九州地域のアイコン

沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2025年04月01日
  • 報道発表

アマミノクロウサギの傷病救護及び普及啓発等の推進に関する連携協定書の締結について(お知らせ)

 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」における国内希少野生動植物種であり、国の特別天然記念物でもあるアマミノクロウサギの傷病救護及び生体を活用した普及啓発活動については、これまで関係組織間における連携をもとに進めてきたところです。
 一方で、そうした連携体制に関して明文化されたものがこれまで存在していなかったため、今般、各組織の役割分担や個体の所有権及び占有の取扱い等について明文化するとともに、連携体制を継続的に確保することを目的として、「アマミノクロウサギの傷病救護及び普及啓発等の推進に関する連携協定書」を締結しましたので、お知らせします。

1. 協定書について

 

2. 協定書締結者

・環境省沖縄奄美自然環境事務所
・鹿児島市(平川動物公園)
・大和村
・奄美いんまや動物病院
・奄美野生動物医学センター
・徳之島動物病院
 
 

3.アマミノクロウサギについて

 アマミノクロウサギは、奄美群島の固有種で、生息地は奄美大島及び徳之島に限られ、環境省第4次レッドリストにおいて絶滅危惧ⅠB類(EN)として掲載されています。また、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づく国内希少野生動植物種及び「文化財保護法」に基づく特別天然記念物に指定されています。
 本種はマングースやノネコなどの外来種や森林伐採等の影響により存続が危ぶまれていましたが、外来種対策や森林の回復に伴い、生息数や生息域が回復してきています。2021年に実施した個体数推定では、奄美大島で10,024個体から34,427個体、徳之島で1,525個体から4,735個体と推定され、その後の調査でも維持もしくは増加傾向が確認されています。
 このように個体数や生息地が回復してきたことは喜ばしいことですが、いまだに両島においてイヌ・ネコによる捕食が一定数確認されています。また、奄美大島では年間100件以上、徳之島では年間25件以上の交通事故が確認されていること(令和4年(2022年)から令和6年(2024年))、観察がしやすくなったことでナイトツアーといった観光利用の増加に伴う影響(観察ストレスの増加や感染症の持ち込み)など、個体数が増えてきたことによって顕在化してきた問題もあります。
 
和名 …アマミノクロウサギ
学名 …Pentalagus furnessi
英名 …Amami rabbit
体長  …約40-53㎝
体重  …約2~2.5kg
生息域…鹿児島県奄美大島、徳之島
 
昭和38年(1963年) 文化財保護法に基づく国指定特別天然記念物に指定
平成16年(2004年) 種の保存法に基づく国内希少野生動植物に指定
平成24年(2012年) 環境省レッドリストにおいて絶滅危惧ⅠB類として掲載
 
 

4.アマミノクロウサギの傷病救護について

 近年アマミノクロウサギの個体数増加に伴い、死体回収や傷病救護件数が増加しています。救護された個体は地元の動物病院等の協力を得て治療を行い、可能な限り野生に戻すように努めていますが、多くがすぐに死亡もしくは動物病院で治療飼育中に死亡(移管のち死亡)となっています。(図1)
 また、死因および傷病救護の要因が明らかになった中では、両島とも交通事故が最も多い状況です(図2)。徳之島ではイヌやネコによる要因も多く見られています。
 
                     図1 アマミノクロウサギの傷病救護の実績について
                           ※死体回収は含まない。


 
               図2  傷病救護(死体回収含む)原因の割合(2000年~2024年の累計)
                          ※左:奄美大島、右:徳之島

 

5. 生体展示の状況について

 現在、鹿児島市平川動物公園において、本種の生態に加え、現状の生息状況や傷病救護の実態等を広く認識・ご理解いただくために、生体展示を実施しています。また、令和7年4月20日に開館する大和村アマミノクロウサギミュージアムQuru Guruでも同様の展示を予定しています。生体展示個体は、傷病救護したものの、怪我の状態から野生に帰すことができないと判断された個体になりますが、生体展示を通じて交通事故防止やペットの適正飼育を呼びかけるための普及啓発の面で活躍しています。

 
                   図3  生体展示施設
       (上:平川動物公園、下:大和村アマミノクロウサギミュージアムQuru Guru)

 

6. 傷病個体を見つけたら

 ケガをしているアマミノクロウサギを見つけたら、環境省奄美群島国立公園管理事務所(0997-55-8620)もしくは徳之島管理官事務所(0997-85-2919)にご連絡ください。
 
 
 

お問い合わせ先

環境省 沖縄奄美自然環境事務所
所長 北橋 義明

担当①:沖縄奄美自然環境事務所
    野生生物課 内野 祐弥
電話:098-836-6400

担当②:奄美群島国立公園管理事務所
    鈴木 真理子
電話:0997-55-8620

担当③:徳之島管理官事務所
    大谷 慧
電話:0997-85-2919