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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2022年10月24日
  • 報道発表

西表石垣国立公園石西礁湖のサンゴ白化現象の2022年9月調査結果について

1. 環境省沖縄奄美自然環境事務所では、今年度のサンゴ白化現象の状況を把握するため、9月下旬に西表石垣国立公園の石西礁湖(せきせいしょうこ)において調査を実施しました。

2. 調査の結果、全調査地点の平均白化率は 92.8%でした。

【添付資料】
  ・ 付属資料 調査地点、調査結果の図および記録写真等について
  ※ 添付資料は以下の URL から参照してください。)
    https://www.env.go.jp/press/press_00713.html

■ これまでの経緯及び趣旨

・ 過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的とした自然再生推進法(2003(平成 15)年1月1日施行)に基づき、石西礁湖における自然再生事業を 2006(平成 18)年から実施している。
・ 自然再生事業の一環としてサンゴのモニタリング調査を、2002(平成 14)年の試行調査を経て、2005(平成 17)年から実施している。
・ 大規模白化現象が発生した 2016(平成 28)年からは、スポットチェック法※1(15 分間のスノーケリングを行い、被度※2、白化率※3等を目視観察)による調査を実施している。


■ 調査内容
(1) 調査地点
モニタリング調査の調査定点として設定している石西礁湖内の 31 地点で実施した。調査定点の位置は、付属資料の図1のとおり。
(2) 調査期間
2022(令和4)年9月 24 日から同年9月 29 日まで
(3) 調査方法
・調査地点毎におよそ 50m四方の調査地点を設定し、スポットチェック法により、調査を行った。
・サンゴ群体の白化状況の程度を4階級に分類し、それぞれの被度の割合を記録した。
   Ⅰ 健全:群体全体が白化していない状態
   Ⅱ 薄色:群体の一部白化・一部死亡・全体的に色が薄い状態
   Ⅲ 白化:群体全体が完全に白化している状態
   Ⅳ 死亡:群体全体が白化により死亡した状態
 

■ 調査結果 

 各調査地点における白化率、全地点の平均白化率(以下、「平均白化率」という。)は、付属資料の図2のとおり。また、各調査地点における被度、全地点の平均被度(以下、「平均被度」という。)及び 2016(平成 28)年以降の被度の変化は、付属資料の図3のとおりである。

(1)白化の状況
・ 平均白化率は 92.8%であった。
・ 均白化率の内訳は、健全 7.2%(前年比-12.3 ポイント)、薄色 42.7%(同-32.7 ポイント)、白化 32.3%(同+29.3 ポイント)、死亡 17.7%(同+15.7 ポイント)であり、2017(平成 29)年以降のいずれの年よりも顕著に進行していた。
・ 全 31 地点のうちいくつかの地点は他の地点と比較して低い白化率を示したものの、例年9月の白化率が比較的低い値となる調査地点においても、2022(令和4年)年9月の本調査時には高い値となるなど、2017(平成 29)年以降の数年間よりも顕著に白化現象が進行しており、全体的に白化率が高かった。

(2)被度の変化
・ 平均被度は、26.2%から 21.6%に低下した。
・ 多くの調査地点は、2016(平成 28)年の大規模白化以降ゆるやかに回復していたが、本調査時には被度が低下しているところが多かった。これは、2021(令和3)年調査時より死亡群体が増加したためと考えられる(付属資料の図4)。
・ ただし、被度が低下する要因は単一ではなく、必ずしも白化現象のみによらない。2022(令和4年)年9月の台風 11 号(ヒンナムノー)及び 12 号(ムイファー)による攪乱等も影響している可能性がある。
 

■ 今後の対応 

・ 本調査において「薄色」や「白化」に分類された群体が、今後回復又は死亡すると見られることから、今後の白化状況の推移は、例年のモニタリング調査の一環として実施する追跡調査のほか、環境省生物多様性センター(山梨県富士吉田市)が実施している「モニタリングサイト 1000 サンゴ礁調査」の中で石西礁湖の近隣海域も含めて把握を進める。
・ 上記の結果を踏まえ、これまでに発生した大規模白化現象との比較を行い、今夏に発生した大規模白化現象の影響把握等に努める。
・ また、各種の結果は石西礁湖自然再生協議会等においても報告予定である。
 

■ 注釈 

※1 スポットチェック法
   モニタリングサイト 1000 サンゴ礁調査マニュアル第5版(環境省生物多様性センター 2013(平成 25)年)による。
   https://www.biodic.go.jp/moni1000/manual/spot-check_ver5.pdf
※2 被度
   着生可能な海底面の範囲のうち、生きているサンゴ群体が占める範囲の割合。
※3 白化率
   白化現象が起きる前まで生きていたと思われるサンゴ群体が占める範囲(健全+薄色+白化+死亡)のうち、白化したサンゴ群体と白化により死亡したサンゴ群体が占める範囲(薄色+白化+死亡)の割合

お問い合わせ先

沖縄奄美自然環境事務所
代表:098-836-6400
所長:宇賀神 知則
自然再生企画官:鈴木 祥之