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沖縄奄美自然環境事務所

沖縄島北部地域におけるフイリマングース防除実施計画

第2期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画(平成25 年度--平成34 年度)

平成25 年4月1日

1.防除の対象

フイリマングース(Herpestes auropunctatus)
※以下「マングース」という。

2.防除を行う地域

図:図1 マングース防除実施地域

沖縄県沖縄島北部地域(図1)
マングースの完全排除を目標とする「完全排除地域」を大宜味村塩屋から福地ダムの福上湖を経て大泊橋に至るライン(塩屋-福地ライン、以下「SF ライン」という)に設置されている第1北上防止柵以北とする。また、SF ラインと大宜味村塩屋から東村平良に至るライン(塩屋-平良ライン、以下「ST ライン」という)に設置されている第2北上防止柵とで挟まれた地域をST ライン以南からのマングース侵入阻止のための「バッファーゾーン」とする。さらに、ST ライン以南に近接する地域で、ST ライン以北へのマングースの侵入を抑えるために捕獲等を実施する地域を「密度管理地域」とする。密度管理地域以南の名護市を含む地域については、必要に応じて試験的な捕獲等を実施する「試験実施地域」とする。以上の完全排除地域、バッファーゾーン、密度管理地域及び試験実施地域を合わせた全域を「防除実施地域」とする。

3.防除を行う期間

平成25 年4月1日から平成35 年3月31 日

4.背景

マングースはヤンバルクイナ、オキナワトゲネズミ等を捕食することで、これらの沖縄島北部(やんばる)地域固有の希少野生動物の生存を脅かしている。平成12 年度から沖縄県が、平成13 年度から環境省が駆除事業を開始し、平成17 年度からは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が施行されたことにより、平成26 年度までの10 年間の防除実施計画を作成し、これに基づいて防除事業を実施してきた。これまでの集中的な捕獲を中心とした取り組みにより、マングースの生息数及び生息密度を大幅に削減し、分布域も縮小傾向にある。また、マングースの減少に伴い、ヤンバルクイナやケナガネズミの分布域及び生息個体数など生息状況の回復などの成果が見られている。このように第1フェーズの防除事業は大きな成果を上げつつも、平成26 年度までに沖縄島北部地域からのマングースの完全排除は達成できていない状況である(別紙1[PDF 1,532KB])。
そこで、これまでの防除の取り組みを評価した上で第2期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画(以下「本計画」という)を作成した。
なお、沖縄島北部地域のマングース防除は、我が国の生物多様性国家戦略2012-2020(平成24 年9月閣議決定)及び沖縄県の「生物多様性おきなわ戦略」(平成25 年3月策定)において重点的取り組みとして位置づけられ、その成果が進捗を示す指標とされている。したがって、本計画の目標達成は、これら生物多様性戦略の実現に向けて不可欠である。

5.防除の目標

固有の生物相を有し、多くの希少種の生息地であるやんばる地域の生態系を回復し、安定した状態で保全するために、マングースによる生態系への影響を将来にわたって排除し、長期的な観点から防除コストを最小化するために、SF ラインに設置されている第1北上防止柵以北の完全排除地域からの平成34 年度までの完全排除及び当該地域へのマングースの再侵入を防止することを目標とする。

6.防除の体制

本計画は環境省と沖縄県が役割分担しながら実施する。防除の実施に際しては、年度ごとに作業内容を踏まえて分担範囲を確定し、相互のマングース防除事業との連携体制を構築し、情報共有を図りつつ互いに協力しながら実施する。
現場におけるわなによる捕獲やモニタリング等の作業は、やんばるマングースバスターズ(平成20 年に編成されたマングースの防除を専門的に行う雇用従事者。以下「マングースバスターズ」という。)を中心とした専門従事者による組織的な体制を確保した上で、計画的に行う。また、マングースの探索を専門的に行う犬(以下「探索犬」という。)を確保し、ハンドラー(探索犬訓練士)とともに探索作業を行う。

7.下位目標と実施内容

本計画の目標を効果的に達成するために、下位目標と作業実施内容を下記の通り設定した(全体の実施スケジュールは別紙2[PDF 103KB]参照)。
(1) 完全排除のための実施目標

目標1:完全排除地域からマングースを完全排除する(詳細は別紙3[PDF 171KB]参照)。

1-1.完全排除に向けて順次地域根絶を達成していくために、河川、ダム湖等を境界として完全排除地域をⅠ~Ⅷの8つの根絶作業区域に分割し、マングースの生息密度が低い根絶作業区域Ⅰ(北側)の区域から順に根絶を達成していく(図2)。
1-2.わなによる捕獲と各種モニタリングの結果を踏まえて、各根絶作業区域をマングースの生息密度に応じて、①低密度化、②残存個体の排除、③根絶確認、④フォローアップ、⑤根絶状態の維持の5 つの段階に分けて、各段階の実施内容に応じて作業を行う。

図:図2 根絶作業区域

目標2:SF ライン以南からの再侵入を防止する。

2-1.バッファーゾーンから完全排除地域へのマングース侵入の危険性を最小化させるために、SF ラインの北側周辺の地域で集中的な捕獲及びモニタリングを実施する。
2-2.SF ラインの北側への侵入を防止するために、バッファーゾーンにおいて、継続的に大きな捕獲圧を投入する。
2-3.バッファーゾーンへの侵入機会を極力減らすために、ST ライン沿いの南側地域(密度管理地域)で捕獲作業を行い、ST ラインへの接近個体を減少させる。
2-4.バッファーゾーン並びにSF ライン北側及びST ライン南側での再侵入防止のための作業は、SF ライン以北の完全排除達成後も継続的に実施する必要がある。なお、外来ヘビ類対策も併せて検討を行い、平成34 年度までに作業内容を決定する。

目標3:在来生物の生息数、分布域等を回復させる。

3-1:希少種回復実態調査、マングースバスターズによるモニタリング、混獲から得られる希少種データ、その他の保護増殖事業の調査等のデータを解析することにより、希少種の生息密度、分布域の変化から回復状況を毎年評価する。
3-2:マングース捕獲わなによる希少種の混獲について、継続的に混獲データを蓄積し、最新の希少種の混獲リスクを把握する。混獲リスクの評価及び混獲の対応方針は検討委員会等で協議し、設置するわなの種類、設置時期、設置地域等の修正を行うことで、希少種の生息密度及び分布域の回復のために適切な混獲リスク管理を行う。
3-3:完全排除達成後も混獲情報以外の各種モニタリング調査を一定期間継続し、在来生物の回復状況を評価する。

(2)防除を効果的に推進するための目標

目標4:防除技術及び手法の新たな開発、改善により事業の効果を向上させる。

4-1:大学、研究機関、企業などと連携、協力しながら、希少種の混獲の危険性が低くマングースを捕獲し易いわな、誘引餌、毒餌等の新たな防除技術及び手法、検出精度の高い新たなモニタリング技術、地域根絶の状態を維持するための安価な簡易移動阻止柵等の技術開発を行う。
4-2:上記4-1 の技術開発と実証試験を通して効果の認められたものを防除事業に導入する。

目標5:様々なメディアを通した広報及び普及啓発活動により、防除事業への地域住民をはじめ一般市民からの理解と協力を得る。

5-1:地域住民に対して、広報、ニュースレター、報告会、やんばる野生生物保護センターの展示等を通じて、定期的に事業の実施内容、進捗状況等について積極的に情報提供と意見交換を行う。
5-2:毎年適当な時期に捕獲結果や在来生物の回復状況等の事業成果について報道発表し、環境省及び沖縄県のホームページで公表するとともに、事業の進捗等に応じて定期的にパンフレット、ポスター等を印刷・配布することで、沖縄県民及び国民に対し広く情報提供を行い、事業への協力を求める。
5-3:生物多様性国家戦略及び沖縄県生物多様性地域戦略の達成状況進捗評価のために事業の進捗、事業目標達成状況をわかりやすい形で情報提供する。

目標6:防除事業の実施状況及び成果を定期的に評価し必要な改善を図る。

6-1:事業成果及び進捗状況を客観的且つ適切に評価し、改善点を抽出するために検討委員会を設置し、年2回会議を開催する。委員会で得られた評価及び改善点の検討結果を基に第2期防除実施計画の修正を図り、より効果的に事業を実施する。
6-2:検討委員会での評価及び改善点の検討結果等に基づき、年度ごとに事業実施計画を作成し、この計画に沿って事業を実施するものとする。
6-3:マングースの完全排除に向けては、同種の生息状況や現場状況等を踏まえた順応的な管理が必要不可欠であるため、本計画は、委員会における検討結果等を踏まえ、本計画の5年目(平成29 年度)及びその他必要に応じて見直しを行うこととする。

防除実施計画

別紙1 平成23年度までの防除事業の総括(成果と課題について)[PDF 1,532KB]
別紙2 計画全体の実施スケジュール[PDF 103KB]
別紙3 目標1.完全排除地域からのマングースの完全排除の作業内容(案)[PDF 171KB]