動物が野生化し、問題になっています。そのような動物は移入種とよばれています。
 下の3枚の写真は同じ場所で撮影されたものですが、ツシマヤマネコが生息している山中に、ノラネコ、ノイヌが入り込んでいます。

ヤマネコ

 左:ヤマネコ、左下:イエネコ、下:犬


イエネコ 犬

移入種の問題

 イヌやネコは本来人間に飼われているべきものです。これらの野生化したイヌやネコの多くは人間に捨てられたもので、結局は交通事故にあったり、十分にエサをとることができずに不幸な運命をたどることになります。
 飼われているイヌであっても、夜間に散歩のために放したり、または訓練された猟犬が猟の後に回収されずに山中をさまよっていることがあります。
1992年から現在まで3頭のツシマヤマネコが犬にかみ殺されています。

生息域の変化

生息分布図

【1960年代推定生息数250~300頭】 【1990年代の推定生息数 70~90頭】


開発による生息地の減少

 ツシマヤマネコの行動圏はメスで1~2平方kmとされていて、その中に、水場や餌の豊富な場所、安心して子育てできる場所など、多様な環境が必要です。しかし、河川改修や道路整備、大面積伐採等によって、少しずつヤマネコにとって暮らしやすい環境が減ってきています。もちろん、人間にとって暮らしやすい環境も重要です。ヤマネコと共に暮らす島対馬ならではの開発のあり方を考えていく必要があります。

開発1 開発2

(写真 左:コンクリート三面張りの川、右:アスファルトの道路とセメントの吹き付け)

ワナ

 トラバサミは掛かった動物に傷を負わせてしまうため、その使用は制限されています。

トラバサミ1 トラバサミ2

(写真 左:挟まれた直後の前足の様子。、右:トラバサミに肢を挟まれて肢を切断したツシマヤマネコ。この後、手当ての甲斐なく、このヤマネコは死亡してしまった。)



DATA

ツシマヤマネコ

 ベンガルヤマネコの亜種で、日本では長崎県対馬にのみ生息する。学名はFelis bengalensis euptilura、英名はTsushima leopard cat。

外見的特徴

体全体に斑点模様がある。

胴長で比較的足が短い。

耳の裏側に虎耳状斑と呼ばれる白斑がある。

額に白とこげ茶のくっきりとした縞模様がある。

尻尾が長くて太い。

法律などによる位置づけ

1949年 非狩猟鳥獣に指定

1966年 長崎県指定天然記念物

1971年 国指定天然記念物

1994年 国内希少野生動植物種

(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)
 また、環境省が編集しているレッドデータブックにおいては、もっとも絶滅のおそれの高い「絶滅危惧1A類」に分類されている。

ツシマヤマネコの生態

 単独で行動し、夕方から夜にかけて行動が活発になる。メスの行動圏は50~200ha、オスの行動圏はメスより大きく100~1,600haで、主に発情期と考えられる冬期に行動圏が拡大する傾向がある。
 落葉広葉樹林を好み、主として谷筋や低地部を利用するが、道路や集落周辺も利用する。
 餌として、ネズミやモグラなどの小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫などを食べる。

日本にいるもう一種のヤマネコ

イリオモテヤマネコ
 沖縄県の西表島に棲むイリオモテヤマネコは、生物学的には1965年に初めて確認された。
 やや灰色がかった毛色で、ツシマヤマネコに比べて顔が細く、目鼻立ちがくっきりした印象。
 現在の生息数は、99~110頭前後とされ、ツシマヤマネコと同様に国内希少野生動植物種に指定されている。レッドデータブックにおいては、「絶滅危惧1B類」に分類されており、ツシマヤマネコの方が危機的状況とされている。


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