報道発表資料
2024年04月10日
- 報道発表
2023年奄美大島・徳之島における希少哺乳類の死因解明について
環境省では、希少な野生動物の生息に影響を及ぼす要因の把握や保護対策への活用のため、野生動物の死体や傷病救護の情報を収集し、データの整理・分析を行っています。今般、奄美大島と徳之島で収集されたアマミノクロウサギ、ケナガネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミについて2023年(1~12月)の死体確認件数とその死因内訳を整理しましたのでお知らせいたします。
アマミノクロウサギの交通事故件数について、奄美大島では昨年の過去最多を大幅に上回る件数を記録しました。またケナガネズミについては両島において死体回収数が大幅に増加し、交通事故やイヌネコによる被害も多くみられました。夜間に運転される全ての方々には、野生動物の飛び出し等に十分注意していただくと共に、ペットの室内飼養を徹底していただきたくお願いいたします。
アマミノクロウサギの交通事故件数について、奄美大島では昨年の過去最多を大幅に上回る件数を記録しました。またケナガネズミについては両島において死体回収数が大幅に増加し、交通事故やイヌネコによる被害も多くみられました。夜間に運転される全ての方々には、野生動物の飛び出し等に十分注意していただくと共に、ペットの室内飼養を徹底していただきたくお願いいたします。
1.2023年に回収された死体の確認件数と死因内訳
2023年の1年間に奄美大島と徳之島で回収されたアマミノクロウサギ、ケナガネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミの死体確認件数と死因内訳を整理しました(図1、2-1、2-2、2-3)。アマミノクロウサギの死体確認数は272件(奄美大島215件と徳之島57件の合計)、ケナガネズミの死体確認数は169件(奄美大島144件、徳之島25件)となり、いずれも過去最多となりました。トクノシマトゲネズミを除く各種では、交通事故死が最も多くなりましたが、これは多くの死体が目に付きやすい道路上で回収されたことによるものと考えられます。また、イヌやネコによる捕殺が原因と思われる死体は3種ともに徳之島で割合が高い傾向が見られました。
アマミトゲネズミで交通事故によると思われる死体が多く発見されましたが、今年度は個体数が増加していたことに加え、道路上で野生動物の調査をしていた研究者によって夜間のうちに回収された死体が多く、カラス等に持ち去られる前に回収出来たことも回収数の増加の要因のひとつと考えられます。
図1.奄美大島と徳之島において回収された希少種の死因内訳(2023年)
図2-1.アマミノクロウサギの死因内訳の経年変化(2000~2023年)
図2-2.ケナガネズミの死因内訳の経年変化(2002~2023年)
図2-3.トゲネズミ類の死因内訳の経年変化(2003~2023年)
2-1.交通事故件数の増加について
2023年の交通事故の死体確認件数は、奄美大島ではアマミノクロウサギ147件(死体145件、救護のち死亡2件)、ケナガネズミ67件(死体64件、救護のち死亡3件)、アマミトゲネズミ16件(全て死体)、徳之島ではアマミノクロウサギ28件(全て死体)、ケナガネズミ8件(全て死体)、トクノシマトゲネズミ2件(全て死体)が確認されました(表1)。奄美大島ではいずれも過去最多となりました。なお、交通事故が原因と思われる救護においては、奄美大島ではケナガネズミ1個体が治療後に放獣、徳之島で保護されたアマミノクロウサギ1個体が動物病院において治療中となっています。
交通事故が多発している道路は、奄美大島では瀬戸内町道網野子峠線、国道58号線役勝から網野子トンネルまでの区間、県道79号線(大金久~今里間)、県道612号線(役勝~篠川間)、湯湾岳周辺の林道、奄美市道朝戸和瀬線・和瀬城線、徳之島は県道629号線(手々~金見間)などです(図3)。
図3.2023年のアマミノクロウサギの交通事故地点と多発区間
2-2.交通事故防止の対策と協力のお願い
アマミノクロウサギだけでなく、ケナガネズミやトゲネズミ等希少野生動物の交通事故も近年確認されています。交通事故はスピードの出やすい国道・県道も含めさまざまな道路で発生しており、交通事故が多発している地点には警戒標識などが設置されています。標識のある場所付近では特に、夜間の運転における野生動物の急な飛び出しなどに注意をお願いします。3-1.イヌやネコによる捕殺事例の確認について
2023年は奄美大島ではアマミノクロウサギ23件、ケナガネズミ9件、アマミトゲネズミ1件が、徳之島ではアマミノクロウサギ8件、ケナガネズミ4件、トクノシマトゲネズミ5件がイヌやネコによる捕殺死体として確認されました。イヌやネコによる捕殺の確認数は、車道を中心とした発見と回収であることや、死体回収や判定の難しさから、必ずしも捕殺の多寡を示すものではありません。実際のイヌやネコによる捕殺頭数のごく一部を示したものに過ぎないと考えられることにご留意下さい。
3-2.ノネコ対策へのご理解ご協力およびペットの適正飼養等のお願い
現在、奄美大島と徳之島では、森林域に生息するノネコの捕獲事業を行っています。捕獲されたノネコの糞からは、多くの希少種が検出されています。また、自動撮影カメラによるモニタリングでも、希少種を咥えたノネコが多数確認されています。希少種保全のため、事業へのご理解とご協力をお願いいたします。イヌやネコを飼うときは、狂犬病予防法や各市町村の飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例に基づいて、必ずお住まいの市町村役場で登録を行ってください。また、迷子防止のためマイクロチップを装着して所有者明示のうえ、不妊・去勢手術をすること、希少種保護や民家への糞尿害・感染症の防止のため室内飼育を徹底し放し飼いや遺棄をしないこと、ノラネコやノライヌにみだりに餌を与えないこと等を守っていただくようご協力をお願いします。
4.希少ネズミ類の生息個体数の増加に伴う住居への迷い込みや錯誤捕獲等について
今年の特徴として、希少ネズミ類の死亡件数の急激な増加がありました。生息個体数の増加に伴い、希少ネズミ類が住居等の建造物へ迷い込んだ事例やクマネズミ用の捕獲器等に錯誤捕獲された事例がみられ、死因の「その他」に含まれています。もしも希少なネズミ類が捕獲器等で捕まってしまった場合は、傷の有無に関わらず環境省にご相談ください。ケナガネズミは法令で保護されている生きものですが、法令規制対象外の他のネズミ類を捕獲しようとして誤って捕獲してしまった場合や、殺鼠剤等を他のネズミ類に用い誤って死亡してしまった場合でも、故意でなければ罪に問われることはありませんので通報のご協力をお願いいたします。
(参考資料)ネズミ3種類の見分け方
*死因について
死体の状態や発見現場、死体解剖の結果から推測しています。死体確認件数は情報が寄せられ把握ができた数であり、自然界での実際の死亡頭数とは異なります。また、死体は人目に付きやすい道路上で発見されるものが多いため、交通事故による死体が多く発見される傾向にあります。発見、回収が遅く死体の腐敗や劣化が激しい、死体の一部のみが回収された、剖検しても異常所見が認められなかった、などの理由で死因が特定できなかったものは不明としています。
5.情報提供のお願い
環境省奄美野生生物保護センター、徳之島管理官事務所ではアマミノクロウサギなど希少種の死体情報を集めています。傷ついたり、死んでいる個体を見つけたら下記連絡先までご連絡ください。ケガであれば、早めの対応によって動物が助かる可能性が高まります。また、傷病鳥獣や事故の情報は、今後の交通事故防止や希少種の保全策に活用します。
<情報提供先>
奄美大島:環境省奄美野生生物保護センター TEL:0997-55-8620
徳之島 :環境省徳之島管理官事務所 TEL:0997-85-2919
お問い合わせ先
環境省 沖縄奄美自然環境事務所奄美群島国立公園管理事務所
所長 広野 行男
担当:国立公園保護管理企画官 阿部 愼太郎
電話:0997-69-2280(奄美大島世界遺産センター)