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お盆も近い8月9日(土)の夕方、上対馬町・舟志(しゅうし)の廃校跡で、第12回自然教室「虫の音を聴く会」が開催されました。まだ日の残る午後6時過ぎ、セミの鳴き声がまだ甲高く聴こえる時間に、自然教室ははじまりました。
まずは目をつぶって何の声が聞こえるのか、1分間集中してみます。
ウグイス、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、カラス・・・など、耳を澄ますと、意外にたくさんの生き物達の声が聞こえてきます。夏の一夜、参加者のみなさんはどんなことを感じたのでしょうか?
今回の講師は、センターの自然教室でお馴染みの柚木修(ゆのきおさむ)さん。「生き物飼い方大百科」というCD-ROMを制作したこともあり、虫の声についても詳しい方です。
本来は野鳥の専門家ですが、対馬の島おこしの活動もしており、舟志の廃校の再利用についてもいろいろ計画中のようです。
自己紹介のあと、目を閉じて1分間耳を澄ますと、足元の草むらや学校横の道路、近くを流れる川、遠くの山などからいろいろな音が聞こえてきます。
「リーリーリー・・・」
「ツクツクオーシ・・・」
「ジージージー・・・」
オカメコオロギを観察中。
オカメ顔をしているように見えます?
「触覚が長いね~」
「あっ、ショウジョウバッタもいた!」
虫からの視点。
「この人たちは何をしているんだろう・・・」
まだ明るいので、植物観察もやってみました。
センニンソウ、ヌスビトハギ、ムサシアブミ、ダイコンソウ、オニユリなどが観察できました。
この植物の名前はちょっと驚きです。
「ママコノシリヌグイ」(継子の尻拭い)
ソバの仲間であるタデ科で、茎に鋭いとげがあり、これでお尻を拭ったらさぞ痛いだろう・・・というのが名前の由来だとか。
ちなみに、花の色はピンクで、コンペイトウのようなとてもかわいい姿をしています。
参加者の小学4年生の女の子に、メダケの葉を使った笹舟の作り方を教えてあげました。なつかしいですね。
明るい時に川で流して、どれが速いか競争すると楽しそうです。
女の子のおばあさんに、昔の対馬の森や川のお話を聞きます。
私たちが失いつつあるものは何なのか、ツシマヤマネコが絶滅の危機に瀕している原因は何なのか、年配の方のお話はたくさんのヒントに満ちています。
鳴き声はしませんが、陽の落ちた道路上でツシマカブリモドキを発見しました。
夜の帳(とばり)が降りると、ちょっと妖しい生き物たちも活動を始めます。
「モドキ、って・・・」
「かわいくねー・・・」
「カブトムシ、いないかなあ?」
ツシママムシ(対馬では「ヒラクチ」と呼ぶ)も路上に出てきました。
対馬では、夏に野山に入ろうとすると、「ヒラクチがおるけんね!気をつけんね!」と注意されます。
捨てられているタイヤをうかつに踏むと、タイヤの中に巣を作っているスズメバチに襲われることもあるので要注意です。
自然と付き合うには、危険な生き物に対する知識も必要なんですね。
日本では対馬でしか見られないアカマダラも出てきました。
赤と黒のシマ模様という毒々しい外見とは裏腹に、毒はありません。
「いかにも毒がありそうだけどなあ」
「中国では食用にするらしいよ」
「おそるべし、人間・・・」
アオバズクが遠くで鳴いているのを聞いて、柚木さんが手のひらを組み合わせて息を吹き込み、「ホーホー」と鳴きマネをしました。
すると、縄張り意識の強いオスがすぐ近くまで寄ってきて、私たちに向って「ホーホー」と鳴き始めました。
その後、しばらく近くで「ホーホー」と鳴いていました。
参加者全員、初めてのアオバズクに感動です。
「かわいー!」
「こんなに近くまで来るんだねえ」
参加者も鳴きマネをしていますが、柚木さんのようにはうまくいきません。
「スカスカー!」
「フガフガー!」
「ダメだ、こりゃ」
キリギリスの仲間はまだあまり鳴き始めていませんでしたが、コオロギの仲間はよく鳴いていました。
これから8月末にはまた違った虫の音を聞くことができるのでしょう。
アオバズクを観ることができたことも楽しいハプニングでした。
みなさんも夜の散歩に出かけてみませんか?
(ヒラクチには十分気を付けて)
※今回見ることができた、あるいは声を聞くことができた生き物のリストは[ こちら ]