報道発表資料
【通知】ペット由来動物によるヤンバルクイナやケナガネズミの捕食
2007.04.25 那覇自然環境事務所
本年に入り、絶滅のおそれのあるヤンバルクイナ4件、ケナガネズミ1件の死亡個体が確認されました。このうちヤンバルクイナ1件、ケナガネズミ1件の計2件は咬傷部位に残された唾液等をDNA分析した結果、イヌにより捕食された可能性が極めて高いことが明らかとなりました。また残り3件のヤンバルクイナ死亡個体についても、獣医師による所見から、それぞれイヌとネコによる捕食の可能性が高いと考えられています。
4~6月はヤンバルクイナ等多くの鳥類が繁殖期を迎え卵やヒナと過ごしている季節です。イヌやネコを捨てることや、イヌの放し飼いなどペットの不適切な飼育は、動物の愛護及び管理に関する法律に抵触するとともに、ヤンバルクイナ等希少野生動物にとって大きな脅威となります。
4月29日に、沖縄県の主催により「捨て犬・捨てねこ防止キャンペーン」が開催されます。やんばるを訪れる方が、決してペットを捨てていくことがないよう、環境省としてもキャンペーンにおいて普及啓発することとしています。
1.希少種の死亡状況
- [1]平成19年1月3日 ケナガネズミ(環境省レッドデータブック絶滅危惧IB類)
- 沖縄国際大学・琉球大学野生動物研究グループが国頭村与那覇岳周辺において野生動物調査実施中に死体を発見した。死体はNPO法人どうぶつたちの病院に搬送され、死因究明のために咬傷部位等の検索を行なったのち、(独)国立環境研究所に送付された。咬傷部位からの唾液に含まれる細胞が分析され、イヌのDNAが検出された(別紙1[PDF]参照)。
- [2]平成19年2月9日 ヤンバルクイナ(環境省レッドリスト絶滅危惧IA類)
- 国頭村安田において、頭部が切断され、内臓が食害を受け、首から足にかけて20箇所以上の咬傷と考えられる穴の開いた死体が住民により発見された。周囲には羽毛が散乱していた。死体は環境省やんばる野生生物保護センター職員によってどうぶつたちの病院に搬送され、食痕から捕食動物はイヌと判断された。
- [3]平成19年2月24日 ヤンバルクイナ
- 国頭村安田において、環境省やんばる野生生物保護センター職員がヤンバルクイナの生態情報把握のためのテレメトリー調査を行っていたところ、発信器を装着していた個体の死体を発見した。羽毛や骨片が散乱し、脚部に装着していた脚環がはずれていた。羽毛等は、どうぶつたちの病院を経由し、(独)国立環境研究所へ発送された。羽毛等についた唾液に含まれる細胞が分析され、イヌのDNAが検出された(別紙2[PDF])。
- [4]平成19年4月16日 ヤンバルクイナ
- 国頭村安田において、環境省やんばる野生生物保護センター職員がヤンバルクイナの生態情報把握のためのテレメトリー調査を行っていたところ、発信器を装着していた個体のバラバラになった死体を発見した。死体を(独)国立環境研究所で分析した結果、イヌ、ネコ、マングースのDNAは検出されなかったが(別紙3[PDF])、どうぶつたちの病院の獣医師の所見によれば、イヌによる捕食の可能性が高い。
- なお、ヤンバルクイナの事例[2]~[4]の発生地点付近では、環境省のヤンバルクイナ生息調査中に林内でイヌ3頭が自動撮影カメラによって撮影されている。
- [5]平成19年4月18日 ヤンバルクイナ
- ヤンバルクイナの分布南限域である東村高江において、ネコがヤンバルクイナの死体を保持しているのが発見された。
環境省やんばる野生生物保護センター職員がどうぶつたちの病院に搬送した。頚部から頚部の付け根にかけてネコの犬歯によると思われる複数の傷があり、重度の内出血、気管の断裂等の所見が見られ、大腿部の骨の非薄な部分で骨折が確認された。(独)国立環境研究所において分析した結果、頚部からはネコのDNA、大腿部からはイヌのDNAが検出された(別紙3[PDF])。
(参考)死因究明
死体発見後、環境省が連絡を受け、NPO法人どうぶつたちの病院による死因検索、死体の状況から捕食者の推定、国立環境研究所による捕食者のDNA検出等まで、これまで曖昧であった死因究明が迅速に行うことができるようになった。とくに捕食者をDNAで特定できた事は本邦初であり、外来の肉食獣による在来種の捕食証明に関する技術が大きく躍進した。
2.捨て犬・捨てねこ防止キャンペーン
4月29日、沖縄県福祉保健部薬務衛生課の主催により以下の場所で「平成19年度捨て犬・捨てねこ防止キャンペーン」を開催し、パンフレットやチラシの配布を行います。
- 名護市許田 「道の駅許田」周辺(13:00-15:00)
- 北谷町美浜(ミハマセブンプレックス前交差点周辺)(13:00-15:00)
また、同日、ヤンバルクイナ交通事故防止キャンペーン(やんばる地域ロードキル発生防止に関する連絡会議、事務局:環境省那覇自然環境事務所)を以下の場所で開催し、ここでも同様のパンフレットやチラシの配布を行います。
- 東村平良 特産品加工直売所(10:30-12:30)
- 国頭村奥間 「道の駅ゆいゆい国頭」(13:00-15:00)
取材や画像など希望の場合は、やんばる野生生物保護センター(三宅)もしくはNPO法人どうぶつたちの病院長嶺(090-3790-5613)までご連絡ください。
添付資料
連絡先
環境省 那覇自然環境事務所
所長 中島 慶二
担当:やんばる自然保護官事務所
自然保護官 三宅 雄士
TEL 0980-50-1025