10月4日、福岡市動物園生まれのヤマネコ一頭が対馬に里帰りしました(下欄参照)。福岡市動物園での繁殖の目的は、最終的には増やした個体を対馬の自然に戻す(再導入する)ためなのですが、果たしてこの個体はすぐに対馬の自然に戻せるでしょうか? 現在対馬では生息地の減少や、交通事故の発生、イエネコからの感染症の問題等々とヤマネコを取り巻く状況が厳しくなっています。その厳しい状況の中に対馬のことを全く知らない動物園生まれの個体がはたして生き残っていけるのでしょうか?また仮に生き延びたとして、今までいたヤマネコや自然等に悪影響を及ぼさないでしょうか? 飼育下で生まれた個体を対馬に戻す時に、どのような点に注意し、どのような事を準備しておかなければいけないのかを整理しなければ、逆に今の対馬の自然を乱してしまうことになります。そこで昨年12月から、ツシマヤマネコの専門家、動物園関係者、行政等が話し合い、今年8月、再導入の基本的考え(目的、留意する事項)、実施に必要な事項(右枠)とその体制、飼育下集団づくりについて記述されている「ツシマヤマネコ再導入基本構想」がまとまりました(※)。 今回の再導入は、日本の小型哺乳類で初めてであり、右の項目を見てもわかりますよう、実際に再導入に向けて課題は山積みで、決して容易な道ではありません。また様々な人が協力していかなければ進めない道です。しかしこの道を歩かなければ私たちがめざす「対馬もヤマネコも」の実現は不可能です。シンポジウムでその一歩を踏み出しました。ヤマネコが対馬の野生にいる今しか歩めないこの道を一緒に歩いていきませんか。
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