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10月25日のどんぐり探しハイキングは、秋晴れのお天気のもと、上県町・佐護のバードウォッチング公園で開催されました。
環境省の自然公園指導員をされている長渡稔治(ながととしはる)さんを講師にお迎えして、クヌギやマテバシイ、スダジイなどのドングリの同定方法(見分け方)を学びました。
拾ったドングリは参加者の皆さんに1年間育てていただき、多様な生き物が住む森作りに活用させていただく予定です。
まずは参加者のみなさんの自己紹介。
講師の長渡稔治(ながととしはる)さんは「花の対馬ネットワーク」の会長であり、営林署に勤務していたという経歴の持ち主です。樹木や野草・自然についての知識も豊富です。
(画面中央左のベストの方が長渡さんです)
もともと種子島出身ですが、九州各地の森を歩いた結果、対馬の海と森が気に入り、対馬に住むことにしたとか。
いろいろな種類のドングリや木の実を自由に集めてもらいます。子どもはドングリが大好き!
でも実際に拾い始めると、大人の方が夢中になってたりして。
ドングリにはそういう不思議な力があるんでしょうね。
「ドングリ、たくさん見つけられそう?」
「まかして!」
「丸いドングリを見つけました」
「ふむふむ、これはクヌギですね」
長渡さんの説明を聞きながら、ちょっとずつ見分け方を学びます。
後方では、動植物に詳しいMさんと、野鳥の専門家・柚木さんが、秋に鳴くセミ「チョウセンケナガニイニイ」を探しています。
会場に使用したバードウォッチング公園でさかんに鳴いていたチョウセンケナガニイニイは、10月末から11月にかけて成虫を見ることができるセミです。秋の森でセミの鳴き声が響くというのも不思議で、対馬ならではですね。このチョウセンケナガニイニイは全身に細かい毛が生えているのが特徴です。
Mさんにチョウセンケナガニイニイの標本を見せていただきました。
「お~・・・これが・・・」
「ケナガというだけあって、ホントに毛深いですね・・・」
「カビじゃないよ、言っとくけど」
若いクヌギの林です。実はクヌギは本来の対馬の植生には存在しませんでした。対馬でよく見られるのはシイタケ原木や薪炭林用として植林されたものです。ちなみによく似たドングリをつけるアベマキは対馬に本来あった樹種です。
ツシマヤマネコが絶滅寸前の状態にまで減ってしまった原因のひとつは、ネズミ類の餌となるドングリの森が減ってしまったことだとも言われています。
ただ、手入れのされた杉・桧林では生息する生き物の種類が多いというデータもあり、ツシマヤマネコや対馬の生き物たちが安心して暮らすにはどういう森がよいのか、学ばねばならないことはまだまだたくさんあります。
どんぐりを探していて、カヤネズミの巣を発見しました。きれいな形で出入り口の穴もはっきりとしています。
カヤネズミは日本最小のネズミで、カヤのヤブの中などに巣を作り、エノコログサやバッタ類を食べて生活しているとか。
長渡先生が色々な種類のどんぐりを入れてもってきてくださいました。
マテバシイ、スダジイ、ツブラジイ、アカガシ、アベマキ・・・などなどなど。それぞれ個性的な形をしています。
ドングリあれこれ。
「ドングリ」とは特定の植物の実ではなく、ブナ科の樹木になる種子を指します。シイ属、コナラ属、マテバシイ属、クリ属などがあり、ドングリの形や殻斗(かくと=ドングリを包む帽子の部分)の形もさまざまです。
「これコナラだよねえ?」
「わかんない・・・」
「コナラだよ~」
手前左側がクヌギのドングリ。
なんとも愛嬌のある、美しい形をしています。
撮影中にも、瑞々しいドングリがいくつか落ちてきました。
ドングリの大きさを比較するために、手に乗せてみました。
クヌギのドングリを見ると、クリに非常に近い仲間だということがわかります。
「イテテ・・・」
「お気に入りはこれ!」
夢中でどんぐり拾いをしていたら、いつのまにかヌスビトハギがくっついていま
した。対馬のこどもたちは「どろぼう」とよく呼びます。長渡先生によると、その形が泥棒がぬきあし、さしあし、歩く時の足跡の形にその種子(服などにくっつく部分)が似ているためだとか。
希望者には今回ひろったドングリのなかから選りすぐりの1つをポットに植えて、その萌芽を観察してもらうことにしました。
「お子さん達が大きくなる頃には、このドングリも立派な樹に育ってますよ」
「そっかあ」
熱心な参加者のみなさんが長渡さんと談笑しています。長渡さんの森や自然に関する知識や経験からは学ぶことが多く、これからの対馬の森作りにとても参考になります。
どんぐり探しハイキングは、今後もこの季節になったらやりたいですね。
次回は別の種類のドングリが拾える場所で開催しても楽しそうです。講師の長渡先生、熱心な講義をありがとうございました。そして、参加者の皆さん、持ち帰ったドングリをそだてて芽が出たらセンターにご一報を!
さて、ここからはおまけ編。
イベント終了後、場所を移動して、希望者みんなでドングリを植えました。
花を咲かせ、実を結び、昆虫や野鳥やネズミやツシマヤマネコたちが暮らせる豊かな森に育ってほしいという願いをこめて、ひとつひとつ丁寧に埋めていきます。
ある程度大きく育ったら、山に移植する予定です。
ドングリは種類別に標識を立てて、経過を見守ります。
「このところ雨が降らないもんねえ」
「イノシシが心配だなあ」
ツシマヤマネコ応援団「どんぐりプロジェクト」のリーダー野田さんと参加者のみなさんです。
いま、全国各地の学校・企業・ボランティアなどでドングリの森作りプロジェクトが動き出しています。生き物の豊かな素晴らしい環境は、私たちが次の世代の子ども達へ受け継がねばならない最も大切なものではないでしょうか。
小さなドングリの芽が、多くの生き物達を支えていく豊かな森へと成長していくことを願いつつ。