平成29年度白書を読む会(九州・沖縄地域)の開催結果
九州地方環境事務所では、環境・循環型社会・生物多様性白書の内容について、広く国民の皆様に知っていただくため、毎年、そのテーマやねらいなどを白書編集担当者が直接解説し、会場参加者と質疑応答を行う「白書を読む会」を開催しています。
平成29年度の実施結果を以下のとおりお知らせします。
日時
平成29年10月18日(水)14:00-16:00
場所
北九州まなびとESDステーション
参加者数
計34人
(内訳)一般:12人、北九州市職員:8人、北九州ESD協議会:7人(発表者1人を除く。)、北九州市立大学:7人(発表者等4人を除く)
次第
1. 開会挨拶
2. 第1部:白書を読む会(環境省による説明、質疑応答)
環境省大臣官房環境計画課 在原 さん
3. 第2部:北九州ESD 協議会(会員、大学生)による活動事例発表
(1)「ESDプロモート実習」
北九州市立大学地域創成学群 ESDプロモート実習生
(北九州ESD協議会サブコーディネーター) 田中さん、城さん、小翠さん
(2)「フードバンク活動紹介-捨てられる食べものと、食べものが足りない人の問題-」
NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン
(北九州ESD協議会会員) 八百屋さん
(3)意見交換(テーマ:「市民にESD、SDGsの理解を拡げるには」)
ファシリテーター:北九州市立大学地域創成学群 ESDプロモート実習生
(北九州ESD協議会サブコーディネーター) 中田さん
4. 九州地方ESD活動支援センターの紹介
九州地方ESD活動支援センター 澤さん
5. 閉会
概要
1 第1部:白書を読む会における質疑応答
(1)カーボンプライシングとは何か。炭素税との違いも含め教えてほしい。
→ カーボンプライシングは炭素の排出価格をつける制度であり、炭素税はその一つの方法である。カーボンプライシングの具体的な例として炭素税(1トン当たりの価格を決め、事業活動などで生じた炭素に課税する取組)の他、排出量取引(排出量の上限である排出枠を決め、上限を超えた排出者と上限に満たない排出者との間で排出枠を市場で取引する取組)があり、これらの取組を通じて排出量削減を目指していくものである。
(2)COP21において1000分の4イニシアティブが報告されているが、いつ白書に反映されるか教えてほしい。
→ 来年度の白書の内容は、現在何も決まっていない状況である。世界の動きをみながら日本としてどうしていくか議論して、方針が決まれば将来的にそういった取組を紹介することはあるかもしれないが、今は何も決まっていない。
(3)炭素税の世界の動きを教えてほしい。
→ 炭素税を導入している又は予定している国・地方政府を整理した図を資料(平成29年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(概要) [PDF 3.2 MB])の10ページに掲載しているため、ご覧いただきたい。
(4)分別ごみの種類について日本はドイツと比べて少ない。もっと日本で進める予定はないか
→ 家庭ごみの回収方法については自治体ごとに決めている状況にある。回収するごみの種類の決定に当たっては、分別する側の意識やリサイクル施設の充実等も必要であることから、全国的に一斉に分別ごみの種類を決めて取り組むことは困難である。環境省としては3Rの取組の充実が図られるよう施策を実施している。
(5)SDGsは数値化が困難だと思われるが、モデルはあるのか。
→ 日本でも世界でも指標を検討している段階。日本では内閣府や総務省が中心となって指標について検討を進めている。
2 第2部:北九州ESD 協議会(会員、大学生)による活動事例発表
-ライフアゲインに対する質疑応答-
(1)福祉施設、個人、緊急施設、動物園にどのように配給しているか教えてほしい。
→ 福祉施設については市内の自立支援施設等に定期的に食料を配布、個人については市に相談があった方々等に配布(月2回)、緊急支援については生活保護を受けるまでの期間配布、動物園についてはライオン等向けに製造過程で異物が入った肉(体内への影響はない)を配布している。
(2)一般の家庭でロスしている食品は生ゴミのことか。
→ 生ごみと食品ロスは区別して考えている。家庭での食品ロスの多くは賞味期限切れの食品を指す。食品には賞味期限と消費期限があり、賞味期限については安全に食べられる期限を実際より早めに設定しているため、実際には食しても問題ないが、多くの家庭では、これらの賞味期限切れの食品を捨てていることが多い。
(3)食品ロスを防ぐためのシステムについては、安心・安全の面から理解を得られず、構築は難しいのではないか。
→ 今は食品ロスを未然に防ぐためのシステム構築が難しく、啓発活動しかできないのが実情である。しかし、難しいからといって諦めず、食品ロスの原因が何であるか実態を把握して食品ロスを根源から減らしていきたい。
(4)食品ロスの取組については、企業とのパートナーシップが大事であり、信頼関係が構築できるとうまくいくと思うため頑張ってほしい。
→ 企業としては元々廃棄するものであっても食品であるため、その食品が安全に支援者のもとに届くかどうか非常に危惧されるところがある。食品を安全に届けることができないようなフードバンク(保冷倉庫などの設備の無い)には食品を提供することに抵抗感があり、パートナーシップを構築できないこともあるのが実情である。
3 第2部:意見交換(テーマ:「市民にESD、SDGsの理解を拡げるには」)
- 発表者(本省、プロモート実習生、ライフアゲイン)による意見交換 -
(1)活動のきっかけについて
→(プロモート実習生)
・ 高校生のときに北九州まなびとESDステーションに来訪した経験があり、ESDをもっと知りたいと考えていたこと、また、海外に興味があったことから、海外での活動も行うESDプロモート実習を選択した。
・ ESD実習が海外で実施されることに興味があったため、ESDプロモート実習を選択した。
→(ライフアゲイン)
・ 元々、私が食品リサイクルに関わっていたこともあり、家庭に届くまでの間に食品が捨てられていることは知っていたが、この問題にどのようにアプローチすればよいかは分からなかった。後にフードバンク活動を行っている当法人を知り、食品ロスに寄与できるのではないかと考え、活動に携わるようになった。
(2)活動に伴う自分自身の変化について
→(プロモート実習生)
・ 新聞等で「ESD」という文字を気にするようになるなど、ESDを知りたいという気持ちが強くなった
・ 生活の中でESDを実感するようになった。
→(ライフアゲイン)
・ 当NPOに登録しているボランティア300人の大半で福祉の意識が強いことに驚きがあった。私は従来は環境の側面でしか活動していなかったが、福祉の側面からも環境へのアプローチが出来るのでないかということに新たな発見があった。
(3)自分自身の活動がSDGsのどのゴールにつながっていると感じるか
→(ライフアゲイン)
・ 私にとって、フードバンク活動の軸はSDG4(質の高い教育)である。幼少期の教育環境を整えることがその後の子どもの成長に大きく関わると言われている中、子どもが食事を十分にとれない環境や、一人で食事をとる環境では十分な教育につながらない。そこで、フードバンク活動により食事環境を整えることで、子どもたちが十分に勉強できる環境を構築できることを目指し活動している。
(4)ESDプロモート実習生が毎月実施している「月イチの集い」について、11月の活動内容を教えてほしい。
→(プロモート実習生)
・ ESDの頭文字を分かりやすい形で表現する方法などESDの分かりやすい説明を検討する活動を行いたい。
(5)SDGsとESDを拡げるにはどのようにすればよいと考えるか。
→(プロモート実習生)
・ インターネット上で分かりやすい動画がない。ESDを詳しく説明した動画が必要と考える。
・ 学生ができる取組として考えると、ESDダンスを踊るのもいいかと思っている。
→(ライフアゲイン)
・ 興味のない方を興味のある方向に持って行くのは困難である。食品ロス削減は、ごみ分別・回収システムのように社会の中に組み込まれたシステムに乗せることが必要と考える。
(6)環境省からのコメントはないか。
→(本省)
・ 学生については、日本政府ではパートナーシップを軸としてSDGsを推進していくこととしており、学生が地域やNPOの方と行っている「月イチの集い」等はESDだけでなくパートナーシップとも関連しており、いい取組だと感じた。
・ ライフアゲインについては、資料でも言及されていたとおり、ESDの視点で考えることにより、食品ロスの問題一つをとっても単に捨てることの問題だけでなく、エネルギー問題や、世界と日本の間での食料事情の違いの問題などにも思いをはせるようになり、SDGsと同様に多様な問題がそれぞれ関わっていることが分かるのではないかと感じた。SDGsとESDは考え方が似ているため、ESDも同じように進めていければいいと思う。
4 第2部:意見交換(テーマ:「市民にESD、SDGsの理解を拡げるには」)
- ファシリテーターのまとめの内容 -
・ 自分自身が活動していく中でESDの大切さを伝えていかなければならないと改めて思ったと同時に、伝える相手に実際に行動してもらうためには自分が行っている行動を魅力的なものにする必要があると感じた。
このほか、会場から「楽しく実施していかないと推進力が働かない。」、「島と都市の状況は異なっている。地域産業や農家など現場を大事にすることが必要」との意見が出された。
4 事務所によるまとめ
SDGsでは目標は示されたものの、手法は示されていない。
その手法としてESDが有効と考える。ESDは環境・経済・社会のバランスを念頭に、自ら考え、学び、行動することである。ライフアゲインの資料にもあったとおり、ESDの視点を取り入れることで、食品ロスだけでなくエネルギー問題や途上国の貧困問題にも考えが及ぶようになることが期待され、複数の課題が絡み合うSDGsの達成にも寄与すると考える。
このようにSDGsの達成にはESDが重要と考えるため、参加者の皆さんも日頃の活動でESDを意識して行動してもらえるとありがたい。