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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2015年08月24日
  • その他

平成26年度沖縄島北部地域におけるマングース防除事業の実施結果及び27年度計画について(お知らせ)

環境省と沖縄県は、連携協力して沖縄島北部地域において外来生物法に基づくマングース防除事業を行っています。
平成26年度は155頭のマングースを捕獲しました。平成25年度に比べて、マングースの捕獲数、CPUE(100わな日あたり捕獲頭数)ともに減少し、捕獲される地域ともに減少したことから、マングースの生息数、分布域は順調に減少、縮小していると考えられます。
また、国頭村辺野喜から同村与那にかけては、地域的にマングースの根絶を達成したと考えられます。
一方、ヤンバルクイナについては、平成25年度に引き続き、マングース北上防止柵のある塩屋-福地ライン(SFライン)付近でも生息が確認されるなど、生息状況が回復してきていると考えられます。
平成27年度も26年度と同様に防除実施計画に基づく防除事業を行い、平成34年度までにSFラインより北での完全排除を目指します。

平成 27年8月24日(月)

環境省 那覇自然環境事務所

所長 西村 学

沖縄県環境部自然保護・緑化推進課

課長 謝名堂 聡

担当:やんばる自然保護官事務所

(やんばる野生生物保護センター)

自然保護官 山本 以智人

電話:0980-50-1025

自然保護・緑化推進課 主任技師 比嘉 剛

電話:098-866-2243

1.背景

 マングースは1910年に沖縄島の那覇市郊外に持ち込まれた外来生物です。沖縄島南部に定着し、次第に分布域を拡大して、1990年代には塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北へ侵入したと考えられています。マングースの分布域拡大に伴って、ヤンバルクイナなどの希少野生動物の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになりました。

このため、平成12年度から沖縄県が、平成13年度から環境省がマングースの駆除事業を開始しました。平成17年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいて特定外来生物に指定され、SFラインより北の地域からマングースを根絶することを目標として防除実施計画を立て、この計画に沿って環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施してきました。これまでの対策により、マングースの生息数は大きく減少し、ヤンバルクイナなどの在来生物の回復傾向が見られています。また、マングースの捕獲に関する各種データの蓄積も進み、マングースの完全排除に向けた方策を検討できる状況になってきました。

平成24年度には、これまでの成果を踏まえて防除実施計画の見直しを行い、新たに平成25年度から平成34年度までの10年間でSFライン以北のマングースを完全排除することを目標とした「第2期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画(以下「第2期計画*」という。)」を作成しました。平成25年度からこの計画に基づいて事業を行い、平成27年度も同様に事業を実施しています。

2.平成26年度防除事業の結果

図1: 平成26年度事業実施区域

(1)実施期間

環境省 平成26年4月1日から平成27年3月31日まで

沖縄県 平成26年4月1日から平成27年3月31日まで

(2)事業実施区域(図1)

環境省 国頭村(伊地-安波ライン以北)

沖縄県 国頭村、大宜味村、東村(SFライン以北から
伊地-安波ラインまで)

 

(3)実施体制

平成26年度は環境省25名、沖縄県16名の計41名のやんばるマングースバスターズ(以下「バスターズ」という。)で捕獲作業等を実施しました。また、これとは別に北部訓練場では米海兵隊による事業も実施されました.

(4)捕獲結果

1,675,856わな日(沖縄県583,825わな日、環境省836,347わな日、米海兵隊255,684わな日)の捕獲作業を行い、127頭(沖縄県112頭、環境省7頭、米海兵隊8頭)のマングースを捕獲しました(表1、図2)。なお、捕獲作業には、従来使用してきたカゴわなに加えて、平成20年度から導入した捕殺式筒わな、平成24年度から導入したソフトキャッチ(生け捕り式足括りわな)を在来生物の分布状況に配慮しながら使用しました。また、探索犬とハンドラーの連携によるわなによらない捕獲(非わな捕獲)により28頭が捕獲されていることから(表2)、捕獲総数は155頭となりました。

マングース捕獲数、CPUE(100わな日あたりの捕獲数)は、前年度に引き続き減少しており、最も捕獲数の多かった平成19年度と比べると、4分の1程度の捕獲数となったことから、沖縄島北部地域におけるマングースの個体数は順調に減少していると考えられます。また、国頭村では捕獲される範囲が狭まってきていることから、マングースの分布域が縮小してきていると考えられます(図3)。

マングースの他に、在来生物に悪影響を及ぼすおそれのある外来生物としてクマネズミ401頭、ノネコ3頭も捕獲、排除しました。在来生物はオキナワトゲネズミ2頭、ケナガネズミ52頭、ヤンバルクイナ28羽、アカヒゲ65羽などが混獲されました。混獲された在来生物の多くは捕獲地点にて放逐しましたが、筒わなで捕獲されたオキナワトゲネズミ1頭、ケナガネズミ18頭、アカヒゲ4羽はわな点検時にわな内で死亡していました。わな種によるマングースの捕獲の方法及び区域を計画的に調整することにより、混獲防止に努めていきます。

表1: 平成26年度までのマングース捕獲結果 表2: 探索犬とハンドラーによる非わな捕獲数

図3: マングース捕獲状況 平成23年度、平成24年度、平成25年度、平成26年度 図2: SFライン以北のマングースのわなによる捕獲数とCPUEの年度別推移 ※CPUE=捕獲数/捕獲努力量×100(100わな日あたりの捕獲数)

(5)地域的な根絶の達成

図4: 根絶作業区域 第2期計画では、沖縄島北部地域を河川やダム湖などを境に8つの地域にわけ、マングースの生息密度の低い北側からマングースを地域的に根絶していく予定です。

平成26年度は、国頭村辺野喜から与那にかけての地域(図4、根絶作業区域Ⅰ、約17km2)を対象とし、捕獲作業に加えて、マングース探索犬、センサーカメラなどによるモニタリングを重点的に行いましたが、マングースの生息情報は得られませんでした。したがって、この地域からマングースを根絶したと考えられます。

  • ※センサーカメラ:動物の体温に反応して自動で写真を撮影するカメラ

(6)ヤンバルクイナ の回復状況

ヤンバルクイナは、発見当初の1980年代には大宜味村塩屋湾と東村平良湾を結ぶライン(STライン)以南でも生息が確認されていましたが、マングースの北上に伴い、分布域が縮小しました。環境省のプレイバック調査では、平成21年度には国頭村と東村の一部でしか生息が確認できませんでした(図5右,合計120メッシュで確認)。しかし、マングースの防除が進み、マングースの個体数及び分布域が縮減したことで、ヤンバルクイナの分布域、生息数が回復する傾向が見られはじめました。平成26年度は、前年度に引き続き、SFライン付近の大宜味村大保や東村川田でも生息が確認されました(図5左,合計142メッシュで確認)。

  • ※プレイバック調査:スピーカーで鳴き声を流し、鳴き返す個体を記録する調査

図5: ヤンバルクイナの生息確認調査 平成26年度、平成21年度

3.平成27年度防除事業計画

平成26年度とほぼ同規模での防除事業を実施しています。