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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2016年09月01日
  • その他

平成27年度沖縄島北部地域におけるマングース防除事業の実施結果及び28年度計画について (お知らせ)

 環境省と沖縄県は、連携協力して沖縄島北部地域において外来生物法に基づくマングース防除事業を行っています。
 平成27年度は125頭のマングースを捕獲しました。平成26年度に比べて、マングースの捕獲数、捕獲される地域ともに減少したことから、マングースの生息数、分布域は順調に減少していると考えられます。また、国頭村辺野喜から同村楚州以北については、地域的にマングースを排除したと考えられます。

1.背景

 フイリマングース(以下、「マングース」とする)は1910年に沖縄島の那覇市郊外に持ち込まれた外来種です。沖縄島南部に定着し、次第に分布域を拡大して、1990年代には塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北へ侵入したと考えられています。マングースの分布域拡大に伴って、ヤンバルクイナなどの希少野生動物の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになりました。

 このため、平成12年度から沖縄県が、平成13年度から環境省がマングースの防除事業を開始しました。平成17年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいてマングースが特定外来生物に指定され、SFラインより北の地域からマングースを根絶することを目標として防除実施計画を立て、この計画に沿って環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施してきました。これまでの対策により、マングースの生息数は大きく減少し、ヤンバルクイナなどの希少種をはじめとする在来種の回復傾向が見られています。また、マングースの捕獲に関する各種データの蓄積も進み、マングースの完全排除に向けた方策を検討できる状況になってきました。

 平成24年度には、これまでの成果を踏まえて防除実施計画の見直しを行い、新たに平成25年度から平成34年度までの10年間でSFライン以北のマングースを完全排除することを目標とした「第2期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画(以下「第2期計画*」という。)」を作成しました。平成25年度からこの計画に基づいて事業を行い、平成27年度も同様に事業を実施しています。

*第2期計画:http://kyushu..env.go.jp/naha/wildlife/data/gairai/boujyo/130425a.html

2.平成27年度防除事業の結果 (SFライン以北)

(1)実施期間

 環境省 平成27年4月1日から平成28年3月31日まで

 沖縄県 平成27年4月15日から平成28年3月31日まで

(2)事業実施区域(図1)

 環境省 主に国頭村

 沖縄県 主に大宜味村、東村

(3)実施体制

 平成27年度は環境省24名、沖縄県18名の計42名のやんばるマングースバスターズ(以下「バスターズ」という。)で捕獲作業等を実施しました。また、これとは別に北部訓練場では米海兵隊による事業も実施されました。

 図1.平成27年度事業実施区域

(4)捕獲結果

 ①全体概要

 1,460,071わな日の捕獲作業を行い、92頭のマングースを捕獲しました(表1)。なお、捕獲作業には、従来使用してきたカゴわなに加えて、平成20年度から導入した捕殺式筒わな、平成24年度から導入したソフトキャッチ(生け捕り式足括りわな)を在来種の分布状況に配慮しながら使用しました。また、探索犬とハンドラーの連携によるわなによらない捕獲(非わな捕獲)で33頭が捕獲されました(表2)。平成27年度の捕獲総数は125頭となり、平成26年度の155頭から約19%減少、最も捕獲数の多かった平成19年度(619頭)と比べると5分の1程度となっています。CPUE(100わな日あたりの捕獲数)も0.006で、前年度(0.008)に引き続き減少しており、沖縄島北部地域におけるマングースの個体数は順調に減少していると考えられます。また、捕獲されるメッシュ数が少なくなってきていることから、マングースの分布域が縮小してきていると考えられます(図2、図3)。

※メッシュ: 基準地域メッシュ(三次メッシュ)と呼ばれるもので、おおよそ1km四方。捕獲結果の集計に用いている。

 マングースの他に、在来種に悪影響を及ぼすおそれのある外来種としてクマネズミ747頭、ノネコ4頭も捕獲、排除しました。在来種はオキナワトゲネズミ8頭、ケナガネズミ24頭、ヤンバルクイナ48羽、アカヒゲ47羽などが混獲されました。混獲された在来種の多くは捕獲地点にて放逐しましたが、オキナワトゲネズミ2頭、ケナガネズミ20頭、アカヒゲ7羽はわな点検時にわな内で死亡していました。わな種によるマングースの捕獲の方法及び区域を計画的に調整することにより、混獲防止に努めていきます。

1.平成27年度までのわなによるマングース捕獲結果

表1

表2.探索犬とハンドラーによる非わな捕獲数

図2

図2.SFライン以北のマングースの捕獲数と捕獲メッシュ数の年度別推移

図3.年度ごとのマングース捕獲メッシュ

(左上:H19、右上:H22、左下:H25、右下:H27

②地域ごとの捕獲結果

 第2期計画では、沖縄島北部地域を河川やダム湖などを境に8つの作業地域にわけ、マングースの生息密度の低い北側からマングースを地域的に排除していくこととしています。

 マングース防除の進捗を詳細に評価するために、やんばるを北部(作業区域Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)、中部(作業区域Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ)、南部(作業区域Ⅶ、Ⅷ)の3つの地域に分けて捕獲結果を集計しました(図3、図4)。

図4.地域ごとのマングース捕獲数

・北部(主に国頭村の与那-安田以北) : 第2期計画の作業区域I、Ⅱ、Ⅲ

 平成14年度以降、少数ながらほぼ毎年、マングースが捕獲されていましたが、平成24年度以降、4年連続でマングースが捕獲されていません。

 捕獲作業に加えて、マングース探索犬やセンサーカメラ※※などによりモニタリングを行っており、平成26年度に国頭村辺野喜から与那にかけての地域(作業区域Ⅰ、約17km2)でマングースを排除できたと考えられていますが、平成27年度は最北部に当たる国頭村辺野喜-楚州以北の地域(図5、区域Ⅱ、約53.1km2)でもマングースの生息情報はまったく得られず、作業区域Ⅰに続き排除できたと考えられました。

 これらの区域も含め、再侵入することがないよう、引き続き捕獲作業やモニタリングを今後も行っていきます。

※マングース探索犬:マングースの臭いや糞などの痕跡をたよりにマングースの生息を確認する犬

※※センサーカメラ:動物の体温に反応して自動で写真を撮影するカメラ

図5.作業区域

・中部(主に国頭村の与那-安波以南) : 第2期計画の作業区域Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ

 平成19年度には、年間のマングース捕獲数は119頭となっていましたが、その後、減少に転じ、平成27年度のマングース捕獲数は9頭となりました(ピーク時の平成19年度に比べ、10分の1未満に減少)。しかし、現在も少数のマングースが残存していると考えられることから、モニタリング等で得られたマングースの生息情報に応じて、集中的な捕獲作業を実施します。

・南部(主にSFライン以北の大宜味村、東村) : 第2期計画の作業区域Ⅶ、Ⅷ

 平成15年度から平成20年度にかけて毎年500頭程度のマングースが捕獲されるなど、やんばるで最もマングースの生息密度が高い地域です。平成21年度以降、減少傾向がみられ、平成27年度のマングース捕獲数は116頭となりました(ピーク時の平成17年度に比べ、5分の1程度に減少)。現在もマングースが多く残存していることから、引き続き面的に高い捕獲圧を維持し、より一層の低密度化を図ります。

3.平成28年度防除事業計画

第2期計画に基づき、平成27年度とほぼ同規模での防除事業を実施しています。

環境省 那覇自然環境事務所

    所長 西村 学

沖縄県 環境部 自然保護課

    課長 金城 賢

担当:やんばる自然保護官事務所

   (やんばる野生生物保護センター)

    自然保護官 山本 以智人

       電話:0980-50-1025

   自然保護課

    主任技師 比嘉 剛

       電話:098-866-2243