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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2019年09月26日
  • 結果報告

平成30年度奄美大島におけるマングース防除事業の実施結果及び令和元年度計画について(お知らせ)

 環境省沖縄奄美自然環境事務所は、外来生物法に基づくマングース防除事業(以下「防除事業」という。)を平成17年度から実施してきました。平成30年度の防除事業では、わなにより1頭を捕獲し(約260万わな日)、捕獲の効率を示すCPUE(捕獲数/1,000わな日)は0.0004となりました。探索犬及びハンドラーによっての捕獲はありませんでした。平成29年度に比べて捕獲数は約90%減少し、継続的にマングースが減少しており、奄美大島における現在の生息数は10頭以下になっていると考えられます。
令和元年度も「第2期奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」(以下「第2期計画」※という。)に基づく防除事業を行い、令和4年度までに奄美大島からの完全排除を目指します。

1.防除事業の実施内容等の概要

 環境省は奄美大島に生息するアマミノクロウサギやアマミヤマシギ等の在来種を含む奄美大島固有の生態系を保全することを目的に、奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12年度に奄美大島においてマングース駆除事業を開始しました。平成17年度からは「奄美マングースバスターズ」を結成し、外来生物法に基づく防除事業を実施してきました。平成25年度には、令和4年度までの10年間で奄美大島からのマングースの完全排除を目標とする第2期計画を策定し、その計画に基づいて防除作業を進められています。平成30年度は40名のマングースバスターズ体制で捕獲作業等を実施しました。また、特定地域(岩崎産業(株)社有林内またはその周辺のマングース分布域)においては、平成20年度より別途の体制(平成30年度捕獲従事者7名体制)で捕獲作業等を実施しています。このような体制により、現在はマングース分布域の全域で捕獲作業等を実施することが可能となっています。

 捕獲作業には、生け捕り式のはこわな(以下「カゴわな」という。)と筒型捕殺わな(アマミトゲネズミの混獲を防止するための延長型筒わなを含む)(以下「筒わな」という。)を使用し、アマミトゲネズミ等の在来種の分布状況に応じて、両わなを使い分けています。

 平成20年度からは、マングースの生息状況をより確実に把握し、効率的に捕獲するためにマングース探索犬を導入し、ハンドラーとともに訓練や探索等を実施しています。平成30年度は14頭の探索犬及び7名のハンドラーによる体制で実施しました。

 マングース完全排除の課題となっていた、わなや探索犬による捕獲が困難な場所に残存した個体の防除を図るため、平成29年度には、化学物質を用いた防除試験を実施し、マングース防除の新たな手法として化学的防除の実施方針を作成しました。

 事業目的である在来種の生息状況の回復を確認するため、捕獲作業と並行してセンサーカメラ、わな点検時などの情報を元に在来種のモニタリングを実施しています。

 現在はマングース根絶宣言に向けて、マングースの根絶を確認する手法について検討し、検討状況に合わせた防除及びモニタリングを実施しています。

※第2期計画: http://kyushu..env.go.jp/naha/wildlife/data/gairai/boujyo/130425b.html

2.捕獲作業等の実施結果

(1)実施期間: 平成30年4月1日~平成31年3月31日

(2)実施区域: 奄美市、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町

(3)捕獲努力量・捕獲数等: 表1~6、図1~5のとおり

(4)結果概説

○ 第2期計画に基づき、平成30年度は図1、表1の区分により防除事業を実施した。

○ わな設置地点とマングース捕獲地点を図2に示した。

○ 平成30年度防除事業において投入された捕獲努力量は、平成29年度よりも約6%減少し約260万わな日であった(表2)。

○ マングースの捕獲数は1頭で、平成29年度(捕獲数:10頭)よりも約90%減少した。マングースの生息密度を相対的に反映すると考えられるCPUE(1,000わな日あたりのマングース捕獲数)は0.0004で、平成29年度(CPUE:0.004)よりも90%程度減少しており、全島的な低密度化が進んだものと考えられる(表2、図3)。

○ 平成29年度にマングースの捕獲があった大和村嶺山、大和村中山における捕獲は0頭となり、わな作業においてマングースが捕獲されたメッシュは、奄美市名瀬小湊に限局された。これまでの防除事業の成果により全島的な分布の断片化が一層進んだものと考えられる(図4)。

○ CPUEは、奄美市名瀬で0.0013となった。平成29年度と比べていずれの地域でもCPUEが減少しており、局所的に残存しているマングースの低密度化も進んだと考えられる(表4)。

○ 篠川、山間、古仁屋、宇検半島エリアについて、前年度までは低密度化区域であったが、複数年以上にわたり十分な捕獲努力量を投入したにも関わらず捕獲がみられなかったため、特例として重点区域を経ずにモニタリング区域に以降した。

○ 重点区域である名音エリアと湯湾岳エリアでは、マングースの捕獲はなく、両エリアとも局所的な排除に向けて大きく前進した。

○ 平成30年度マングース探索犬によるマングースの捕獲はなかった。探索に費やした延べ日数(889ペア日)は平成29年度(1,255ペア日)に比べ減少した(図5)。

○ 平成29年度及び平成30年度に、マングース防除事業にて生物モニタリングのため使用しているセンサーカメラでの撮影や、目撃情報等があった場所を中心に探索犬による探索を行なった結果、和瀬エリアの中山地区にてマングースと推定される探知事例が8月に1件確認された。それ以外の場所ではマングースである可能性がある探知は無く、マングースの分布の断片化および地域的な根絶の達成に向け、進捗した状況にあると考えられる。

○ マングースの残存個体群が観察され、わなや探索犬による防除が困難であり、かつ非標的種への影響が制限される大和村嶺山において、平成29年度に2回の化学的防除試験を実施した。その結果、複数個体のマングースが化学物質を含んだ餌を喫食していた事が認められ、化学的防除試験実施後、平成30年3月30日から9月21日までに、センサーカメラによる集中的な調査を実施したが、マングースの撮影画像は得られなかった(表5)。マングースが化学物質を含んだ餌を喫食した結果、大和村嶺山マングースの個体数は減少したと考えられる。また、使用した化学物質の土壌残留分析を行い、環境影響の懸念はない数値となったことを確認した。

○奄美大島島内424地点にセンサーカメラを設置し、1台を1日稼働させた場合を1カメラ日とした。その結果、化学的防除を実施した嶺山地区で3月に撮影されて以降、マングースの撮影は確認されず、マングースの減少傾向及び生息密度の低下が示唆された(表5、表6)。

○ アマミトゲネズミ及びケナガネズミ、アマミイシカワガエル等の在来種は、これまでの防除事業の成果により生息状況の回復傾向が確認されている。

○マングースの根絶を確認する手法について検討し、捕獲及びモニタリング努力量を用いて、マングースの生息状況を数理モデルによって示し、根絶達成確率を算出する方針を固めた。

3.令和元年度防除事業計画

 平成30年度までの事業の結果、捕獲やセンサーカメラでの撮影は1年以上確認されておらず、全島からの完全排除に大きく前進したと考えられますが、残存個体群が生息している可能性も否定できません。令和元年度は、引き続きわなによる十分な捕獲圧の確保とマングースの生息状況の把握及び効率的な捕獲のための探索犬による対策を実施していきます。また、根絶確認手法について引き続き検討し、検討状況に応じた捕獲作業計画や探索犬の運用等により必要なデータを集積していきます。

在来種のモニタリングを行いながら、広域的な防除体制を維持し、令和4年度までに奄美大島からの完全排除を目指します。

図1.平成30年度作業エリア区分

図2.平成30年度 奄美大島におけるマングースのわな設置地点、捕獲地点

図3.奄美大島におけるマングースのわなによる捕獲頭数及び捕獲努力の経年変化
(注)探索犬及びハンドラーによる捕獲数は含まない


添付資料

■ 問い合わせ先
環境省沖縄奄美自然環境事務所
所長  東岡 礼治
担当 奄美群島国立公園管理事務所(奄美野生生物保護センター)
国立公園管理官 早瀬 穂奈実
電 話:0997-55-8620