九州地域のアイコン

沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2022年09月01日
  • 報道発表

令和3年度奄美大島におけるマングース防除事業の 実施結果について(お知らせ)

 環境省沖縄奄美自然環境事務所は、外来生物法に基づくマングース防除事業(以下「防除事業」という。)を平成17年度から実施してきました。令和3年度からは、新たな計画「根絶確認及び防除完了に向けた奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」※に基づく防除事業を行い、引き続き奄美大島からのマングース根絶を目指しております。
 令和3年度の防除事業では、わな、探索犬による探索ともにマングースの捕獲はありませんでした。平成30年4月に捕獲があって以降、約4年に亘り捕獲のない状態が続くため、継続的にマングースが減少しており、奄美大島における現在の生息数はきわめて少ない状態又は根絶できている状態になっていると考えられます。
 引き続き、島内にお住いの皆さんからのマングース目撃情報の提供をお願いいたします。

※「根絶確認及び防除完了に向けた奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」: 
http://kyushu.env.go.jp/okinawa/pre_2021/post_145.html

1.防除事業の実施内容等の概要

環境省は奄美大島に生息するアマミノクロウサギやアマミヤマシギ等の在来種を含む奄美大島固有の生態系を保全することを目的に、奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12(2000)年度に奄美大島においてマングース駆除事業を開始した。平成17(2005)年度からは外来生物法に基づく防除事業を開始し「奄美マングースバスターズ」を結成するなど、防除の強化を図ってきた。令和3年度からは奄美大島におけるマングースの根絶の確認と防除完了の過程を適切に進めることを目指す「根絶確認及び防除完了に向けた奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」に基づいて防除作業を進めている。令和3(2021)年度は奄美マングースバスターズ32名の体制で捕獲作業等を実施した。また、特定地域(岩崎産業(株)社有林内またはその周辺のマングース分布域)においては、平成20(2008)年度より別途の体制(令和3年度捕獲従事者5名体制)で捕獲作業等を実施している。このような体制により、現在はマングース分布域の全域で捕獲作業等を実施することが可能となっている。
捕獲作業には、筒型捕殺わな(以下「筒わな」という。)及び延長筒わな(アマミトゲネズミの混獲を低減させる改良筒わな)を使用し、アマミトゲネズミ等の在来種の分布状況に応じて、両わなを使い分けている。
平成20(2008)年度からは、マングースの生息状況をより確実に把握し、効率的に捕獲するためにマングース探索犬を導入し、ハンドラーとともに訓練や探索等を実施している。令和3(2021)年度は10頭の探索犬及び6名のハンドラーによる体制で実施した。
マングース根絶の課題となっていた、わなや探索犬による捕獲が困難な場所に残存した個体の防除を図るため、平成29(2017)年度には、化学物質を用いた防除試験を実施し、マングース防除の新たな手法として化学的防除の実施方針を作成した。
事業の目的である在来種の回復状況を確認するため、捕獲作業と並行してセンサーカメラ、わな点検時などの情報を元に在来種のモニタリングを実施している。
当初令和4(2022)年度までを予定していた第2期防除実施計画を2年短縮して令和2年度で終了とし、令和3(2021)年度からは奄美大島におけるマングースの根絶の確認と防除完了の過程を適切に進めることを目指す「根絶確認及び防除完了に向けた奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」に基づく防除作業を実施している。
 

2.捕獲作業等の実施結果

(1)実施期間: 令和3(2021)年4月1日~令和4(2022)年3月31日
(2)実施区域: 奄美市、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町
(3)捕獲努力量・捕獲数等: 表1~5、図1~2のとおり
(4)結果概説
○ 令和3年度の防除では、マングースの根絶を科学的に評価するために必要な、3次メッシュあたりの年間の捕獲努力量を2,000わな日程度にすることを目安として一部過密だったわなラインを削減した。この結果、年度当初、奄美大島全体に28,528基のわなが設置されていたが、6,773 基のわなを撤去し、令和3年度末時点では21,755基とした(図1)。
○ 投入された捕獲努力量は、令和2年度よりも約34%減少した約149万わな日であった(表1、表2)。
○ わなではマングースの捕獲はなかった。全島的な低密度化が進んだものと考えられる(表2、図2)。
○ マングース探索犬(生体探索犬、糞探索犬)については、全域で2,102ペア日、探索ルート延長は全体で3,844㎞に達したが、マングースの確認・捕獲はなかった。
○ 奄美大島島内474地点にセンサーカメラを設置し、合計113,957カメラ日の撮影努力量を投入したが、マングースの撮影はなかった。平成30(2018)年度以降マングースは撮影されておらず、マングースがきわめて少ない、あるいは生息していない状況が示唆された(表3)。
○ 島民らから寄せられたマングース目撃情報は12件あり、すべての情報について、情報取得後に聞き取り調査などを実施し、聞き取り調査から確実にマングースではないと判断できない場合は、センサーカメラの設置や探索犬による探索等の対応を実施した。マングースの生息は確認されなかった。
○ アマミトゲネズミ及びケナガネズミ、アマミイシカワガエル等の在来種は、これまでの防除事業の成果により生息状況の回復傾向が確認されている。
 

3.令和4年度の防除事業について

令和3年度までの事業の結果、捕獲やセンサーカメラによるマングースの生息確認は約4年間されておらず、全島からの根絶に向け大きく前進したと考えられる。しかし、その上で残存個体群が生息している可能性も否定できない。令和4年度の防除事業では、令和3年度から運用している奄美大島におけるマングースの根絶の確認と防除完了の過程を適切に進めることを目指す「根絶確認及び防除完了に向けた奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」に基づき、引き続きわな、探索犬、センサーカメラ等によるモニタリングを継続していく。また島民からの目撃情報収集を継続していく予定である。
根絶確率算出モデルについては、環境研究総合推進費2020年度開始課題4-2006(城ヶ原貴通代表)「侵略的外来哺乳類の防除政策決定プロセスのための対策技術の高度化」における検討状況に応じて、捕獲作業計画や探索犬の運用等により必要なデータを集積していく。
加えて、奄美マングースバスターズが各種在来種のモニタリングを行いながら広域的な防除体制を維持し、引き続き奄美大島からの根絶を目指していく。

 

代替テキスト
図1. 令和3(2021)年度末時点 奄美大島におけるマングースのわな設置地点
 
代替テキスト# 
図2.奄美大島におけるマングース捕獲頭数の経年変化
表1.捕獲数・捕獲努力量・CPUEの経年推移
代替テキスト
 
表2.令和3(2021)年度 月別のわないよるマングース捕獲状況
        *1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
         *2 CPUE:わなによるマングース捕獲数/1,000 わな日
表3.平成19(2007)年度から令和3(2021)年度までのマングース撮影枚数および撮影率
代替テキスト# 
※ 平成28 年度、平成29 年度、平成30 年度は化学的防除試験の関連で集中的に設置していた
大和村嶺山地区のデータを除く結果
 

お問い合わせ先

担当:奄美群島国立公園管理事務所
(奄美野生生物保護センター)
所長 阿部 愼太郎
電話:0997-55-8620