管内の希少野生生物保護事業
行政資料
管内の希少野生生物保護事業
哺乳類
◆アマミノクロウサギ
奄美大島と徳之島の2島だけに生息する固有種です。外来生物であるマングースによる捕食や生息地となる森林が開発されたことで、その個体数が減少したと考えられています。また、近年は、飼育を放棄され野生化したノイヌやノネコによる捕食や交通事故の増加などの問題も発生しています。当事務所では、分布域や生息密度状況の現状と経年変化の把握、幼獣の糞塊調査による繁殖時期の推定など生態情報の把握、マングースやノイヌ、ノネコの影響の除去、交通事故防止対策としての移動式看板の設置、目撃情報の集積等を実施しています。
◆イリオモテヤマネコ
昭和42年に新種記載された西表島固有のヤマネコです。観光開発、道路改修、農地改良などによる生息環境の改変・悪化、交通事故がその生存にとって脅威となっています。また、ネコとの競争、伝染病の侵入も危惧されています。当事務所では、自動撮影カメラによる生態情報の把握のためのモニタリングや、傷病救護個体の収容・治療体制の確保、交通事故状況の把握と事故防止のための普及啓発活動を行っています。
鳥類
◆アマミヤマシギ
シギ科の鳥類で、奄美・沖縄諸島に広く分布していますが、繁殖が確認されているのは、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島および徳之島だけです。地上に営巣するため、マングースやイヌ、ネコの影響を受けやすいと考えられ、とくにマングースの分布域拡大に伴い本種の分布域が後退、縮小しています。当事務所では、夜間ルートセンサスによる分布状況及び個体数の変動把握、好適環境の解析、行動観察等による基礎的生態情報の把握を行っています。またDNA分析により捕獲個体の性判定を行うとともに、地域個体群間の遺伝的解析を試みています。
◆オオトラツグミ
奄美大島のみに分布するツグミ科の固有種です。壮齢林の谷間を中心に生息していますが、生息状況及び生態には未解明な点が多く残されています。森林伐採や林道開設などによる森林の乾燥化・分断化、外来動物の捕食による生息への影響が懸念されています。当事務所では、保全に必要な基礎的生態情報を蓄積するため、営巣環境や、好適生息環境、生息状況調査、集団遺伝解析等を実施しています。
◆ノグチゲラ
沖縄島北部固有のキツツキの一種です。集落周辺にも姿を現しますが、繁殖が確認されるのはスダジイの多く混じる壮齢林とその周辺に限られます。森林伐採による生息環境の縮小と分断化が、生息域減少の最大の原因と考えられていますが、ハシブトガラスやマングースなどによる捕食の影響も指摘されています。当事務所では、足環標識を装着した個体の追跡調査を実施し、成鳥の定住性、行動圏の広さ、つがい関係の継続、産卵数、巣立ちヒナ数などの生態を明らかにしました。また、生息状況のモニタリングを継続的に実施しています。
◆ヤンバルクイナ
昭和56年に新種記載された沖縄島北部に固有の無飛翔性クイナの一種です。ノイヌやノネコ、マングースなどによる捕食が個体数減少の主な原因であると考えられていますが、近年は、交通事故等による死亡確認例も増加しています。当事務所では、プレイバック法による分布調査、自動撮影カメラによる個体確認、発信機を装着した個体の追跡調査、食性分析などによる生息状況及び生態の把握を進めています。また、交通事故防止対策として、関係機関と連携した対策会議の開催や普及啓発活動を実施しているほか、国頭村、大宜味村、東村、沖縄県と協力しながらノイヌ・ノネコ対策や飼い猫の適正飼養に関する普及啓発を実施しています。
生息域の縮小に伴い、平成20年度から、繁殖技術の確立と飼育下における生態的知見の把握及び一定の個体数の維持を図るため、保護増殖事業計画に基づいて「ヤンバルクイナの飼育下繁殖に関する基本方針」を策定し、飼育下における繁殖や野生復帰試験を実施しています。
◆カンムリワシ
八重山諸島に生息する大型の猛禽類で、水田など湿地帯をともなう林縁部を主な生息環境にしています。近年、採餌環境である湿地や水田が畑や牧場などにかわり、生息環境が悪化しつつあります。また、交通事故も問題になっています。当事務所では、平成15年度から本種の生息数の把握、行動追跡調査及び交通事故発生要因の調査等を実施しています。また、交通事故対策として、民間団体と協力しながら普及啓発活動を展開すると共に、野生個体群のモニタリングや傷病個体の救護を実施しています。
→カンムリワシ保全方針[PDF 1,2515KB]
爬虫類
◆ミヤコカナヘビ
沖縄県宮古諸島のみに分布する日本固有種であり、草地や藪に生息しています。かつては宮古諸島のどこでも普通に見られていましたが、現在は過去に確認されていた地点の多くで生息が確認できず、個体数が激減していると考えられています。その要因として、開発、農薬、外来種(インドクジャク、国内外来種であるニホンイタチ等)、乱獲等の影響が指摘されています。当事務所では、各個体群の生息状況等の把握とモニタリングを行い、その結果等を踏まえて、本種の生息に必要な環境の維持・改善及び違法捕獲防止対策を図るとともに、生息域外保全や野生復帰の検討を進めています。
→保護増事業計画
→ミヤコカナヘビ10ヶ年実施計画
◆キクザトサワヘビ
昭和31年に発見され、昭和33年に新種記載された久米島固有の淡水生ヘビです。生息地はイタジイなどの自然林が残る渓流域に限られますが、近年、水質悪化に伴う餌生物の減少や農業用取水ホースへの混入事故、ウシガエルなどの外来種による捕食などの影響で、生息域の縮小が懸念されています。当事務所では、平成10年および令和3年に生息地の一部を生息地保護区に指定し、その保全を図るとともに、生息状況をモニタリングしています。また、地域を対象とした普及啓発を推進しています。
昆虫類
◆ヤンバルテナガコガネ
昭和57年に発見、翌昭和58年に新種記載された日本最大の甲虫であり、沖縄島北部の原生的自然林が残るごく限られた地域のみに生息しています。幼虫の餌となる腐植物が十分に堆積した樹洞内に生息していますが、森林伐採や密猟により絶滅が危惧されています。
当事務所では、生息状況のモニタリングや分布調査、生態調査をすすめるとともに、平成13年にヤンバルテナガコガネ密猟防止協議会を設置し、関係機関と密猟防止活動を展開しています。
◆イシガキニイニイ
石垣島固有のセミであり、その分布は米原のヤエヤマヤシ林周辺に限られています。平成14年に国内希少野生動植物種に指定され、翌15年には生息地保護区が設置されました。本種の生息地は脆弱で、人の踏み固めなどの影響を受けやすいため、保護区の一部には立入制限地区も設定されています。当事務所では、平成15年以降、イシガキニイニイの生息状況モニタリング調査を実施してきましたが、毎年数個体しか確認できていません。そのため、平成20年度から、イシガキニイニイの生息状況並びに生息圧迫要因を詳細に把握するための調査を実施し、生息状況を改善するための対策を実施してきました。また、より簡便かつ確度の高い種同定を目的としたイシガキニイニイの音声の音響解析を実施してきており、効果的なモニタリング体制の構築をすすめています。