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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2025年05月02日
  • 報道発表

2024年奄美大島・徳之島における希少哺乳類の死因解明について

 環境省では、希少な野生動物の生息に影響を及ぼす要因の把握や保護対策への活用のため、野生動物の死体や傷病救護の情報を収集し、データの整理・分析を行っています。今般、奄美大島と徳之島で収集されたアマミノクロウサギ、ケナガネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミについて2024年(1~12月)の死体確認件数とその死因内訳を整理しましたのでお知らせします。
 アマミノクロウサギ及びケナガネズミにおいては、交通事故が最も多い要因となっており、徳之島では過去最多となりました。トゲネズミにおいては、両島でイヌやネコによる被害が比較的多くみられました。
 夜間に運転される方には、道路への野生動物の飛び出し等に十分ご注意いただくとともに、ペットを飼われている方には、室内飼養を徹底していただきたくお願いします。

1.2024年に回収された死体の確認件数と死因内訳

 2024年の1年間に奄美大島と徳之島で回収されたアマミノクロウサギ、ケナガネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミの死体確認件数と死因内訳を整理しました(図1、2-1、2-2、2-3)。アマミノクロウサギの死体確認数は242件(奄美大島177件と徳之島65件の合計)、ケナガネズミの死体確認数は103件(奄美大島92件、徳之島11件)、アマミトゲネズミの死体確認数は13件、トクノシマトゲネズミの死体確認数は5件となり、2023年と比較していずれも減少しました。
 アマミトゲネズミを除く各種では、交通事故死が最も多くなりましたが、生息状況の回復に伴う増加と、他の要因と比べて死体が目に付きやすい道路上で回収されたことによるものと考えられます。また、イヌやネコによる捕殺が原因と思われる死体はトゲネズミで割合が高い傾向となりました。
 

    図1.奄美大島と徳之島において回収された希少種の死因内訳(2024年)
 

     図2-1.アマミノクロウサギの死因内訳の経年変化(2000~2024年)
 

      図2-2.ケナガネズミの死因内訳の経年変化(2000~2024年)
 

      図2-3.トゲネズミ類の死因内訳の経年変化(2000~2024年)
 


2-1.交通事故件数の増加について

 2024年の交通事故の死体確認件数は、奄美大島ではアマミノクロウサギ121件(死体118件、救護のち死亡3件)、ケナガネズミ39件(死体38件、救護のち死亡1件)、アマミトゲネズミ1件(全て死体)、徳之島ではアマミノクロウサギ42件(全て死体)、ケナガネズミ3件(全て死体)、トクノシマトゲネズミ2件(全て死体)が確認されました(表1)。徳之島ではアマミノクロウサギが過去最多となりました。
 なお、交通事故が原因と思われる傷病事例としては、前述の死亡件数のほかに、奄美大島において道路上で血を流しているアマミノクロウサギを保護できなかったケースが1件ありました。
交通事故が多発している道路は、奄美大島では県道79号線(大金久~今里間)、国道58号線役勝トンネルから網野子トンネルまでの区間と三太郎トンネル前後、県道85号線(湯湾新村線)、湯湾岳周辺の林道、町道網野子峠線・嘉徳線、徳之島では県道618号線(松原轟線)、当部集落周辺などです(図3)。



                   

     図3.2024年のアマミノクロウサギの交通事故地点と多発区間
 


2-2.交通事故防止の対策と協力のお願い

 アマミノクロウサギのみならず、ケナガネズミ及びトゲネズミ等希少野生動物の交通事故も近年確認されています。交通事故はスピードの出やすい国道・県道を中心にさまざまな道路で発生しており、交通事故が多発している地点には警戒標識などが設置されています。標識のある場所付近では特に、夜間の運転における野生動物の急な飛び出しなどに注意をお願いします。


 

3-1.イヌやネコによる捕殺事例の確認について

 2024年においては、奄美大島でアマミノクロウサギ14件、ケナガネズミ3件、アマミトゲネズミ6件が、徳之島でアマミノクロウサギ9件、ケナガネズミ0件、トクノシマトゲネズミ2件が、イヌやネコによる捕殺死体として確認されました(図1)。
 イヌやネコによる捕殺の確認数については、車道を中心とした発見と回収になっていることや、死体回収や死因判定が難しいことなどから、必ずしも捕殺の多寡を示すものではなく、実際のイヌやネコによる捕殺頭数のごく一部を示したものに過ぎないと考えられます。



3-2.ノネコ対策へのご理解ご協力およびペットの適正飼養等のお願い

 現在、奄美大島と徳之島では、森林域に生息するノネコの捕獲事業を行っています。捕獲されたノネコの糞からは、多くの希少種が検出されています。また、自動撮影カメラによるモニタリングでも、希少種を咥えたネコが多数確認されています。希少種保全のため、事業への理解と協力をお願いします。
 イヌやネコを飼うときは、狂犬病予防法や各市町村の飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例に基づいて、必ずお住まいの市町村役場で登録を行ってください。また、迷子防止のためマイクロチップを装着して所有者明示のうえ、不妊・去勢手術をすること、希少種保護や民家への糞尿害・感染症の防止のため室内飼育を徹底し放し飼いや遺棄をしないこと、ノラネコやノライヌにみだりに餌を与えないこと等を守っていただくようお願いします。



4.希少ネズミ類の生息個体数の増加に伴う住居への迷い込みや錯誤捕獲等について

 生息個体数の増加に伴い、希少ネズミ類が住居等の建造物へ迷い込む事例やクマネズミ用の捕獲器等に錯誤捕獲される事例がみられ、死因の「その他」に含まれています。
 希少なネズミ類を捕獲器等で錯誤捕獲した場合は、傷の有無にかかわらず環境省奄美群島国立公園管理事務所に必ず連絡をお願いします。例えばケナガネズミは法令で保護されている種ですが、法令規制対象外の他のネズミ類を捕獲する目的で設置した捕獲器等に当該種が捕獲された場合や、殺鼠剤等を用い誤って死亡してしまった場合などは、故意によるものでなければ罪に問われることはありませんので速やかに通報をお願いします。

 

*死因について
 死体の状態や発見現場、死体解剖の結果から推測しています。死体確認件数は情報が寄せられ把握ができた数であり、自然界での実際の死亡頭数とは異なります。また、死体は人目に付きやすい道路上で発見されるものが多いため、交通事故による死体が多く発見される傾向にあります。発見、回収が遅く死体の腐敗や劣化が激しい、死体の一部のみが回収された、剖検しても異常所見が認められなかった、などの理由で死因が特定できなかったものは不明としています。



5.情報提供のお願い

 環境省奄美群島国立公園管理事務所(奄美野生生物保護センター)、徳之島管理官事務所では、アマミノクロウサギなど希少種の死体情報を集めています。傷ついたり、死んでいる個体を見つけたら次の連絡先まで連絡をお願いします。集められた傷病に関する情報は、今後の交通事故防止対策を始めとする希少種の保全策に活用します。
 また、傷病状態の場合、早めの救護対応を行うことにより、生存できる可能性が高まりますので協力をお願いします。
 
 
<情報提供先>
奄美大島:環境省奄美群島国立公園管理事務所 TEL:0997-55-8620
     (奄美野生生物保護センター)
徳之島:環境省徳之島管理官事務所 TEL:0997-85-2919

お問い合わせ先

環境省 沖縄奄美自然環境事務所奄美群島国立公園管理事務所
所長 広野 行男
担当:国立公園保護管理企画官 山本 以智人
電話:0997-55-8620