報道発表資料
2024年10月29日
- 報道発表
沖縄県内におけるミステリークレイフィッシュの野外初確認について
2024(令和6)年8月20日に沖縄県那覇市の天久ちゅらまち公園内の池において発見されたザリガニが、特定外来生物であるミステリークレイフィッシュ(英名:マーモクレブス)であることが判明しました。本件は、成熟サイズの個体が複数捕獲されているため、日本国内で初めての定着の可能性があります。また、沖縄県内では野外初確認となります。
1. 捕獲された個体
(1) 捕獲日時:2024(令和6)年8月20日 (火)
(2) 捕獲場所:沖縄県那覇市天久1丁目3 天久ちゅらまち公園 (図3地図参照)
(3) 個体情報:7個体、体長 60mm~80mm、性別 全てメス
(4) 捕獲経緯:市民が発見し捕獲。環境省沖縄奄美自然環境事務所へ通報があった。
2. ミステリークレイフィッシュ Procambarus virginalis について
【特徴】体の側面にマーブル模様があります(図1矢印)。成長してもアメリカザリガニ(条件付特定外来生物)のように体色が強い赤色にはならず、アメリカザリガニやウチダザリガニ(特定外来生物)と異なりはさみが巨大化しません(図2矢印)。アメリカザリガニに比べて、背中の溝の間隔は広い(図2矢印)。体長は最大10cmほどになると言われています。[原種のスロウザリガニ Procambarus fallax との区別は見た目ではもちろん遺伝子でも困難ですが、メスのみが発見されている状況と過去の流通状況から、捕獲個体はミステリークレイフィッシュと判定しました。]
ミステリークレイフィッシュは、もとはアメリカのジョージア州、フロリダ半島に生息するアメリカザリガニのなかまのスロウザリガニから生じたクローン種とされ、メス単独で増殖するのが特徴です。1990年代中頃にドイツの水族館業界に持ちこまれて世に知られることとなり、ペットとして急拡大したのちに野外に放出され、ドイツを始めチェコ、ハンガリー、クロアチア、さらにはマダガスカルへと分布を急激に広げました。中でも、温暖で水田が広がるマダガスカルにおいては急激に増殖し、高密度に生息していることが知られています。日本国内でも、単為生殖を行うめずらしいザリガニとして、ネット販売などを通して比較的安価で流通していました。日本国内では、2006(平成18)年に北海道、2016(平成28)年に愛媛県の水域での野外確認事例がありましたが、いずれも単独個体の確認であり、定着は報告されていません。ただし、野外で確認されるのはアメリカザリガニであるという先入観から、見落とされている分布地がある可能性が指摘されています。
ミステリークレイフィッシュは、わずか1個体からでもクローン増殖できる上、環境適応性が高く、好適環境では一年を通して増殖を繰り返し、一度に400個を超える卵を持ち、さらに陸地を歩いて移動することが知られています。1990年代の発見当初からその危険性に警鐘が鳴らされており、一旦野外に定着すると根絶は非常に困難とも言われています。他のザリガニ類と同様に、多様な小動物を捕食したり水草を切断したりすることや、ザリガニペストや白斑病などの病気を運ぶことから、カエル類など希少種を含む水生生物群集に大きな影響を与える可能性があるため、2020(令和2)年に特定外来生物に指定されており、生きたままの運搬や飼育等が法律で禁止されています。
参考) 環境省 特定外来生物同定マニュアル 甲殻類「特定外来生物の見分け方(同定マニュアル)| 日本の外来種対策 | 外来生物法 (env.go.jp)」
3 今後の対応
天久ちゅらまち公園内の池では、捕獲された個体の他にもミステリークレイフィッシュと思われるザリガニ類が確認されているため、一時的に池の立入制限を行った上で、外来ザリガニ類の根絶を目指した防除の実施を検討しています(外来生物法違反になり得ますので、池から持ち出さないで下さい)。
4 ご協力のお願い
防除区域への立入制限にご協力ください。また、当該池以外で本種を目撃した場合には、速やかに環境省沖縄奄美自然環境事務所(Tel:098-836-6400、e-mail: nco-naha@env.go.jp)、沖縄県自然保護課(Tel:098-866-2243、e-mail: aa039004@pref.okinawa.lg.jp)、又は那覇市環境保全課(Tel:098-951-3229)まで通報をお願いします。意図せず捕獲してしまった場合には、生きたままの運搬はせず、すみやかに通報をお願いします。特に子どもが本種を持ち帰ることのないようご注意ください。また、すでに自宅等で飼育していた場合や、子どもが誤って持ち帰ってしまった場合にも、決して野外への放流はせず、上記機関までご相談をお願いします。みなさまのご連絡・通報が、早期発見・早期防除に繋がります。ご理解とご協力をお願いします。
図3.捕獲地点地図(那覇市天久ちゅらまち公園)
(出典:国土地理院ウェブサイト (地理院地図 / GSI Maps|国土地理院))
お問い合わせ先
環境省沖縄奄美自然環境事務所 所長 北橋 義明 担当:野生生物課 壇辻 ゆりか 安積 紗羅々 電話:098-836-6400 |
沖縄県環境部自然保護課 課長 出井 航 生物多様性推進監 東盛 舞子 担当:希少種・外来種対策班 班長 宮平 良成 伊藤 麻衣 和宇慶 剛 電話:098-866-2243 |
那覇市環境保全課 課長 大嶺 毅 担当:玉寄 隆雄 那覇市公園管理課 課長 前原 信博 担当:宮里 悟 羽地 朝哉 電話:098-867-0111 |