報道発表資料
2023年03月28日
- 報道発表
2022年奄美大島・徳之島における希少哺乳類の死因解明について
環境省では、希少な野生動物の生息に影響を及ぼす要因の把握や保護対策への活用のため、野生動物の死体の情報を収集し、データの整理・分析を行っています。奄美大島と徳之島で回収されたアマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、ケナガネズミについて2022年(1~12月)の死体確認件数・死因内訳を整理したところ、アマミノクロウサギの交通事故件数について、奄美大島・徳之島ともに昨年の過去最多を大幅に上回る件数を記録しました。さらに、両島においてイヌやネコによるものと思われる希少種の捕殺事例が確認されています。多くの方に夜間の運転には十分注意していただくと共に、ペットの室内飼養を徹底していただきたくお知らせ致します。
1.2022年に回収された死体の死因内訳
2022年の1年間に奄美大島と徳之島で回収されたアマミノクロウサギ、ケナガネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミの死体確認件数と死因内訳を整理しました(図1、図2-1、図2-2、図2-3)。アマミノクロウサギの死体確認数は236件(奄美大島166件と徳之島70件の合計)となり、過去最多となりました。
図1 奄美大島と徳之島において回収された希少種の死因内訳(2022年)
図2-1 アマミノクロウサギの死因内訳の経年変化(2000~2022年)
図2-2 ケナガネズミの死因内訳の経年変化(2002~2022年)
図2-3 アマミトゲネズミの死因内訳の経年変化(2006年~2022年)
2-1.交通事故件数の増加について
・2022年の交通事故の確認件数は、奄美大島ではアマミノクロウサギ107件(死体105件、救護のち死亡2件)、ケナガネズミ21件、徳之島ではアマミノクロウサギ40件(すべて死体)、ケナガネズミ9件が確認されました。
・アマミノクロウサギ(147件)及びケナガネズミ(30件)において、交通事故の確認個体数は、過去最多となりました。
・交通事故が多発している道路は、奄美大島では瀬戸内町道網野子峠線、国道58号線役勝から網野子トンネルまでの区間、宇検村と瀬戸内町をつなぐ県道85号線、県道612号線(役勝~篠川間)、湯湾岳周辺の林道、徳之は県道629号線(手々~金見間)などです。
(添付資料)図3.2022年のアマミノクロウサギの交通事故地点と多発区間
・アマミノクロウサギ(147件)及びケナガネズミ(30件)において、交通事故の確認個体数は、過去最多となりました。
・交通事故が多発している道路は、奄美大島では瀬戸内町道網野子峠線、国道58号線役勝から網野子トンネルまでの区間、宇検村と瀬戸内町をつなぐ県道85号線、県道612号線(役勝~篠川間)、湯湾岳周辺の林道、徳之は県道629号線(手々~金見間)などです。
(添付資料)図3.2022年のアマミノクロウサギの交通事故地点と多発区間
2-2.交通事故防止の対策と協力のお願い
・アマミノクロウサギだけでなく、ケナガネズミやトゲネズミ等希少野生動物の交通事故も近年確認されています。交通事故は林道だけでなく、スピードの出やすい国道・県道上でも発生しています。交通事故が多発している地点には、写真のような警戒標識などが設置されています(図4)。動物が活動する夜間は、特に標識設置場所では注意をお願いします。
図4.奄美大島の交通事故対策のための注意看板等
・現在、動物の路上侵入抑止のため、大和村道マテリヤ線(令和3年9月大和村と大和建友会設置)、瀬戸内町道網野子峠線(令和4年11月鹿児島県設置)、天城町県道618号線(令和3年11月天城町設置)においてはネット設置区間内での事故は発生していませんが、設置区間外ではいまだ発生している状況です。ネットの有無にかかわらず、夜間は慎重な運転を心がけましょう。
・利用調整を行っている奄美市道三太郎線においては、利用調整開始時(令和3年10月29日)から現在までで4件のアマミノクロウサギの交通事故(すべて死体)が発生しています。利用される方には引き続き試行ルールを守っての利用をお願いいたします。
3-1.イヌやネコによる捕殺事例の確認について
・2022年は奄美大島ではアマミノクロウサギ15件、ケナガネズミ11件、徳之島ではアマミノクロウサギ13件、ケナガネズミ2件がイヌやネコによる捕殺死体として確認されました。(図5)
・イヌやネコによる捕殺の確認数は、車道を中心とした発見と回収であることや、死体回収や判定の難しさから、必ずしも捕殺の多寡を示すものではありません。実際のイヌやネコによる捕殺頭数のごく一部を示したものに過ぎないと考えられることにご留意下さい。
・奄美大島では、奄美市道三太郎線(全長約11km)において2022年2月2日から3月6日の約1ヶ月間にかけて、ネコによる咬傷によって死亡したと考えられるアマミノクロウサギの死体が3件とケナガネズミの死体が2件発見されました。
・徳之島では、剥岳林道においてイヌによる捕殺と考えられるアマミノクロウサギ3個体の死亡が確認されました(2022年4月12日発表)。
・イヌやネコによる捕殺の確認数は、車道を中心とした発見と回収であることや、死体回収や判定の難しさから、必ずしも捕殺の多寡を示すものではありません。実際のイヌやネコによる捕殺頭数のごく一部を示したものに過ぎないと考えられることにご留意下さい。
・奄美大島では、奄美市道三太郎線(全長約11km)において2022年2月2日から3月6日の約1ヶ月間にかけて、ネコによる咬傷によって死亡したと考えられるアマミノクロウサギの死体が3件とケナガネズミの死体が2件発見されました。
・徳之島では、剥岳林道においてイヌによる捕殺と考えられるアマミノクロウサギ3個体の死亡が確認されました(2022年4月12日発表)。
3-2.ノネコ対策へのご理解ご協力およびペットの適正飼養等のお願い
・現在、奄美大島と徳之島では、森林域に生息するノネコの捕獲事業を行っています。捕獲されたノネコの糞からは、多くの希少種が検出されています。また、センサーカメラによるモニタリングでも、希少種を咥えたノネコが多数確認されています。希少種保全のため、事業へのご理解とご協力をお願いいたします。
図5.大和村の山中で撮影されたケナガネズミを運ぶノネコ
・犬や猫を飼うときは、狂犬病予防法や各市町村の飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例に基づいて、必ずお住まいの市町村役場で登録を行ってください。また、マイクロチップを装着して所有者明示をすること、不妊・去勢手術をしてみだりに増えないようにすること、放し飼いや遺棄をしないこと、ノラネコやノライヌに餌を与えないこと等を守っていただくようお願いします。世界自然遺産に登録された奄美大島や徳之島の生態系を守るため、ご協力をお願いします。
*死因について
死体の状態や発見現場、死体解剖の結果から推測しています。死体確認件数は情報が寄せられ把握ができた数であり、自然界での実際の死亡頭数とは異なります。また、死体は人目に付きやすい道路上で発見されるものが多いため、交通事故による死体が多く発見される傾向にあります。発見、回収が遅く死体の腐敗や劣化が激しい、死体の一部のみが回収された、剖検しても異常所見が認められなかった、などの理由で死因が特定できなかったものは不明としています。
4.情報提供のお願い
環境省奄美野生生物保護センター、徳之島管理官事務所ではアマミノクロウサギなど希少種の死体情報を集めています。傷ついたり、死んでいる個体を見つけたら下記連絡先までご連絡ください。ケガであれば、早めの対応によって動物が助かる可能性が高まります。
傷病鳥獣や事故の情報は、今後の交通事故防止や希少種の保全策に活用します。
傷病鳥獣や事故の情報は、今後の交通事故防止や希少種の保全策に活用します。
添付資料
お問い合わせ先
奄美大島:環境省奄美群島国立公園管理事務所
TEL :0997-55-8620
担当 :阿部・鈴木
徳之島 :環境省徳之島管理官事務所
TEL :0997-85-2919
担当 :田口
TEL :0997-55-8620
担当 :阿部・鈴木
徳之島 :環境省徳之島管理官事務所
TEL :0997-85-2919
担当 :田口