報道発表資料
- 結果報告
平成29年度奄美大島におけるマングース防除事業の実施結果及び平成30年度計画について
環境省那覇自然環境事務所は、外来生物法に基づくマングース防除事業(以下「防除事業」という。)を平成17年度から実施してきました。平成29年度の防除事業では、わなにより10頭を捕獲し(約276万わな日)、捕獲の効率を示すCPUE(捕獲数/1,000わな日)は0.004となりました。探索犬及びハンドラーによっての捕獲はありませんでした。平成28年度に比べて捕獲数は約65%減少し、継続的にマングースが減少しており、現在の生息数は50頭以下になっていると考えられます。 平成30年度も「第2期奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」(以下「第2期計画」※という。)に基づく防除事業を行い、平成34年度までに奄美大島からの完全排除を目指します。
1.防除事業の実施内容等の概要
環境省は奄美大島に生息するアマミノクロウサギやアマミヤマシギ等の在来種を含む奄美大島固有の生態系を保全することを目的に、奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12年度に奄美大島においてマングース駆除事業を開始しました。平成17年度からは「奄美マングースバスターズ」を結成し、外来生物法に基づく防除事業を実施してきました。平成25年度には、平成34年度までの10年間で奄美大島からのマングースの完全排除を目標とする第2期計画を策定し、その計画に基づいて防除作業を進められています。平成29年度は42名のマングースバスターズ体制で捕獲作業等を実施しました。また、特定地域(岩崎産業(株)社有林内のマングース分布域)においては、平成20年度より別途の体制(平成29年度捕獲従事者6名体制)で捕獲作業等を実施しています。このような体制により、現在はマングース分布域の全域で捕獲作業等を実施することが可能となっています。
捕獲作業には、生け捕り式のはこわな(以下「カゴわな」という。)と筒型捕殺わな(アマミトゲネズミの混獲を防止するための延長型筒わなを含む)(以下「筒わな」という。)を使用し、アマミトゲネズミ等の在来種の分布状況に応じて、両わなを使い分けています。
平成20年度からは、マングースの生息状況をより確実に把握し、効率的に捕獲するためにマングース探索犬を導入し、ハンドラーとともに訓練や探索等を実施しています。平成29年度は13頭の探索犬及び7名のハンドラーによる体制で実施しました。
マングース完全排除の課題となっていた、わなや探索犬による捕獲が困難な場所に残存した個体の防除を図るため、平成29年度には、化学物質を用いた防除試験を実施しました。
事業目的である在来種の生息状況の回復を確認するため、捕獲作業と並行してセンサーカメラ、わな点検時などの情報を元に在来種のモニタリングを実施しています。
※第2期計画: http://kyushu..env.go.jp/naha/wildlife/data/gairai/boujyo/130425b.html
2.捕獲作業等の実施結果
(1)実施期間: 平成29年4月1日~平成30年3月31日
(2)実施区域: 奄美市、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町
(3)捕獲努力量・捕獲数等: 表1~3、図1~6のとおり
(4)結果概説:
○ わな設置地点と捕獲地点を図1に示した。
○ 平成29年度防除事業において投入された捕獲努力量は、平成28年度よりも約3%増加し約276万わな日であった(表1、図2)。
○ マングースの捕獲数は10頭で、平成28年度(捕獲数:28頭)よりも約65%減少した。マングースの生息密度を相対的に反映すると考えられるCPUE(1,000わな日あたりのマングース捕獲数)は0.004で、平成28年度(CPUE:0.010)よりも60%程度減少しており、全島的な低密度化が進んだものと考えられる(表1、図2)。
○ 平成28年度にマングースの捕獲があった大和村中台における捕獲は0頭となり、わな作業においてマングースが捕獲されたメッシュは、大和村嶺山、大和村中山の2地域に限局された。これまでの防除事業の成果により全島的な分布の断片化が一層進んだものと考えられる(図3)。
○ 地域別にみると、大和村(4頭)、奄美市名瀬地区(4頭)で最も捕獲数が多く、次いで岩崎産業社有林(2頭)となった(表3)。
○ CPUEは、大和村(0.009)で最も高く、次いで奄美市名瀬(0.004)、岩崎産業社有林(0.004)となった(表3)。平成28年度と比べていずれの地域でもCPUEが減少しており、局所的に残存しているマングースの低密度化も進んだものと考えられる。
○ 秋名・屋入・本茶峠エリア(図6)は、平成25年度以降、マングースの生息は確認されていないため、両エリアは局所的な排除が達成された可能性が高まっていると考えられる(図1、3)。
○ 湯湾岳、篠川、宇検半島、山間、古仁屋の各エリア(図6)でも、マングースの生息が確認されなかった。特に、南西部は平成24年度以降マングースの捕獲が無く、地域的な排除に近い状況であると考えられる(図1、3)。
○ 重点区域である思勝・三太郎エリアと名音エリア(図6)では、捕獲地点の分断化が進み、両エリアとも局所的な排除に向けて大きく前進した。
○ 平成29年度マングース探索犬による探索に費やした延べ日数(1,255ペア)は平成28年度(1,088ペア日)に比べ増加したが、探索犬によるマングースの捕獲はなかった。思勝・三太郎エリアと和瀬エリアを中心に広い範囲で探索を行い、奄美市名瀬小湊、大和村中山で反応があったが、それ以外の場所ではマングースである可能性がある探知は無く、マングースの分布の断片化および地域的な根絶の達成に向け、進捗した状況にあると考えられる。
○ マングースの残存個体群が観察され、わなや探索犬による防除が困難であり、かつ非標的種への影響が制限される大和村嶺山において2回の化学的防除試験を実施した。その結果、複数個体のマングースが化学物質を含んだ餌を喫食していた事が認められ、化学的防除の効果が期待される。
○ アマミトゲネズミ及びケナガネズミ等の在来種は、これまでの防除事業の成果により生息状況の回復傾向が確認されている。
3.平成30年度防除事業計画
平成29年度までの事業の結果、マングースの全島排除に向け進展した状況にあり、平成30年度には現在確認されている残存個体群の排除及び広域的な防除体制を維持することが重要です。引き続き、わなによる十分な捕獲圧の確保とマングースの生息状況の把握及び効率的な捕獲のための探索犬による対策を実施していきます。
また、平成29年度に実施された化学的防除試験の効果検証や在来種のモニタリングを行いながら、効果的なマングースの防除方法を検討し、平成34年度までに奄美大島からの完全排除を目指します。
表1.捕獲努力量・捕獲数・CPUEの経年推移
年度 |
わな捕獲 |
探索犬及びハンドラーによる捕獲数(頭) |
合計捕獲数(頭) |
||
捕獲数(頭) |
捕獲努力量 (わな日 *1) |
捕獲効率 (CPUE *2) |
|||
平成29 |
10 |
2,760,923 |
0.004 |
0 |
10 |
平成28 |
27 |
2,671,356 |
0.010 |
1 |
28 |
平成27 |
22 |
2,724,129 |
0.008 |
18 |
40 |
平成26 |
39 |
2,597,407 |
0.015 |
32 |
71 |
平成25 |
110 |
2,482,528 |
0.04 |
20 |
130 |
平成24 |
179 |
2,263,076 |
0.08 |
18 |
197 |
平成23 |
261 |
2,032,811 |
0.13 |
11 |
272 |
平成22 |
311 |
2,101,116 |
0.15 |
1 |
312 |
平成21 |
598 |
2,173,790 |
0.28 |
0 |
598 |
平成20 |
947 |
1,899,238 |
0.50 |
1 |
948 |
平成19 |
783 |
1,379,410 |
0.57 |
- |
783 |
平成18 |
2,713 |
1,051,026 |
2.58 |
- |
2,713 |
平成17 |
2,591 |
630,822 |
4.11 |
- |
2,591 |
*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
*2 CPUE:わなによるマングース捕獲数/1,000わな日
表2.平成29年度 月別のわなによるマングース捕獲状況
|
総捕獲数 |
うち、わなによるもの |
うち、探索犬によるもの |
捕獲努力量 (わな日 *1) |
CPUE *2 |
4月 |
2 |
2 |
0 |
207,996 |
0.010 |
5月 |
0 |
0 |
0 |
238,562 |
0.000 |
6月 |
1 |
1 |
0 |
269,735 |
0.004 |
7月 |
0 |
0 |
0 |
253,868 |
0.000 |
8月 |
2 |
2 |
0 |
215,599 |
0.009 |
9月 |
0 |
0 |
0 |
227,904 |
0.000 |
10月 |
0 |
0 |
0 |
280,718 |
0.000 |
11月 |
0 |
0 |
0 |
214,249 |
0.000 |
12月 |
4 |
4 |
0 |
253,499 |
0.016 |
1月 |
1 |
1 |
0 |
191,330 |
0.005 |
2月 |
0 |
0 |
0 |
228,937 |
0.000 |
3月 |
0 |
0 |
0 |
178,526 |
0.000 |
合計 |
10 |
10 |
0 |
2,760,923 |
0.004 |
*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
*2 CPUE:わなによるマングース捕獲数/1,000わな日
表3.平成29年度 地域別のマングース捕獲状況
市町村名 |
わなによる捕獲 |
探索犬及びハンドラーによる捕獲数 |
合計捕獲数 |
||
捕獲数 |
捕獲努力量 (わな日 *1) |
CPUE *2 |
|||
奄美市笠利 |
0 |
2,216 |
0 |
0 |
0 |
奄美市名瀬 |
4 |
898,032 |
0.004 |
0 |
4 |
奄美市住用 |
0 |
343,762 |
0 |
0 |
0 |
龍郷町 |
0 |
218,809 |
0 |
0 |
0 |
大和村 |
4 |
446,715 |
0.009 |
0 |
4 |
宇検村 |
0 |
167,635 |
0 |
0 |
0 |
瀬戸内町 |
0 |
196,381 |
0 |
0 |
0 |
岩崎産業(株)社有林 |
2 |
487,373 |
0.004 |
0 |
2 |
合計 |
10 |
2,760,923 |
0.004 |
0 |
10 |
*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
*2 CPUE:わなによるマングース捕獲数/1,000わな日
図1.平成29年度 奄美大島におけるマングースのわな設置地点、捕獲地点
図2.奄美大島におけるマングースのわなによる捕獲頭数及び捕獲努力の経年変化
(注)探索犬及びハンドラーによる捕獲数は含まない
平成18年度 平成19年度
平成20年度 平成21年度
平成22年度 平成23年度
平成24年度 平成25年度
平成26年度 平成27年度
平成28年度 平成29年度
図3.マングース捕獲メッシュの経年変化(注)探索犬及びハンドラーによる捕獲数を含む
|
図4.探索犬とハンドラーによるマングース捕獲数の経年変化
|
図5.平成29年度のマングース捕獲方法内訳
図6.作業区域区分図
添付資料
- ■ 問い合わせ先
- 環境省 那覇自然環境事務所
所長 東岡 礼治
担 当:奄美自然保護官事務所
(奄美野生生物保護センター)
自然保護官 早瀬 穂奈実
電 話:0997-55-8620