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九州地方環境事務所

報道発表資料

2016年02月02日
  • 結果報告

報道発表:(お知らせ)長崎県対馬市におけるツマアカスズメバチの防除結果について

平成27年度(一部平成26年度)に長崎県対馬市において実施した特定外来生物ツマアカスズメバチの防除結果(春期女王バチの捕獲及び巣の撤去)がとりまとまりましたのでお知らせします。

1.春期女王バチの捕獲
(1)結果概要
ツマアカスズメバチの女王バチは、秋に交尾した後、冬眠し、春になると目覚め単独で営巣を開始します。これまで営巣が多く確認された上島北部を中心に、春期に女王バチの捕獲試験を実施した結果、1,591個体の女王バチを捕獲しました。
ペットボトルを加工した簡易なトラップで女王バチの捕獲が可能であり、4月中旬から5月中旬に最も多く捕獲できることなどが明らかになりました。

(2)実施期間
平成27年3月17日から6月26日までに計7回(表1)

(3)実施場所
長崎県対馬市内の15~30ライン(図1、図2)
*1ライン延長:1.6km~3.3km

(4)実施方法
ペットボトルを加工した簡易なトラップに誘引液を入れ、地形等を考慮しつつ、約200m間隔を目安に各ラインに10個配置(計150~300個)。約2週間毎に捕獲個体を回収(計7回)。
誘引液は、乳酸系飲料、焼酎、穀物酢、ブドウ果汁を混ぜたもの(誘引液A)を使用。一部のラインで、乳酸系飲料と水を混ぜ、イーストを加えて発酵させたもの(誘引液B)を追加使用。

(5)結果
・ツマアカスズメバチの女王バチの捕獲数は、4月中下旬(第3回)に増加し、5月上中旬(第4回)をピークに5月中下旬(第5回)以降減少。効率良く女王バチを捕獲するには、4月中旬~5月中旬が適期であったと考えられます。(表2、図3)
・ツマアカスズメバチの働きバチ(ワーカー)は、5月中下旬(第5回)以降に出現し、6月中下旬(第7回)に増加。6月中下旬頃に野外活動個体が女王バチから働きバチに移行すると考えられます。(表2、図3)
・6月上旬(第6回)以降はツマアカスズメバチよりも対馬亜種ヒメスズメバチの女王バチの捕獲数が上回りました。(表2、図3、表3)
なお、在来スズメバチ類の混獲は、トラップ設置時期及びトラップ開口部の大きさの調整により一定程度軽減できると考えられます。


2.ツマアカスズメバチの巣の撤去

(1)結果概要
ツマアカスズメバチの生息数を抑制し、拡散を防止するため、対馬市と環境省で連携協力し、ツマアカスズメバチの巣の駆除を実施しました。市民からの通報等により確認された241個のうち、207個の巣を撤去しました。(表4)

(2)手法
巣から働きバチ等が飛散しないよう、殺虫剤を噴霧し個体を弱体化させた後、個体ごと巣を撤去しました。撤去した巣は、個体が死滅したことを確認した後、焼却処分しました(一部の巣については、巣の構造等の解析に活用)。

(3)実績数
・営巣確認数(平成27年6月から12月まで)
241個(厳原町2、美津島町12、豊玉町43、峰町43、上県町75、上対馬町66)
・営巣場所の特徴
樹上 171個、軒下等家屋付近 51個、鉄塔等その他 19個
・撤去等の処理状況
撤去            :207個(環境省125、対馬市82)
他主体により撤去又は自然落下: 22個(他主体7、落下15)
撤去不能          : 12個(※)
(※)巣を発見したが、営巣箇所周辺の地形等要因により営巣木へ登ることが困難で、また車両等も侵入できず撤去できなかったもの等。
なお、在来のスズメバチ類の例では、巣は1年限りで利用され、再利用されることはないと言われています。

(4)結果
・平成25年度以降、ツマアカスズメバチの巣の撤去に取り組んでいるが、確認された巣の数は年々増加。(表4)
・これまで上島北部で巣の確認数が多かったが、上島の南部で増加。(表4、図4、図5)


3.考 察

春期(特に4月中旬~5月中旬)にペットボトルを加工した簡易なトラップでツマアカスズメバチの女王バチを捕獲することが可能であり、低コストで実施可能な防除手法の一つであることが分かりました。
市民の関心が高まることで巣の発見数が増加した可能性もありますが、発見されず撤去されない巣が存在すること、発見や撤去時期が遅く既に多くの女王バチが飛翔してしまっている場合があること、樹上高所に営巣する場合が多く物理的に撤去不能な巣が存在することなどから、多くの新女王バチが生産され繁殖し、分布域が南部へ拡大していると考えられます。


4.今後について

個体数の増加や分布域の拡大を抑えるためには、発見された巣の撤去のみではなく、春期の女王バチ捕獲を組み合わせて実施することが有効と考えられ、関係機関、地域住民との協力体制を早急に構築して、平成28年春期から取り組む必要があると考えられます。また、物理的な巣の撤去以外に薬剤を用いた化学的手法の試験開発を進める必要があると考えられます。
これらの結果及び考察等を踏まえて、3月に開催を予定している平成27年度第3回ツマアカスズメバチ防除対策検討委員会において、専門家の意見を伺った上で、本種に関する今後の防除計画を策定する予定です。

添付資料