報道発表資料
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報道発表 : 平成23年度奄美大島におけるマングース防除事業について(実施結果等のおしらせ)
那覇自然環境事務所
環境省那覇自然環境事務所では、奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12年度から奄美大島においてマングース駆除事業を行っており、平成17年度からは外来生物法に基づく防除事業を実施しています。
平成23年度の防除事業では、約203万わな日により261頭を捕獲し、捕獲効率(捕獲数/1,000わな日)は0.13となりました。捕獲数・捕獲効率ともに平成22年度に比べて15%程度減少しており、着実にマングースの生息密度が低下していると考えられます。なお、上記のわなによる捕獲の他、探索犬及びハンドラーによって10頭を捕獲しているため、捕獲総数は271頭になります。
また、ピンポイント捕獲(マングースの生息情報があった場所の周辺で、同種が好みそうな環境を狙ってきめ細かにわなを設置する捕獲方法)体制の整備やアマミトゲネズミの混獲を防止するためのわなの開発など、防除事業を効果的に進める上で多くの進展がありました。
1.防除事業の実施内容等の概要
奄美大島におけるマングース防除事業は、平成17年度に編成された「奄美マングースバスターズ」を中心に実施しており、平成23年度は42名体制で捕獲作業等を実施しました。また、特定地域(岩崎産業(株)社有林内のマングース分布域)においては、平成20年度より別途の体制(捕獲従事者6名体制)で捕獲作業等を実施しています。このような体制により、現在はマングース分布域の全域で捕獲作業等を実施することが可能となっています。
捕獲作業には、生け捕り式のはこわな(以下「カゴわな」という。)と筒型捕殺わな(以下「筒わな」という。)を使用し、アマミトゲネズミ等の在来種の分布状況に応じて、両わなを使い分けています。
平成21年度から、マングースの生息状況を正確に把握するための手法としてマングース探索犬(3頭)を導入し、ハンドラーとともに訓練や探索等を実施しています。
2.捕獲作業等の実施結果
(1)実施期間 : 平成23年4月1日~平成24年3月31日
(2)実施区域 : 奄美市(名瀬地区、笠利地区、住用地区)、龍郷町、大和村、宇検村、瀬戸内町
(3)捕獲努力量・捕獲数等(表1~3には探索犬及びハンドラーによる捕獲結果は含まれません)
年度 | 捕獲努力量 (わな日 *1) | 捕獲数 (頭) | 捕獲効率 *2 |
平成23 | 2,032,832(暫定値) | 261 | 0.13 |
平成22 | 2,101,116 | 311 | 0.15 |
平成21 | 2,173,790 | 598 | 0.28 |
平成20 | 1,899,238 | 947 | 0.5 |
平成19 | 1,379,410 | 783 | 0.57 |
平成18 | 1,051,026 | 2,713 | 2.58 |
平成17 | 630,822 | 2,591 | 4.11 |
*1 わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数
*2 捕獲効率:マングース捕獲数/1,000わな日
捕獲数 | オス | メス | 幼獣 | 捕獲努力 | 捕獲効率 | |
4月 | 12 | 2 | 0 | 2 | 150,592 | 0.08 |
5月 | 14 | 0 | 0 | 2 | 127,226 | 0.11 |
6月 | 10 | 1 | 1 | 2 | 176,617 | 0.06 |
7月 | 16 | 0 | 1 | 2 | 189,748 | 0.08 |
8月 | 15 | 0 | 0 | 2 | 190,349 | 0.08 |
9月 | 20 | 1 | 0 | 6 | 155,990 | 0.13 |
10月 | 20 | 2 | 0 | 7 | 169,863 | 0.12 |
11月 | 29 | 2 | 3 | 7 | 176,109 | 0.17 |
12月 | 33 | 2 | 1 | 8 | 173,173 | 0.19 |
1月 | 35 | 1 | 0 | 13 | 162,829 | 0.22 |
2月 | 35 | 1 | 1 | 9 | 185,186 | 0.19 |
3月 | 22 | 3 | 0 | 5 | 175,150 | 0.13 |
合計 | 261 | 15 | 7 | 65 | 2,032,832 | 0.13 |
オス、メス、幼獣以外については性別等が不明な個体となる
市町村名 | 捕獲数 | オス | メス | 幼獣 | 捕獲努力 | 捕獲効率 |
奄美市笠利 | 0 | 0 | 0 | 0 | 210 | 0 |
奄美市名瀬 | 108 | 2 | 2 | 23 | 849,979 | 0.13 |
奄美市住用 | 28 | 3 | 1 | 5 | 145,929 | 0.19 |
龍郷町 | 29 | 3 | 1 | 7 | 356,197 | 0.08 |
大和村 | 63 | 7 | 3 | 25 | 367,714 | 0.17 |
宇検村 | 4 | 0 | 0 | 0 | 103,966 | 0.04 |
瀬戸内町 | 13 | 0 | 0 | 4 | 48,883 | 0.27 |
岩崎産業社有林 | 16 | 0 | 0 | 1 | 159,954 | 0.1 |
合計 | 261 | 15 | 7 | 65 | 2,032,832 | 0.13 |
オス、メス、幼獣以外については性別等が不明な個体となる
図1.平成23年度 奄美大島におけるマングースのわな設置地点と捕獲地点
図2.奄美大島におけるマングースの捕獲頭数及び捕獲努力の経年変化
(注)捕獲数:探索犬及びハンドラーによる捕獲数は含まない
平成17年度 |
平成19年度 |
平成20年度 |
平成21年度 |
平成22年度 |
平成23年度 |
図3.防除事業開始以降のマングース分布域の経年変化
(4)結果概説
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平成23年度防除事業において投入された捕獲努力量は、平成22年度よりも3%程度少ない約203万わな日となりました(表1)。この結果は、一昨年に引き続き豪雨によって林道等が通行止めになり、一時的に捕獲作業を実施することができない地域があったこと等が影響しています。
わなによるマングースの捕獲数は261頭で、平成22年度(捕獲数:311頭)よりも15%程度減少し、平成21年度以降3年連続で過去最低を記録しています(表1)。マングースの生息密度を相対的に反映すると考えられる捕獲効率(1,000わな日あたりのマングース捕獲数)は0.13で、捕獲数と同様に平成22年度(捕獲効率:0.15)よりも15%程度減少し、防除事業が始まった平成17年度(捕獲効率:4.11)の3%程度になるまでに至りました(表1)。
これまでの防除事業の成果により低く押さえられているマングースの生息密度が、さらに低下したものと考えられます。 - 月別にみると、11月から2月にかけて相対的に捕獲数が多くなっていました(表2)。例年、秋から冬にかけてはその年に生まれた個体が捕獲され他の季節より捕獲数が増加しますが、2月には減少に転じる傾向にあります。平成23年度は2月に捕獲数のピーク(1月と同数の35頭)を記録しており、例年と異なる傾向が確認されました。
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地域別にみると、奄美市名瀬地区(108頭)で最も捕獲数が多く、次いで大和村(63頭)、龍郷町(29頭)、奄美市住用地区(28頭)となっていました。平成21年度にマングースの侵入が確認された瀬戸内町では、平成22年度(5頭)を上回る13頭が捕獲されました。奄美市名瀬地区・龍郷町・岩崎社有林では平成22年度と比べて減少しましたが、奄美市住用地区・大和村・宇検村・瀬戸内町では増加しました。
捕獲効率は、瀬戸内町(0.27)で最も高く、次いで奄美市住用地区(0.19)、大和村(0.17)となり、最も低かったのは宇検村(0.04)でした。奄美市名瀬地区・龍郷町・岩崎社有林では平成22年度と比べて減少しましたが、大和村・奄美市住用地区・宇検村では増加しており、捕獲数とほぼ同様の傾向が確認されました。 - 生息密度を考慮しない見かけ上の分布域は、南西部での生息確認により平成21年度以降拡大したままの状態です。平成23年度は宇検半島の西部で捕獲があったため、その分拡大しました。また分布域北東部の龍郷半島北部で探索犬及びハンドラーによる捕獲があったため、局所的な分布域として反映しました。なお、全域の生息密度については、前述のとおり低密度化が一層進行したと考えられます。
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マングースを効果的に捕獲するために取り組んだピンポイント捕獲及び探索犬による探索において、それぞれ一定の成果が得られました。
平成23年度から本格的に開始したピンポイント捕獲では、各種情報に基づいて捕獲作業を行いカゴわなで7頭を捕獲するなど、その有効性が確認されました。3頭の探索犬による探索では、探索犬がマングースを追い込み、ハンドラーが捕獲する方法で10頭を捕獲するなど、マングースの生息状況の把握及び捕獲の両面においてその導入効果が改めて確認されました。探索犬とハンドラーによるマングースの捕獲は、平成20年度、22年度に各1頭が捕獲されているのみでした。 -
マングースのほか、外来種としてクマネズミ6,674頭、ノネコ18頭が捕獲されました。
在来種の混獲は、アマミトゲネズミ1,610頭、ケナガネズミ62頭、アカヒゲ19羽、シロハラ4羽等が確認されました。アマミトゲネズミ及びケナガネズミについては、これまでの防除事業の成果(マングースの低密度化)により、生息状況の回復傾向が確認されています。混獲された在来種は、死亡が確認された個体(アマミトゲネズミ42頭、ケナガネズミ6頭、カラス9羽等)を除き、全て捕獲地点で生きたまま放逐しました。 - アマミトゲネズミの混獲を防止するためのわな(延長筒わな)を開発し、関係機関との協議等を経て、平成24年度から導入することが可能となりました。これにより、同種が多く生息する地域においても作業効率の高い同わなを使用することができ、同種の生息に配慮しつつ、より効率的な防除事業の進展を図ることが可能となりました。