報道発表資料
- 結果報告
報道発表: イリオモテヤマネコの追跡調査結果について
那覇自然環境事務所
竹富町西表島船浮で4月に保護され治療・回復後、5月17日に当地にて放獣されたイリオモテヤマネコ(オス)のその後の追跡調査結果についてお知らせします。当個体は放獣後、10日間ほどで西表島南海岸の鹿川まで移動し、7月下旬までの約2ヶ月間、鹿川に滞在していたことが確認されています。
1 追跡調査について
- (1)
- 調査方法
放獣個体に装着した発信器の電波をポータブルの受信機と指向性アンテナを用いて受信しました。追跡は踏査及び船にて行いました。船での調査は船浮集落の関係者の方々に多大なるご協力をいただきました。 - (2)
- 調査結果
- 5/17~5/19
- 船浮周辺の踏査調査(放獣した5/17に船浮イダの浜付近で受信したのみ)
- 5/21
- 船浮周辺の踏査調査(受信無し)
- 5/27
- 船によるクイラ川、崎山湾及び鹿川湾の調査(鹿川湾で受信)
- 5/28
- 南風見田の浜付近の踏査調査(受信無し)
- 6/1
- 船による鹿川湾調査(受信あり)
- 6/13
- 船による鹿川湾調査(受信あり)
- 6/18
- 船による鹿川湾調査(受信あり)
- 7/21
- 船による鹿川湾調査(受信あり)
- 9/10
- 船(カヤック)による鹿川湾調査(受信無し)
- ※下線は受信のあった調査日
- 図:追跡結果
- (3)
- 調査結果から発信機を用いた追跡により以下の点が明らかになりました。
- ①
- 放獣後、少なくとも2ヶ月以上の生存が確認されました。
- ②
- 船浮から5km以上を数日で移動したことがわかりました。
- ③
- 移動の様子から、なわばりを持たない「放浪個体」であると推測されました。
- ④
- 移動後は、2ヶ月ほど鹿川湾付近の比較的狭い範囲に滞在しました。
- ⑤
- 道路のないこの地域では、船による追跡調査が有効であることがわかりました。
- (4)
- 今後について
今後も追跡調査を行い、生存確認や行動圏などを含めた保全につながる生態学的データを収集する予定です。
西表野生生物保護センターHP(http://iwcc.a.la9.jp/)内のイリオモテヤマネコNEWS(http://iwcc.seesaa.net/)に調査の様子を掲載しています。
2 保護及び放獣までの経緯について
4月11日午後、船浮地区の住民からの通報により急行した西表野生生物保護センター職員が、住民の協力のもと、集落内の公園の植え込みで衰弱して動けなくなっているイリオモテヤマネコを保護し西表野生生物保護センターに収容しました。当初、重度の疥癬*にかかっており、痩せて衰弱していました。体力の回復と疥癬の治療のためセンターの検疫棟で1ヶ月程度、保護収容しました。個体は順調に回復し、獣医師及び専門家と確認した結果、野生復帰が可能と判断され5月17日に放獣を行いました。
*疥癬(カイセン)とはヒゼンダニによる皮膚疾患で感染症のひとつ。
3 放獣個体の状況について
保護された個体は成獣の若いオスで、外傷は見られないもののひどくやせており、体重が2.6kgしかありませんでした。個体は重度の疥癬(カイセン)にかかっており、衰弱の一因と考えられます。保護当日から栄養の補給及び疥癬の治療を行い順調に回復しました。体重も3.6kgにまで回復しました。個体には識別用の首輪とモニタリングのための電波発信機を装着しています。
4 傷病及び死亡個体発見時の連絡
イリオモテヤマネコを目撃した・衝突してしまった・死体を発見した、などの場合は、365日24時間いつでも対応できる体制を取っていますので、西表野生生物保護センター(Tel:0980-85-5581)に至急の通報をお願いします。万が一、交通事故の当事者となってしまっても、故意でない限り罪に問われることはありませんので、情報をお寄せ下さいますようお願い致します。頂いた情報から交通事故の場所や時間、死傷個体の状態、道路周辺状況等の情報を分析し、対策に役立てています。
また、西表島での車両の走行時には、特に夜間は十分周囲に注意して急な飛び出しがあっても安全に事故を避けることができるくらいまでスピードを落として運転していただきますようお願いします。
【傷病及び死亡個体発見時の連絡先】
Tel:0980-85-5581(環境省西表野生生物保護センター)
24時間連絡可
調査の様子
発信器装着状態(麻酔下で装着した際の写真)