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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2020年09月10日
  • その他

(お知らせ)令和元年度奄美大島におけるマングース防除事業の実施結果及び令和2年度計画について

環境省沖縄奄美自然環境事務所は、外来生物法に基づくマングース防除事業(以下「防除事業」という。)を平成17年度から実施してきました。令和元年度の防除事業では、わな、探索犬による探索ともにマングースの捕獲はありませんでした。平成30年4月に捕獲があって以降、約2年に亘り捕獲のない状態が続くため、継続的にマングースが減少しており、奄美大島における現在の生息数はきわめて少ない状態になっていると考えられます。 令和2年度も「第2期奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」(以下「第2期計画」※という。)に基づく防除事業を行い、引き続き奄美大島からの完全排除を目指します。

※第2期計画: http://kyushu..env.go.jp/naha/wildlife/data/gairai/boujyo/130425b.html

1.捕獲作業等の実施結果

(1)実施期間: 平成31年4月1日~令和2年3月31日

(2)実施区域: 奄美市、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町

(3)捕獲努力量・捕獲数等: 表1~5、図1~3のとおり

(4)結果概説

○ 第2期計画に基づき、令和元年度は図1、表1の区分により防除事業を実施した。

○ わな設置地点を図2に示した。

○ 防除事業のわな捕獲において投入された捕獲努力量は、重点区域が減少しモニタリング区域が増えたため、平成30年度よりも約17%減少し約217万わな日であった(表2)。

○ わなではマングースの捕獲はなかった。全島的な低密度化が進んだものと考えられる(表3、図3)。

○ 重点区域である湯湾岳エリアでもマングースの捕獲はなく、局所的な排除に向けて大きく前進した。

○ マングース探索犬(生体探索犬、糞探索犬)については、全体で2,663ペア日、南西部の各エリアでの探索を重点的に実施した。探索ルート延長は全体で4,596㎞に達したが、マングースの捕獲はなかった。

○ 奄美大島島内411地点にセンサーカメラを設置し、約89,000カメラ日の調査を行なったが、平成30年度に引き続きマングースは撮影されず、マングースのさらなる減少傾向及び生息密度の低下が示唆された(表5)。

○ マングース目撃情報は11件あり、ほぼすべての情報について、情報取得後に聞き取り調査などを実施し、ピンポイント捕獲や探索犬による探索などを実施した。マングースの生息は確認されなかったが、残存個体群が存在する可能性も否定できない。

○ アマミトゲネズミ及びケナガネズミ、アマミイシカワガエル等の在来種は、これまでの防除事業の成果により生息状況の回復傾向が確認されている。

図1.令和元年度のマングース防除作業エリア区分図

水色:モニタリング区域、黄緑色:重点区域

表1.第2期防除実施計画における各作業区域区分での作業目標

作業項目

重点区域

モニタリング区域

捕獲圧(/メッシュ)

6,000わな日以上

2,000わな日以上

わな占有率

75%以上

図2. 令和元年度 奄美大島におけるマングースのわな設置地点

図3.奄美大島におけるマングースのわなによる捕獲頭数の経年変化

表2.捕獲数・捕獲努力量・CPUEの経年推移

表3.令和元年度 月別のわなによるマングース捕獲状況

*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数

*2 CPUE:わなによるマングース捕獲数/1,000わな日

表4.令和元年度 作業区域毎の捕獲作業の結果

(CPUEは捕獲数/1,000わな日、網掛け(湯湾岳エリア)は重点区域)

表5. 平成19年度から令和元年度までのマングース撮影枚数および撮影率

(平成28年度、平成29年度、平成30年度は大和村嶺山地区のデータを除く結果)

2.令和2年度防除事業計画

令和元年度までの事業の結果、捕獲やセンサーカメラ撮影によるマングースの生息確認は約2年間されておらず、全島からの完全排除に向け大きく前進したと考えられる。しかし、その上で残存個体群が生息している可能性も否定できない。令和2年度は、引き続きわなによる捕獲を継続しつつ、マングースの生息情報の収集及び効率的な捕獲のための探索犬による対策を実施していく。また住民からの目撃情報収集を強化していく予定である。

根絶確認モデルについては、環境研究総合推進費2020年度開始課題4-2006(城ヶ原貴通代表)「侵略的外来哺乳類の防除政策決定プロセスのための対策技術の高度化」における検討状況に応じて、捕獲作業計画や探索犬の運用等により必要なデータを集積していく。

在来種のモニタリングを行いながら広域的な防除体制を維持し、引き続き奄美大島からの完全排除を目指していく。

3.防除事業の実施内容等の概要

環境省は奄美大島に生息するアマミノクロウサギやアマミヤマシギ等の在来種を含む奄美大島固有の生態系を保全することを目的に、奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12年度に奄美大島においてマングース駆除事業を開始した。平成17年度からは外来生物法に基づく防除事業を開始し「奄美マングースバスターズ」を結成するなど、防除の強化を図ってきた。平成25年度には、令和4年度までの10年間で奄美大島からのマングースの完全排除を目標とする第2期計画を策定し、その計画に基づいて防除作業を進めている。令和元年度は33名の奄美マングースバスターズ体制で捕獲作業等を実施した。また、特定地域(岩崎産業(株)社有林内またはその周辺のマングース分布域)においては、平成20年度より別途の体制(令和元年度捕獲従事者5名体制)で捕獲作業等を実施している。このような体制により、現在はマングース分布域の全域で捕獲作業等を実施することが可能となっている。

 捕獲作業には、生け捕り式のはこわな(以下「カゴわな」という。)と筒型捕殺わな(アマミトゲネズミの混獲を防止するための延長型筒わなを含む)(以下「筒わな」という。)を使用し、アマミトゲネズミ等の在来種の分布状況に応じて、両わなを使い分けている。

平成20年度からは、マングースの生息状況をより確実に把握し、効率的に捕獲するためにマングース探索犬を導入し、ハンドラーとともに訓練や探索等を実施している。令和元年度は14頭の探索犬及び7名のハンドラーによる体制で実施した。

マングース完全排除の課題となっていた、わなや探索犬による捕獲が困難な場所に残存した個体の防除を図るため、平成29年度には、化学物質を用いた防除試験を実施し、マングース防除の新たな手法として化学的防除の実施方針を作成した。

事業目的である在来種の生息状況の回復を確認するため、捕獲作業と並行してセンサーカメラ、わな点検時などの情報を元に在来種のモニタリングを実施している。

現在はマングース根絶宣言に向けて、マングースの根絶を確認する手法について検討し、検討状況に合わせた防除及びモニタリングを行っている。

■ 問い合わせ先
環境省 沖縄奄美自然環境事務所
所長  東岡 礼治
担 当:奄美群島国立公園管理事務所
(奄美野生生物保護センター)
所長 阿部 愼太郎
電 話:0997-55-8620