ツシマヤマネコは日本では長崎県対馬にのみ生息し、国の天然記念物に指定される小型の野生ネコ科動物です。1994年には絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)の国内希少野生動植物種に指定され、日本版レッドデータブックでは最も絶滅のおそれの高い絶滅危惧IA類に分類されています。
(写真:対馬野生生物保護センターで一般公開中の「つしまる」)
絶滅の危機に瀕しているツシマヤマネコを保護・管理する上で、その生息状況を把握することが不可欠です。これまでに、第一次生息特別調査(1985~1987)、第二次生息特別調査(1994~1996)の2度の生息調査を経て、今回第三次生息調査(2002~2004)が行われました。
今回の調査では、最新の推定生息数とあわせて生息密度分布図を作成するとともに、過去に行われた推定生息数や分布状況を改めて検討し、生息状況の変遷を把握することを目的としました。
(写真:自動撮影カメラに写ったツシマヤマネコ)
ヤマネコの生息数を推定するにはまず、「生体の保護・死体の拾得」「自動撮影写真」「DNA分析による確実な痕跡(糞)」などからヤマネコの生息情報を集め、それを基に生息確認地を地図に書き込みます。
次に痕跡調査から得られたフンの密度分布を地図に塗り分けます。この分布図を、フン密度と生息密度の関係がわかっている地域と比較し、フン密度からわかる生息個体数を推定します。
これらの情報を合わせて、より精度の高い生息頭数の推定と密度分布マップの作成を行いました。
フンの表面を覆う腸粘膜細胞からDNAを抽出し、種判別を行う方法により、ヤマネコのフンかどうかが確認されます。新たに開発されたこの方法を用いることにより、信頼性の高い多くの生息情報を痕跡から得ることができました。
2002年~2004年の調査結果から得られた、現在の密度分布状況です。