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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2019年09月13日
  • 結果報告

平成30(2018)年度沖縄島北部地域におけるマングース防除事業の実施結果及び令和元(2019)年度計画について(お知らせ)

 環境省と沖縄県は、連携協力して沖縄島北部地域において外来生物法で特定外来生物に指定されているマングースの防除事業を行っています。
 平成30(2018)年度は29頭(平成29(2017)年度は28頭)のマングースが捕獲されました。また、平成29(2017)年度に引き続き、国頭村におけるマングースの捕獲はありませんでした。
 令和元(2019)年度は第3期計画の3年目として、令和8(2026)年度までのSFライン以北からの完全排除に向け、引き続き捕獲圧をかけられるよう同様の体制で作業を実施しています。

1.背景

 フイリマングース(以下、「マングース」とする)は明治43(1910)年に沖縄島の那覇市郊外に持ち込まれた外来種です。沖縄島南部に定着し、次第に分布域を拡大して、1990年代には塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北へ侵入したと考えられています。マングースの分布域拡大に伴って、ヤンバルクイナなどの希少野生動物の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになりました。

 このため、平成12(2000)年度から沖縄県が、平成13(2001)年度から環境省がマングースの防除事業を開始しました。平成17(2005)年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいてマングースが特定外来生物に指定され、SFラインより北の地域からマングースを根絶することを目標として防除実施計画を立て、この計画に沿って環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施してきました。これまでの対策により、マングースの生息数は大きく減少し、ヤンバルクイナなどの希少種をはじめとする在来種の回復傾向が見られています。また、マングースの捕獲に関する各種データの蓄積も進み、マングースの完全排除に向けた方策を検討できる状況になってきました。

 平成28(2016)年度には、これまでの成果を踏まえて防除実施計画の見直しを行い、新たに平成29(2017)年度から令和8(2026)年度までの10年間でSFライン以北のマングースを完全排除することを目標とした「第3期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画(以下「第3期計画」という。)」を策定し、平成29(2017)年度からこの計画に基づいて事業を実施しています。

 令和元(2019)年度は第3期計画の3年目として、昨年度と同様の作業体制で事業を実施しています。

2.平成30(2018)年度防除事業の結果 (SFライン以北)

(1)実施期間

  環境省 平成30(2018)年4月1日から平成31(2019)年3月31日まで

  沖縄県 平成30(2018)年4月2日から平成31(2019)年3月29日まで

(2)事業実施区域

  環境省 SFライン以北の国頭村、大宜味村、東村

  沖縄県 SFライン周辺の大宜味村、東村

 

(3)実施体制

 平成30(2018)年度は環境省29名、沖縄県8名の計37名のやんばるマングースバスターズで捕獲作業等を実施しました。また、これとは別に北部訓練場では在沖米海兵隊による事業も実施されました。

(4)捕獲結果

①全体概要

 1,417,019わな日の捕獲作業を行い、29頭のマングースを捕獲しました(表1)。なお、捕獲作業には、従来使用してきたカゴわなに加えて、平成20(2008)年度から導入した捕殺式筒わなを在来種の分布状況に配慮しながら使用しました。探索犬とハンドラーの連携によるわなによらない捕獲(非わな捕獲)では捕獲はありませんでした(表2)。平成30(2018)年度の捕獲総数は29頭となり、平成29(2017)年度(28頭)に引き続き非常に少ない捕獲となりました。最も捕獲数の多かった平成19(2007)年度(619頭)と比べると21分の1程度となりました。CPUE(1,000わな日あたりの捕獲数)も0.020となり、前年度(0.019)とほぼ同様の値となりました。また、2年連続で国頭村での捕獲がないなど、マングースが捕獲されたメッシュ数は過去最少の13メッシュとなりました。

 以上のことから、沖縄島北部地域におけるマングースの個体数及び分布域は順調に縮減してきていると考えられます(図2、図3)。

※メッシュ: 基準地域メッシュ(三次メッシュ)と呼ばれるもので、おおよそ1km四方。捕獲結果の集計に用いている。

 マングースの他に、在来種に悪影響を及ぼすおそれのある外来種としてクマネズミ406頭、ノネコ3頭も捕獲、排除しました。在来種はオキナワトゲネズミ36頭、ケナガネズミ15頭、ヤンバルクイナ5羽、アカヒゲ54羽などが混獲されました。混獲された在来種の多くは捕獲地点にて放逐しましたが、ケナガネズミ15頭、ヤンバルクイナ1羽、アカヒゲ6羽はわな点検時にわな内で死亡していました。わな種によるマングースの捕獲の方法及び区域を計画的に調整することにより、引き続き混獲防止に努めていきます。

表1.平成30年度までのわなによるマングース捕獲結果

表2.探索犬とハンドラーによる非わな捕獲数



図2.SFライン以北のマングースの捕獲数と捕獲メッシュ数の年度別推移

図3.年度ごとのマングース捕獲メッシュ

(左上:H19、右上:H22、左下:H25、右下:H30)

②地域ごとの捕獲結果

 第3期計画では、沖縄島北部地域を河川やダム湖などを境に8つの作業区域にわけ、マングースの生息密度の低い北側からマングースを地域的に排除していくこととしています。マングース防除の進捗を詳細に評価するために、沖縄島北部地域を北部(作業区域Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)、中部(作業区域Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ)、南部(作業区域Ⅶ、Ⅷ)の3つの地域に分けて捕獲結果を集計しました(図4、図5)。

図4.作業区域

図5.地域ごとのマングース捕獲数

・北部(主に国頭村の謝敷-安田以北) : 第3期計画の作業区域Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ

 平成14(2002)年度以降、少数ながらほぼ毎年、マングースが捕獲されていましたが、平成24(2012)年度以降、7年連続でマングースが捕獲されていません。捕獲作業に加えて、マングース探索犬やセンサーカメラ※※などによりモニタリングを行っており、平成30(2018)年度もマングースの生息情報は全く得られなかったことから、北部(区域Ⅰ~Ⅲ)ではマングースを排除した状態を維持できていると考えられました。この地域では、マングースが再侵入することがないよう、引き続き捕獲作業やモニタリングを行っていきます。

※マングース探索犬:マングースの臭いや糞などの痕跡をたよりにマングースの生息を確認する犬

※※センサーカメラ:動物の体温に反応して自動で写真を撮影するカメラ

・中部(主に国頭村の与那-安波以南) : 第3期計画の作業区域Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ

 平成19(2007)年度には、年間のマングース捕獲数は119頭となっていましたが、その後、減少に転じ、平成29(2017)、30(2018)年度は2年連続でマングースの捕獲がありませんでした。モニタリングにより現在もごく少数ながらマングースが残存していると思われることから、マングースの生息情報に応じて、集中的な捕獲作業を実施していきます。

・南部(主にSFライン以北の大宜味村、東村) : 第3期計画の作業区域Ⅶ、Ⅷ

 平成15(2003)年度から平成20(2008)年度にかけて毎年500頭程度のマングースが捕獲されるなど、沖縄島北部地域で最もマングースの生息密度が高い地域です。平成21(2009)年度以降、減少傾向がみられ、平成30(2018)年度のマングース捕獲数は29頭となりました(ピーク時の平成17(2005)年度に比べ、17分の1程度に減少)。現在もマングースが残存していることから、引き続き面的に高い捕獲圧を維持し、より一層の低密度化を図ります。

3.令和元(2019)年度防除事業計画(SFライン以北)

 第3期計画の3年目として、令和8(2026)年度までのSFライン以北からの完全排除に向け、引き続き捕獲圧をかけられるよう同様の体制で作業を実施しています。

(1)実施期間

  環境省 平成31(2019)年4月1日から令和2(2020)年3月31日まで

  沖縄県 平成31(2019)年4月1日から令和2(2020)年3月31日まで

(2)事業実施区域

  環境省 SFライン以北の国頭村、大宜味村、東村

  沖縄県 SFライン周辺の大宜味村、東村

(3)捕獲作業および実施体制

 年間の捕獲努力量目標は113万わな日とし、環境省25名、沖縄県9名の計34名のやんばるマングースバスターズで捕獲作業等を開始しています。

■ 問い合わせ先
環境省沖縄奄美自然環境事務所
所長  東岡 礼治
沖縄県 環境部 自然保護課
課長 比嘉 貢

担当 奄美群島国立公園管理事務所(奄美野生生物保護センター)
  国立公園管理官 早瀬 穂奈実
  電 話:0997-55-8620

   自然保護課 世界自然遺産推進室
   主任技師 神谷 大二郎
   電話:098-866-2243