報道発表資料
- その他
令和元(2019)年度沖縄島北部地域におけるマングース防除事業の実施結果及び令和2(2020)年度計画について
環境省と沖縄県は、連携協力して沖縄島北部地域において外来生物法で特定外来生物に指定されているマングースの防除事業を行っています。令和元(2019)年度はSFライン以北で39頭のマングースが捕獲されました。平成30(2018)年度より捕獲数が増加しましたが、最も捕獲数が多かった平成19(2007)年度に比べると16分の1程度となりました。在来生物では、ヤンバルクイナの他に、オキナワトゲネズミ、ケナガネズミ、オキナワイシカワガエルなどで生息状況の回復が見られました。令和2(2020)年度は第3期計画の4年目として、令和8(2026)年度までのSFライン以北からの完全排除に向け、引き続き捕獲圧をかけられるよう同様の体制で作業を実施しています。
1.令和元(2019)年度防除事業の結果 (SFライン以北)
(1)実施期間
環境省 平成31(2019)年4月1日から令和2(2020)年3月31日まで
沖縄県 平成31(2019)年4月1日から令和2(2020)年3月31日まで
(2)事業実施区域(図1)
環境省 SFライン以北の国頭村、大宜味村、東村
沖縄県 SFライン周辺の大宜味村、東村、
第一、第二バッファーゾーン
本資料では、完全排除を目標としているSFライン以北の捕獲結果のみを記載しています。
(3)実施体制
令和元(2019)年度は環境省25名、沖縄県9名の計34名のやんばるマングースバスターズで捕獲作業等を実施しました。また、これとは別に北部訓練場では在沖米海兵隊による事業も実施されました。
(4)捕獲結果
令和元(2019)年度は、SFライン以北において、フイリマングース(以下、「マングース」という)を39頭捕獲しました(表1)。作業ごとの内訳は、わなによる捕獲(1,291,853わな日の捕獲作業)で35頭、非わな捕獲(探索犬とハンドラーの連携による捕獲)で4頭となりました。なお、わなでの捕獲作業には、従来使用してきたカゴわなに加えて、平成20(2008)年度から導入した捕殺式筒わなを在来種の分布状況に配慮しながら使用しました。
令和元(2019)年度の捕獲数は、平成30(2018)年度よりも増加しましたが、最も捕獲数の多かった平成19(2007)年度(619頭)と比べると16分の1程度となりました。CPUE(1,000わな日あたりの捕獲数)も0.027となり、平成30(2018)年度とほぼ同様の値となりました。また、マングースが捕獲されたメッシュ※数は15メッシュとこれまでで2番目に少ないメッシュ数となりました(図2、図3)。
以上のことから、沖縄島北部地域におけるマングースの個体数及び分布域は順調に縮減してきていると考えられます。
※メッシュ: 基準地域メッシュ(三次メッシュ)と呼ばれるもので、おおよそ1km四方。捕獲結果の集計に用いている。
マングースの他に、在来種に悪影響を及ぼすおそれのある外来種としてクマネズミ820頭、ノネコ1頭も捕獲、排除しました。在来種はオキナワトゲネズミ135頭、ケナガネズミ80頭、ヤンバルクイナ4羽、アカヒゲ48羽などが混獲されました。オキナワトゲネズミ1頭、ケナガネズミ74頭、アカヒゲ2羽はわな点検時にわな内で死亡していましたが、その他の個体は捕獲地点にて放逐しました。令和元(2019)年度に、ケナガネズミの死亡数(平成30年度は15頭)がとくに多くなったのは、これまでほとんど生息が確認されていなかった防除地域南部(大宜味村、東村)で分布域が急拡大し、分布域での使用を制限している捕殺式のわなに多くが捕獲されたためです。死亡していた在来種は学術標本として管理するとともに、研究などに活用しています。マングースの捕獲に伴う在来種の回復効果を考慮しつつ、わな種によるマングースの捕獲の方法及び区域を計画的に調整することにより、引き続き混獲防止に努めていきます。
図2.SFライン以北のマングースの捕獲数と捕獲メッシュ数の年度別推移
図3.年度ごとのマングース捕獲メッシュ
(左上:H19、右上:H22、左下:H25、右下:R01)
2.在来種の回復状況について
マングース防除事業では、マングースの捕獲排除に併せて、国内希少野生動植物種であるヤンバルクイナやオキナワトゲネズミ、オキナワイシカワガエルなどの在来種の調査を実施し、マングースを排除したことによる効果を検証しています。
(1)ヤンバルクイナ
1980年代(発見当初)は大宜味村塩屋から東村平良以北に生息していたとされていますが、1990年代以降、沖縄島北部地域にマングースが侵入してきたのと同時期に生息域が急激に縮小し、2000年代には国頭村と東村の一部にのみ生息している状況となっていました。平成30年度までの調査において、東村側で生息域の回復が見られておりましたが、令和元年度は大宜味村側の大保ダムから国頭村との境においても生息域が回復しました(図4)。今後、マングースなどの外来哺乳類の排除が進むことで、大宜味村の西側やバッファーゾーンへも生息域が回復していくことが期待されます。
図4.ヤンバルクイナの生息確認メッシュの推移
(左上:H19、右上:H22、左下:H25、右下:R01)
(2)オキナワトゲネズミ、ケナガネズミ
オキナワトゲネズミ、ケナガネズミともにかつては大宜味村塩屋と東村平良以北に分布していたとされていますが、マングースやノネコなどの捕食により、分布が縮小し、ほとんど生息が確認できない状況になっていました。希少種情報であることからこれらの生息域は図示しませんが、平成20年度以降、オキナワトゲネズミ、ケナガネズミともに生息していると推定される範囲の面積が増加傾向にあります(図5、6)。この2種はイタジイの堅果などの環境要因でも生息状況が変動する可能性が考えられますが、今後も同様の調査を継続していくことで、外来種排除との関連性が明らかになっていくと考えられます。
図6.ケナガネズミの防除地域南部(大宜味村、東村)における推定生息域面積の推移
(3)希少カエル類
大国林道において継続的に夜行性小動物(特に両生類)の調査を実施しています。オキナワイシカワガエルは、平成22年度までは、南(SFライン)から北側6km付近まではほぼ確認されませんでしたが、令和元年度は大国林道のほぼ全線で確認できるようになりました。同様の傾向はハナサキガエルでも見られており、また、ホルストガエル、ナミエガエルでも分布の南下傾向が見られ始めていることから、今後、マングースの排除が進むことで、これらの種で生息域の回復が見られることが期待されます。
3.令和2(2020)年度防除事業計画(SFライン以北)
「第3期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画(以下「第3期計画」という。)」の4年目として、令和8(2026)年度までのSFライン以北からの完全排除に向け、引き続き捕獲圧をかけられるよう同様の体制で作業を実施しています。
(1)実施期間
環境省 令和2(2020)年4月1日から令和3(2021)年3月31日まで
沖縄県 令和2(2020)年4月1日から令和3(2021)年3月31日まで
(2)事業実施区域
環境省 SFライン以北の全域
沖縄県 SFライン以南の大宜味村、東村、名護市源河
(3)捕獲作業および実施体制
年間の捕獲努力量目標は100万わな日とし、環境省26名、沖縄県9名の計35名のやんばるマングースバスターズで捕獲作業等を開始しています。
4.背景
フイリマングースは明治43(1910)年に沖縄島の那覇市郊外に持ち込まれた外来種です。沖縄島南部に定着し、次第に分布域を拡大して、1990年代には塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北へ侵入したと考えられています。マングースの分布域拡大に伴って、ヤンバルクイナなどの希少野生動物の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになりました。
このため、平成12(2000)年度から沖縄県が、平成13(2001)年度から環境省がマングースの防除事業を開始しました。平成17(2005)年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいてマングースが特定外来生物に指定され、SFラインより北の地域からマングースを根絶することを目標として防除実施計画を立て、この計画に沿って環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施してきました。これまでの対策により、マングースの生息数は大きく減少し、ヤンバルクイナなどの希少種をはじめとする在来種の回復傾向が見られています。また、マングースの捕獲に関する各種データの蓄積も進み、SFライン以北のマングースの完全排除に向けた方策を検討できる状況になってきました。
平成28(2016)年度には、これまでの成果を踏まえて防除実施計画の見直しを行い、新たに平成29(2017)年度から令和8(2026)年度までの10年間でSFライン以北のマングースを完全排除することを目標とした第3期計画を策定し、平成29(2017)年度からこの計画に基づいて事業を実施しています。
- ■ 問い合わせ先
- 環境省 沖縄奄美自然環境事務所
所長 東岡 礼治
沖縄県 環境部 自然保護課
課長 比嘉 貢
担当:やんばる自然保護官事務所
(やんばる野生生物保護センター)
上席自然保護官 伊藤 勇三
電話:0980-50-1025
沖縄県自然保護課 世界自然遺産推進室
主任 古田 さゆり
電話:098-866-2243