報道発表資料
- 結果報告
平成28年度奄美大島におけるマングース防除事業の実施結果及び29年度計画について(お知らせ)
環境省那覇自然環境事務所は、外来生物法に基づくマングース防除事業(以下「防除事業」という。)を平成17年度から実施してきました。平成28年度の防除事業では、わなにより27頭を捕獲し(約267万わな日)、捕獲の効率を示すCPUE(捕獲数/1,000わな日)は0.010となりました。平成27年度に比べて捕獲数は約30%減少し、継続的にマングースが減少していると考えられます。また、探索犬及びハンドラーによって1頭の捕獲がありました。平成28年度のマングース捕獲総数は計28頭になります。
平成29年度も28年度と同様に防除実施計画に基づく防除事業を行い、平成34年度までに奄美大島からの完全排除を目指します。
1.防除事業の実施内容等の概要
環境省は奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12年度に奄美大島においてマングース駆除事業を開始しました。平成17年度からは「奄美マングースバスターズ」を結成し、外来生物法に基づく防除事業を実施してきました。平成25年度には、平成34年度までの10年間で奄美大島からのマングースの完全排除を目標とする「第2期奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」(以下「第2期計画」※という。)を始動させています。平成28年度は42名のマングースバスターズ体制で捕獲作業等を実施しました。また、特定地域(岩崎産業(株)社有林内のマングース分布域)においては、平成20年度より別途の体制(平成28年度捕獲従事者8名体制)で捕獲作業等を実施しています。このような体制により、現在はマングース分布域の全域で捕獲作業等を実施することが可能となっています。
捕獲作業には、生け捕り式のはこわな(以下「カゴわな」という。)と筒型捕殺わな(アマミトゲネズミの混獲を防止するための延長型筒わなを含む)(以下「筒わな」という。)を使用し、アマミトゲネズミ等の在来種の分布状況に応じて、両わなを使い分けています。
平成20年度から、マングースの生息状況をより確実に把握し、効率的に捕獲するためにマングース探索犬を導入し、ハンドラーとともに訓練や探索等を実施しています。平成28年度は9頭の探索犬及び6名のハンドラーによる体制で実施しましたが、夏期に探索犬2頭がハブに咬まれ、うち1頭が死亡したために、一時期作業を中断しました。しかし、ハブ対策を見直した後、作業を再開しました。
※第2期計画: http://kyushu..env.go.jp/naha/wildlife/data/gairai/boujyo/130425b.html
2.捕獲作業等の実施結果
(1)実施期間: 平成28年4月1日~平成29年3月31日
(2)実施区域: 奄美市、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町
(3)捕獲努力量・捕獲数等: 表1~4、図1~5のとおり
表1.捕獲努力量・捕獲数・CPUEの経年推移
年度 |
わな捕獲 |
探索犬及び ハンドラーによる 捕獲数(頭) |
合計捕獲数 (頭) |
||
捕獲数(頭) |
捕獲努力量 (わな日 *1) |
捕獲効率 (CPUE *2) |
|||
平成28 |
27 |
2,671,356 |
0.010 |
1 |
28 |
平成27 |
22 |
2,724,129 |
0.008 |
18 |
40 |
平成26 |
39 |
2,597,407 |
0.015 |
32 |
71 |
平成25 |
110 |
2,482,528 |
0.04 |
20 |
130 |
平成24 |
179 |
2,263,076 |
0.08 |
18 |
197 |
平成23 |
261 |
2,032,811 |
0.13 |
11 |
272 |
平成22 |
311 |
2,101,116 |
0.15 |
1 |
312 |
平成21 |
598 |
2,173,790 |
0.28 |
0 |
598 |
平成20 |
947 |
1,899,238 |
0.50 |
1 |
948 |
平成19 |
783 |
1,379,410 |
0.57 |
- |
783 |
平成18 |
2,713 |
1,051,026 |
2.58 |
- |
2,713 |
平成17 |
2,591 |
630,822 |
4.11 |
- |
2,591 |
*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
*2 CPUE:わなによるマングース捕獲数/1,000わな日
表2.平成28年度 月別のわなによるマングース捕獲状況
|
総捕獲数 |
うち、わなによるもの |
うち、探索犬によるもの |
捕獲努力量(わな日 *1) |
CPUE *2 |
4月 |
0 |
0 |
0 |
211,645 |
0.000 |
5月 |
1 |
1 |
0 |
188,802 |
0.005 |
6月 |
6 |
6 |
0 |
242,644 |
0.025 |
7月 |
1 |
0 |
1 |
217,925 |
0.000 |
8月 |
2 |
2 |
0 |
231,748 |
0.009 |
9月 |
5 |
5 |
0 |
245,896 |
0.020 |
10月 |
0 |
0 |
0 |
228,124 |
0.000 |
11月 |
2 |
2 |
0 |
247,302 |
0.008 |
12月 |
5 |
5 |
0 |
215,776 |
0.023 |
1月 |
5 |
5 |
0 |
190,318 |
0.026 |
2月 |
0 |
0 |
0 |
229,342 |
0.000 |
3月 |
1 |
1 |
0 |
221,834 |
0.005 |
合計 |
28 |
27 |
1 |
2,671,356 |
0.010 |
*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
*2 CPUE:わなによるマングース捕獲数/1,000わな日
表3.平成28年度 月別の探索犬及びハンドラーによるマングース捕獲状況
|
捕獲数 |
オス |
メス |
不明 |
成獣 |
幼獣 |
不明 |
4月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
5月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
6月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
7月 |
1 |
0 |
1 |
0 |
1 |
0 |
0 |
8月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
9月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
10月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
11月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
12月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
3月 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
合計 |
0 |
0 |
1 |
0 |
1 |
0 |
0 |
表4.平成28年度 地域別のマングース捕獲状況
市町村名 |
わなによる捕獲 |
探索犬及び ハンドラーによる 捕獲数 |
合計捕獲数 |
||
捕獲数 |
捕獲努力量 (わな日 *1) |
CPUE *2 |
|||
奄美市笠利 |
0 |
2,031 |
0.000 |
0 |
0 |
奄美市名瀬 |
4 |
843,002 |
0.006 |
1 |
5 |
奄美市住用 |
2 |
333,389 |
0.006 |
0 |
2 |
龍郷町 |
0 |
225,343 |
0.000 |
0 |
0 |
大和村 |
15 |
426,347 |
0.035 |
0 |
15 |
宇検村 |
0 |
160,226 |
0.000 |
0 |
0 |
瀬戸内町 |
0 |
197,083 |
0.000 |
0 |
0 |
岩崎産業(株)社有林 |
6 |
483,935 |
0.012 |
0 |
6 |
合計 |
27 |
2,671,356 |
0.010 |
1 |
28 |
*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
*2 CPUE:わなによるマングース捕獲数/1,000わな日
図1.平成28年度 奄美大島におけるマングースのわな設置地点と捕獲地点
図2.奄美大島におけるマングースのわなによる捕獲頭数及び捕獲努力の経年変化
(注)探索犬及びハンドラーによる捕獲数は含まない
平成18年度 |
平成19年度 |
平成20年度 |
平成21年度 |
平成22年度 |
平成23年度 |
平成24年度 |
平成25年度 |
平成26年度 |
平成27年度 |
平成28年度 |
図3.マングース捕獲メッシュの経年変化 (注)探索犬及びハンドラーによる捕獲数を含む |
探索犬とハンドラー |
図4.探索犬とハンドラーによるマングース捕獲数の経年変化
カゴわな 探索犬 |
図5.平成28年度のマングース捕獲方法内訳
図6.作業区域区分図
(4)結果概説
○ わな設置地点と捕獲地点を図1に示した。
○ 平成28年度防除事業において投入された捕獲努力量は、平成27年度よりも約2%減少し約267万わな日であった(表1、図2)。
○ わなによるマングースの捕獲数は27頭で、平成27年度(捕獲数:22頭)よりも約23%増加した(表1、図2)。マングースの生息密度を相対的に反映すると考えられるCPUE(1,000わな日あたりのマングース捕獲数)は0.010で、平成27年度(CPUE:0.008)よりも26%程度増加した。ただし、平成28年度の捕獲個体のうち、19頭はピンポイント捕獲作業によってもたらされたものであり、CPUEの上昇にはそうした影響も考慮に入れる必要がある。また、わな作業においてマングースが捕獲されたメッシュは、大和村嶺山、大和村中山、大和村中台の3地域に局在していることから、これまでの防除事業の成果により全島的な低密度化及び分布の断片化が一層進んだものと考えられる。
○ 地域別にみると、大和村(15頭)で最も捕獲数が多く、次いで岩崎産業社有林(6頭)、奄美市名瀬地区(4頭)、奄美市住用(2頭)となった(表4)。龍郷町、宇検村及び瀬戸内町では平成27年度に引き続き捕獲数は0であった。
○ CPUEは、大和村(0.035)で最も高く、次いで岩崎産業社有林(0.012)、奄美市名瀬(0.06)となった(表4)。
○ 秋名・屋入・本茶峠エリア(図6)は、平成25年度以降、マングースの生息は確認されていないため、両エリアは局所的な排除が達成された可能性が高まっていると考えられる(図1、3)。
○ 湯湾岳、篠川、宇検半島、山間、古仁屋の各エリア(図6)でも、マングースの生息が確認されなかった。特に、南西部は平成24年度以降マングースの捕獲が無く、地域的な排除に近い状況であると考えられる(図1、3)。
○ 重点区域である思勝・三太郎エリアと和瀬エリア(図6)では、捕獲地点の分断化が進み、両エリアとも局所的な排除に向けて大きく前進した。和瀨エリアについては、モニタリング区域への移行基準を満たしており、平成29年度にモニタリング区域に移行する。
○ 探索犬がマングースを追い込みハンドラーが捕獲する方法で1頭を捕獲した。平成28年度は、探索犬へのハブによる咬傷が2件発生し、再発防止策を検討、実施するための期間として、6月から9月を中心に探索作業を一時中止した。ハブ対策を見直した後は、作業を再開した。平成28年度の探索に費やした延べ日数(1088ペア)は平成27年度(852ペア日)に比べ増加したが、落石防止ネット等により探索犬がマングースを追尾しにくいなどの理由から、捕獲頭数は1頭にとどまった。平成28年度の2月に新たな生体探索犬5頭を獲得し、訓練等を実施中である。
○ アマミトゲネズミ及びケナガネズミ等の在来種は、これまでの防除事業の成果により生息状況の回復傾向が確認されている。引き続き、モニタリングを行いながら両種の生息に配慮した事業の実施に努める。
○ 地形や土地利用状況等の理由により、わなや探索犬による防除が不可能(不十分)な場所では、少数残存個体への対策が課題である。
○ マングースの生息数が少なくなっていくにつれ、捕獲はますます困難になってくるが、完全排除のために十分な作業量が投じられないと残存個体から再び増加に転じる可能性もあり、綿密な作業を続けることが重要である。
3.平成29年度防除事業計画
第2期計画に基づき、平成28年度とほぼ同規模での防除事業を実施しており、平成34年度までに奄美大島からの完全排除を目指します。
担 当:奄美自然保護官事務所 (奄美野生生物保護センター) 自然保護官 岩本 千鶴 電 話:0997-55-8620 |