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九州地方環境事務所

報道発表資料

2024年05月21日
  • 報道発表

放獣したツシマヤマネコの死亡について(お知らせ)

 令和5年7月に対馬市上県町樫滝の国道において保護され、その後、ツシマヤマネコ野生順化ステーションにおいて野生順化訓練を行い、令和6年4月22日(月)に保護地点付近で放獣し、追跡調査を行っていたツシマヤマネコについては、5月18日(土)に同町久原において死亡した状態で発見されましたので、お知らせします。

1 経緯

 令和5年7月、対馬市上県町樫滝の国道で負傷したツシマヤマネコ(以下、ヤマネコ)の幼獣を発見したとの情報提供があり、対馬野生生物保護センター(以下、「センター」という。)に収容し、治療及びリハビリを行いました。本個体は幼獣で保護されたことから、採餌に関する経験等が不足していると考えられたため、同年10月からツシマヤマネコ野生順化ステーション(以下、「ステーション」という。)において、自然状態に近い野生順化ケージで野生順化訓練を行いました。その結果、野生下での生存に支障がない状態に至ったとの判断から、令和6年4月22日(月)に保護地点に近い上県町飼所の山中で放獣しました。その後、野生下での生存状態を確認するため発信機による追跡調査を実施し、5月14日(火)から1ヶ月目に実施する検査捕獲を開始したところ、5月16日(木)に同町鹿見において箱ワナにかかっているとの通報があったため、個体を収容し健康状態を確認した上で再度放獣しました。そして、5月18日(土)未明に同町久原の住民より倉庫内で衰弱したヤマネコがいるとの通報があり、センター職員が回収、センターに収容し、本個体であること及び死亡していることを確認しました。 

2 追跡調査について

 今回の放獣では、放獣後の生存状態や行動範囲の確認を目的として、VHF 発信器・活動量計付き首輪を装着し追跡しました。放獣後5日間は1日6回、放獣後6日目以降は1日2回の電波受信確認を行い、位置を記録しました。追跡調査の結果、4月22日(月)~27日(土)まで上県町樫滝・飼所周辺で活動し、その後峰町三根周辺に移動したのち、5月2日(木)以降は上県町久原・鹿見周辺で活動していたことが分かっています。

3 死因について

 本個体の死体はセンターに収容し、体長や体重の測定、外傷の有無の確認等を行い、簡易の病理解剖を実施しました。その結果、体重減少と脱水、口内に釣り針、胃拡張が確認されましたが、直接の死因は特定されませんでした。
 現在、岡山理科大学においてより詳細な病理解剖を実施しており、現在の報告では急性胃拡張から嘔吐を引き起こし、窒息死に至ったと推察されています。引き続き精査を進め、死因の解明を行います。

4 今後の対応について

 最終的に特定された死因から、今回実施した一連のプロセスに問題がなかったかの見直しやその他必要な対策を行います。見直しに当たって、有識者から広く助言を求め、今回得られた約1ヶ月の追跡データも活用し、今後の保護増殖事業に繋げます。

お問い合わせ先

環境省
九州地方環境事務所野生生物課
課長 大澤 隆文
TEL 096-322-2413
対馬自然保護官事務所厳原事務室
(ツシマヤマネコ野生順化ステーション)
自然保護官 谷口 晃基
TEL 0920-57-0101