報道発表資料
2023年10月30日
- 報道発表
令和4(2022)年度沖縄島北部地域におけるマングース防除事業の実施結果 及び令和5(2023)年度計画について(お知らせ)
環境省と沖縄県は、沖縄島北部地域において、特定外来生物に指定されているフイリマングースの防除事業を連携・協力して行っています。令和4(2022)年度はSFライン*以北で58頭のマングースが捕獲されました。最も捕獲数が多かった平成19(2007)年度に比べると、10分の1程度となり、引き続き低密度な状態を維持できていると考えられます。
また、SFライン以南の第一バッファーゾーン**では同エリアでの捕獲作業が本格化した平成27年度以降初めて捕獲がなく、第二バッファーゾーン***でも299頭と捕獲数は減少傾向にあります。
さらに、防除事業の効果検証のために在来種の生息状況を調査した結果、ヤンバルクイナを含む希少な在来種の生息状況の回復が見られました。
令和5(2023)年度は「第3期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画」の7年目として、SFライン以北からの完全排除に向け、引き続き十分な捕獲圧をかけられるようこれまでと同様の体制で作業を実施しています。
また、SFライン以南の第一バッファーゾーン**では同エリアでの捕獲作業が本格化した平成27年度以降初めて捕獲がなく、第二バッファーゾーン***でも299頭と捕獲数は減少傾向にあります。
さらに、防除事業の効果検証のために在来種の生息状況を調査した結果、ヤンバルクイナを含む希少な在来種の生息状況の回復が見られました。
令和5(2023)年度は「第3期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画」の7年目として、SFライン以北からの完全排除に向け、引き続き十分な捕獲圧をかけられるようこれまでと同様の体制で作業を実施しています。
*SFライン:大宜味村塩屋から東村福地ダムの福上湖を経て大泊橋に至る、第一北上防止柵が設置されているライン
**第一バッファーゾーン:沖縄県により設置された第一・第二北上防止柵に挟まれたエリア
***第二バッファーゾーン:沖縄県により設置された第二・第三北上防止柵に挟まれたエリア
このため、平成12(2000)年度から沖縄県が、平成13(2001)年度から環境省がマングースの防除事業を開始しました。平成17(2005)年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づきマングースが特定外来生物に指定されたことを受け、環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施しています。事業実施区域は図1のとおりです。今年度は、平成29(2017)年度から令和8(2026)年度までの10年間でSFライン以北のマングースを完全排除することを目標とした「第3期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画(以下「第3期計画」という。)」に基づき事業を実施しています。
令和4(2022)年度は、SFライン以北において、マングースを58頭捕獲し、CPUE*は0.039となりました(表1)。作業ごとの内訳は、わなによる捕獲(1,020,705わな日の捕獲作業)で40頭、非わな捕獲(探索犬とハンドラーの連携による捕獲)で18頭です。なお、わなでの捕獲作業には、生け捕り式のカゴわなに加えて、平成20(2008)年度から導入した捕殺式筒わなを在来種の分布状況に配慮しながら使用しました。
令和4(2022)年度の捕獲数、CPUEともに前年度よりも微増しましたが、最も捕獲数の多かった平成19(2007)年度(619頭)と比べると10分の1程度となりました。また、マングースが捕獲されたメッシュ**数は、12メッシュとなり、捕獲範囲の縮小傾向が見られます(図2、図3)。
なお、本事業では第3期計画に基づき、わな捕獲に加えて探索犬やセンサーカメラを用いた地域的な排除確認を北側から順次実施しており、その結果から、SFライン以北全体でのマングースの個体数及び分布域は順調に縮減していると考えられます。
*CPUE: Capture Per Unit Effortの略。1,000わな日あたりの捕獲数を示す。
**メッシュ: 対象地域を一定の経線、緯線で網の目状に区画したもの。国土地理院が定めた「標準地域メッシュ」のうち、3次メッシュ(約1km四方)を用いて事業の集計・解析を行っている。
図1.令和4年度の防除実施区域
(2)SFライン以南のバッファーゾーン(沖縄県事業)
SFライン以南の3つの北上防止柵に挟まれた2つの地域をバッファーゾーンとし、SFライン以北へのマングースの再侵入を防止するためにわなによる捕獲などを実施しています。令和4(2022)年度は、第一柵と第二柵で挟まれた第一バッファーゾーンにおいて、わなによる捕獲作業(134,550わな日)を実施し、同エリアでの捕獲作業が本格化した平成27(2015)年度以降初めて捕獲はありませんでした。また、第二柵と第三柵で挟まれた第二バッファーゾーンでは、わなによる捕獲作業(168,300わな日)で299頭のマングースが捕獲されており、同エリアにおいても、捕獲作業が本格化した平成29(2017)年度以降、捕獲数、CPUEともに減少傾向にあります。
表2.第一バッファーゾーンにおけるマングース捕獲結果
マングースの捕獲排除に併せて、ヤンバルクイナなどの希少な在来種に関する調査を実施し、マングースの防除による効果を検証しています。
(1)ヤンバルクイナ
1980年代(発見当初)は大宜味村塩屋から東村平良以北に生息していたとされていますが、1990年代以降、沖縄島北部地域へのマングースの侵入と同時期に生息域が急激に縮小し、2000年代には国頭村と東村の一部にのみ生息している状況でした。平成30(2018)年度までの調査においては、東村側で生息域の回復が確認されていましたが、近年大宜味村側の大保ダムから国頭村との境においても生息域の回復が見られています(図6)。今後、マングースの排除が進むことで、大宜味村の西側やバッファーゾーンにおける生息域の回復が期待されます。
(2)その他の在来種
オキナワトゲネズミ及びケナガネズミについては、平成20(2008)年度以降、新たな生息地点が確認されていることから、徐々に分布域が拡大していると考えられます。SFライン以北の大国林道で実施している希少カエル類の調査では、オキナワイシカワガエル等の確認数が年々増加しており、令和4(2022)年度は大国林道のほぼ全線で確認することができました。ホルストガエルやナミエガエルの分布域についても南への拡大傾向が見られました。今後、マングースの排除が進むことで、これらの種の生息域の回復が期待されます。
**第一バッファーゾーン:沖縄県により設置された第一・第二北上防止柵に挟まれたエリア
***第二バッファーゾーン:沖縄県により設置された第二・第三北上防止柵に挟まれたエリア
1.事業の背景
フイリマングース(以下「マングース」という。)は、ハブやネズミの駆除を目的として明治43(1910)年に沖縄島に移入された外来種です。沖縄島南部に放たれた後、次第に分布域を拡大し、1990年代にはSFラインより北へ侵入したと考えられています。マングースの分布域拡大に伴い、ヤンバルクイナなどの希少な在来種の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになりました。このため、平成12(2000)年度から沖縄県が、平成13(2001)年度から環境省がマングースの防除事業を開始しました。平成17(2005)年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づきマングースが特定外来生物に指定されたことを受け、環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施しています。事業実施区域は図1のとおりです。今年度は、平成29(2017)年度から令和8(2026)年度までの10年間でSFライン以北のマングースを完全排除することを目標とした「第3期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画(以下「第3期計画」という。)」に基づき事業を実施しています。
2.令和4(2022)年度防除事業の結果
(1)SFライン以北(環境省事業)令和4(2022)年度は、SFライン以北において、マングースを58頭捕獲し、CPUE*は0.039となりました(表1)。作業ごとの内訳は、わなによる捕獲(1,020,705わな日の捕獲作業)で40頭、非わな捕獲(探索犬とハンドラーの連携による捕獲)で18頭です。なお、わなでの捕獲作業には、生け捕り式のカゴわなに加えて、平成20(2008)年度から導入した捕殺式筒わなを在来種の分布状況に配慮しながら使用しました。
令和4(2022)年度の捕獲数、CPUEともに前年度よりも微増しましたが、最も捕獲数の多かった平成19(2007)年度(619頭)と比べると10分の1程度となりました。また、マングースが捕獲されたメッシュ**数は、12メッシュとなり、捕獲範囲の縮小傾向が見られます(図2、図3)。
なお、本事業では第3期計画に基づき、わな捕獲に加えて探索犬やセンサーカメラを用いた地域的な排除確認を北側から順次実施しており、その結果から、SFライン以北全体でのマングースの個体数及び分布域は順調に縮減していると考えられます。
*CPUE: Capture Per Unit Effortの略。1,000わな日あたりの捕獲数を示す。
**メッシュ: 対象地域を一定の経線、緯線で網の目状に区画したもの。国土地理院が定めた「標準地域メッシュ」のうち、3次メッシュ(約1km四方)を用いて事業の集計・解析を行っている。
図1.令和4年度の防除実施区域
表1.SFライン以北におけるマングース捕獲結果
※令和元(2019)年度までは沖縄県事業分との合計値
CPUEは1,000TDあたりの捕獲数
CPUEは1,000TDあたりの捕獲数
図2.SFライン以北のマングースの捕獲数、捕獲メッシュ数およびCPUEの年度別推移
図3.SFライン以北における年度ごとのマングース捕獲メッシュ(左上:H19、右上:H22、左下:H25、右下:R04)
(2)SFライン以南のバッファーゾーン(沖縄県事業)
SFライン以南の3つの北上防止柵に挟まれた2つの地域をバッファーゾーンとし、SFライン以北へのマングースの再侵入を防止するためにわなによる捕獲などを実施しています。令和4(2022)年度は、第一柵と第二柵で挟まれた第一バッファーゾーンにおいて、わなによる捕獲作業(134,550わな日)を実施し、同エリアでの捕獲作業が本格化した平成27(2015)年度以降初めて捕獲はありませんでした。また、第二柵と第三柵で挟まれた第二バッファーゾーンでは、わなによる捕獲作業(168,300わな日)で299頭のマングースが捕獲されており、同エリアにおいても、捕獲作業が本格化した平成29(2017)年度以降、捕獲数、CPUEともに減少傾向にあります。
表2.第一バッファーゾーンにおけるマングース捕獲結果
※平成25年度に第二柵を設置。平成27年度より第一バッファーゾーン全域での捕獲を開始
CPUEは1,000TDあたりの捕獲数
CPUEは1,000TDあたりの捕獲数
表3.第二バッファーゾーンにおけるマングース捕獲結果
※平成28年度に第三柵を設置。平成29年度より第二バッファーゾーン全域での捕獲を開始
CPUEは1,000TDあたりの捕獲数
CPUEは1,000TDあたりの捕獲数
図4.バッファーゾーンのマングースの捕獲数とCPUEの年度別推移
(左:第一バッファーゾーン、右:第二バッファーゾーン)
図5.バッファーゾーンにおける年度ごとのマングース捕獲状況(左上:H27、右上:H29、左下:R01、右下:R04)
3.在来種の回復状況について(環境省事業)
マングースの捕獲排除に併せて、ヤンバルクイナなどの希少な在来種に関する調査を実施し、マングースの防除による効果を検証しています。(1)ヤンバルクイナ
1980年代(発見当初)は大宜味村塩屋から東村平良以北に生息していたとされていますが、1990年代以降、沖縄島北部地域へのマングースの侵入と同時期に生息域が急激に縮小し、2000年代には国頭村と東村の一部にのみ生息している状況でした。平成30(2018)年度までの調査においては、東村側で生息域の回復が確認されていましたが、近年大宜味村側の大保ダムから国頭村との境においても生息域の回復が見られています(図6)。今後、マングースの排除が進むことで、大宜味村の西側やバッファーゾーンにおける生息域の回復が期待されます。
図6.ヤンバルクイナの生息確認メッシュの推移(左:H19、中央:H25、右R04)
(2)その他の在来種
オキナワトゲネズミ及びケナガネズミについては、平成20(2008)年度以降、新たな生息地点が確認されていることから、徐々に分布域が拡大していると考えられます。SFライン以北の大国林道で実施している希少カエル類の調査では、オキナワイシカワガエル等の確認数が年々増加しており、令和4(2022)年度は大国林道のほぼ全線で確認することができました。ホルストガエルやナミエガエルの分布域についても南への拡大傾向が見られました。今後、マングースの排除が進むことで、これらの種の生息域の回復が期待されます。
4.令和5(2023)年度防除事業計画
令和5(2023)年度は、令和3(2021)年度に改定した第3期計画に基づき、SFライン以北からのマングースの完全排除に向け、引き続き捕獲圧をかけ、令和4(2022)年度と同様に、SFライン以北全域を環境省、SFライン以南の第一、第二バッファーゾーンを沖縄県の事業実施区域とした体制で作業を実施するとともに、バッファーゾーンにおける残存個体の排除及び第二バッファーゾーン以南からの流入防止に努めます。なお、年間の捕獲努力量目標は、SFライン以北において70万わな日、第一及び第二バッファーゾーンにおいて13万わな日と設定し、捕獲作業等を実施しています。お問い合わせ先
環境省沖縄奄美自然環境事務所 所長 北橋 義明
沖縄県環境部自然保護課 生物多様性推進監 東盛 舞子
担当: 環境省やんばる自然保護官事務所 椎野、佐藤 (TEL:0980-50-1025)
沖縄県環境部自然保護課 当真、仲村 (TEL:098-866-2243)
沖縄県環境部自然保護課 生物多様性推進監 東盛 舞子
担当: 環境省やんばる自然保護官事務所 椎野、佐藤 (TEL:0980-50-1025)
沖縄県環境部自然保護課 当真、仲村 (TEL:098-866-2243)