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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2024年10月09日
  • 報道発表

西表石垣国立公園 石西礁湖のサンゴ白化現象の2024年9月調査結果について(お知らせ)

 今年度のサンゴ白化現象の状況を把握するため、9月上旬に西表石垣国立公園の石西礁湖(せきせいしょうこ)において調査を実施しました。
 調査の結果、全調査地点の平均白化率は84.0%でした。平均白化率だけを見ると近年大規模白化があった2016年、2022年よりも低いですが、ベースとなるサンゴ被度が下がっていることに注意が必要です。ベースとなるサンゴ被度が減少している中で、そのうち84.0%が白化したことは、生態系に甚大な影響を及ぼす可能性があり、引き続き影響把握に努めます。
■ これまでの経緯及び趣旨
・過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的とした自然再生推進法(2003(平成15)年1月1日施行)に基づき、石西礁湖における自然再生事業を2006(平成18)年から実施している。
・自然再生事業の一環としてサンゴのモニタリング調査を、2002(平成14)年の試行調査を経て、2005(平成17)年から実施している。
・大規模白化現象が発生した2016(平成28)年からは、スポットチェック法※1(15分間のスノーケリングを行い、被度※2、白化率※3等を目視観察)による調査を実施している。
 
■ 調査内容
(1)調査地点
 モニタリング調査の調査定点として設定している石西礁湖内の31地点で実施した。調査定点の位置は、付属資料の図1のとおり。
(2)調査期間
 2024(令和6)年9月2日から9月7日まで
(3)調査方法
 ・調査地点毎におよそ50m四方の調査地点を設定し、スポットチェック法により、調査を行った。
 ・サンゴ群体の白化状況の程度を4階級に分類し、それぞれの被度の割合を記録した。
  Ⅰ 健全:群体全体が白化していない状態
  Ⅱ 薄色:群体の一部白化・一部死亡・全体的に色が薄い状態
  Ⅲ 白化:群体全体が完全に白化している状態
  Ⅳ 死亡:群体全体が白化により死亡した状態
 
■ 調査結果
 各調査地点における白化率、全地点の平均白化率(以下、「平均白化率」という。)は、付属資料の図2のとおり。また、各調査地点における被度、全地点の平均被度(以下、「平均被度」という。)及び2016(平成28)年以降の被度の変化は、付属資料の図3のとおりである。
(1)白化の状況
 ・平均白化率は84.0%であり、大規模な白化現象がみられなかった前年同月の2.6%と比べて高かったが、大規模白化のあった2016年9、10月(97.2%)、2022年9月(92.8%)と比較すると僅かに低かった。
 ・平均白化率の内訳は、健全16.0%(前年比-81.4ポイント)、薄色59.4%(前年比+56.9ポイント)、白化13.7%(前年比+13.6ポイント)、死亡10.9%(前年比+10.9ポイント)であった。
 ・完全白化率が高かった上位3地点はS6、S20、S3の順であり、主に黒島北側海域で高かった。また、死亡率が高かった上位3地点はS25、S11、S22の順であり、主に西表東側海域から黒島北側海域で高かった。
 ・白化率が低かった上位3地点はS27、S28、S13であり、主に小浜島北側から竹富島北西側リーフで低かった。
(2)被度の変化
 ・平均被度は、2024年6月の19.1%から2024年9月には17.4%に低下した。
 ・多くの調査地点は、2022年の大規模白化以降ゆるやかに回復していたが、本調査時には被度が低下しているところが多かった。これは、2024年6月調査時より死亡群体が増加したためであった(付属資料の図4)。
 ・ただし、被度が低下する要因は単一ではなく、必ずしも白化現象のみによらない。7月の台風3号及び同年8月の9号による攪乱等も影響している可能性がある。
 
■ 今後の対応
・本調査において「薄色」や「白化」に分類された群体が、今後回復又は死亡すると見られることから、今後の白化状況の推移は、例年のモニタリング調査の一環として実施する追跡調査のほか、環境省生物多様性センター(山梨県富士吉田市)が実施している「モニタリングサイト1000サンゴ礁調査」の中で石西礁湖の近隣海域も含めて把握を進める。
・上記の結果を踏まえ、これまでに発生した大規模白化現象との比較を行い、今夏に発生した大規模白化現象の影響把握等に努める。
・また、各種の結果は石西礁湖自然再生協議会等においても報告予定である。
 
■ 注釈
※1 スポットチェック法
 モニタリングサイト1000サンゴ礁調査マニュアル第5版(環境省生物多様性センター 2013(平成25)年)による。
  https://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/spot-check_ver5.pdf
※2 被度
 着生可能な海底面の範囲のうち、生きているサンゴ群体が占める範囲の割合。
※3 白化率
 白化現象が起きる前まで生きていたと思われるサンゴ群体が占める範囲(健全+薄色+白化+死亡)のうち、白化したサンゴ群体と白化により死亡したサンゴ群体が占める範囲(薄色+白化+死亡)の割合

お問い合わせ先

環境省九州地方環境事務所
沖縄奄美自然環境事務所
所長 北橋 義明
自然再生企画官 山崎 麻里

(担当)
石垣自然保護官事務所
自然保護官 近藤 千尋
【TEL】0980-82-4768