対馬におけるカワウソ痕跡調査の結果について
対馬におけるカワウソ痕跡調査の結果について
本年2月に、琉球大学の調査により長崎県対馬市において生息が確認されたカワウソについて、環境省が7月11日から18日に実施した緊急調査及び8月28日から9月2日に実施した全島調査によって、ユーラシアカワウソの糞を6個、カワウソの足跡1個を発見し、対馬では、少数の個体が河川や海岸を利用しながら生息していることが確認できました。
1.経緯
・本年2月に、長崎県対馬市において琉球大学が設置したセンサーカメラにカワウソと思われる生き物が撮影さ
れ、8月17日に同大学の伊澤雅子教授のグループが記者発表を行いました。
・環境省では、平成29年7月11日から18日に対馬島内にて痕跡調査(糞、毛、足跡、食痕等を捜索する調査)
を筑紫女学園大学の佐々木浩教授に依頼して実施し(緊急調査)、採取した糞2個からユーラシアカワウソ(Lutra lutra)のDNAが検出されました。
・しかし、7月の調査では、調査範囲も狭く、限られた人員で実施したため、採取したサンプル数が少なく、ま
た新しいサンプルを得ることができませんでした。そこで、個体識別や生息数推定を行うため、8月28日か
ら9月2日にかけて対馬全域を対象とした痕跡調査(調査代表者:筑紫女学園大学 佐々木浩教授)を実施し
ました(全島調査)。
2.調査方法
(1)現地調査
①調査期間・調査範囲
a.緊急調査 7月11日(火)~18日(火) 16人日 海岸線約15km、河川約13km、合計約28km
b.全島調査 8月28日(月)~9月2日(土) 60人日 海岸線約32km、河川約37km、合計約69km
②調査方法
海岸線やある程度の流量があり魚が生息している河川などにおいて踏査を行い、カワウソの可能性がある
痕跡(糞、毛、足跡、食痕等)を確認・採取。
(2)遺伝子解析
採取もしくは別途提供を受けた糞や毛について、ミトコンドリア遺伝子の分析による種判定、核遺伝子の
分析による性判定・個体識別を実施し、ミトコンドリアの遺伝子の解析結果から系統樹を作成しました。
3.調査結果
(1)緊急調査(7月11日~18日)
・河川・海岸において、糞6個及び毛1本採取。そのほか、提供を受けた糞1個を加え遺伝子解析を実施。
・糞2個からユーラシカカワウソのDNAを検出(表1)。
・そのうち7月14日に発見された糞を排出した個体はオスであり、かつ、韓国とサハリンのカワウソと近
縁であることが分かりました(添付資料①)。
・7月17日採取されたユーラシアカワウソの糞については、短い塩基配列しか確認できていなかったた
め、3回追実験を行いましたが、結果を得ることができませんでした。
表1.カワウソの種判定及び性判定結果(緊急調査)
(注) 不明:判定できず
(2)全島調査(8月28日~9月2日)
・糞14個採取し、遺伝子解析を実施。
・糞4個(河川3個、海岸1個)からユーラシアカワウソのDNAを検出し、全ての糞が、上記(1)の緊
急調査で発見した7月14日の個体と同じ塩基配列を有していました(表2)。個体識別については現在
さらに分析を進めていますが、結論を得るにはまだしばらく時間がかかると考えられます。
・足跡を1箇所で確認。
表2.カワウソの種判定及び性判定結果(全島調査)
(注)不明:判定できず
採取した糞(8月31日採取) 足跡
4.まとめ
・緊急調査の2個、全島調査の4個、計6個の糞からユーラシアカワウソのDNAを検出し、そのうち緊急調
査の1個を除いた5個は解析したミトコンドリアの部位の塩基配列は同じでした。
・この5個は韓国やサハリンのユーラシアカワウソと近縁であり、足跡も確認されていることから、対馬で
は、少数の個体が河川や海岸を利用しながら生息していると考えられます。
5.お願い
カワウソやツシマヤマネコの生息に影響を与えるおそれがあるので、以下の2点について、ご協力をお願い
します。
①生息地を探すなどむやみに立ち入らない(写真撮影など)。
②餌付けをしない。