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沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2012年07月02日
  • その他

報道発表 : 沖縄島北部地域におけるマングース防除事業の平成23年度の実施結果と平成24年度の実施計画について(お知らせ)

那覇自然環境事務所

環境省那覇自然環境事務所と沖縄県環境生活部自然保護課では、連携協力して、沖縄島北部地域において外来生物法に基づくマングース防除事業を行っています。この事業は、塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(以下「SFライン」という。)より北の地域からマングースを根絶することを目標としています。

(1)平成23年度事業の結果
 沖縄県はSFラインから国頭村伊地と安波を結ぶラインまで、環境省はこの伊地と安波を結ぶライン以北の地域でそれぞれ捕獲を実施し、合計222頭のマングースを捕獲しました。平成22年度に比べてマングースの捕獲数は若干増加しましたが、捕獲効率(100わな日あたりの捕獲数)は平成22年度と同等であったことから、沖縄島北部地域に残存するマングースの個体数は依然少ない状態であると考えられます。
 また、マングース探索犬を用いて、SFライン以北の防除地域においてマングースの探索を行い、マングースの痕跡を357件発見しました。

(2)平成24年度事業の計画
 平成23年度と同じ事業実施区分で捕獲を行います。合計で145万わな日の達成を目標とします。さらに、マングースの地域根絶(分布域縮減)を確認するため、一部の地域にて、わなによる捕獲と探索犬やセンサーカメラ、ヘアトラップなどによるモニタリングを集中して実施します。

1.背景

 マングースは1910年に沖縄島の那覇郊外に持ち込まれた外来生物です。沖縄島南部に定着し、次第に分布域を拡大して、1990年代には塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北へ侵入したと考えられています。マングースの分布域拡大に伴って、ヤンバルクイナなどの希少生物の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになりました。
 このため、沖縄県は平成12年度より、環境省は平成13年度より、マングースの捕獲を行ってきました。平成17年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいて特定外来生物に指定され、マングースをSFライン以北から根絶する防除実施計画を立て、現在、この計画に沿って環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施しています。沖縄島北部の広大な森林でマングースを根絶することは極めて難しい課題であり、綿密な計画の下での集中的かつ継続的な事業の遂行が欠かせません。

2.平成23年度防除事業の結果

図1.平成23年度防除事業実施区域
図1.平成23年度防除事業実施区域

(1)実施期間
環境省 平成23年4月1日から平成24年3月31日まで
沖縄県 平成23年5月10日から平成24年3月31日まで
(2)事業実施区域
環境省 国頭村(伊地-安波ライン以北)
沖縄県 国頭村、大宜味村、東村(SFライン以北から伊地-安波ラインまで)
(3)実施体制
 平成23年度当初は環境省17名、沖縄県16名の計33名 のやんばるマングースバスターズ(以下「バスターズ」という。) で捕獲作業等を開始しました。さらに環境省、沖縄県ともに3 名のバスターズを増員し、計39名の体制で事業を実施しまし た。これとは別に北部訓練場では米海兵隊による事業も実 施されています。
(4)捕獲結果
 平成23年度の捕獲努力量(わな日数)の環境省と沖縄県の合計は1,386,655わな日(沖縄県861,871わな日、環境省524,784わな日)、マングースの捕獲数は222頭(沖縄県207頭、環境省15頭)でした。これとは別に米海兵隊により224,410わな日の捕獲が行われ、マングース33頭が捕獲されています(環境省、沖縄県、米海兵隊の合計で255頭)。なお、捕獲作業には、従来使用してきたカゴわなに加えて、平成20年から導入した捕殺式筒わなを在来生物の分布状況に配慮しながら使用しました。
 SFライン以北でのマングース捕獲数は、平成21年度以降減少傾向にありましたが、平成23年度は若干増加しました。マングースの捕獲効率(100わな日あたりの捕獲数)は前年度と変わらなかったことから、沖縄島北部地域におけるマングースの個体数は依然少ない状態ですが、これまでの減少傾向がみられなくなったと考えられます。マングースの捕獲される地域は、平成22年度と同様の傾向を示しており、特に、国頭村の北西側では前年度に引き続きマングースが捕獲されなかったことから、分布域が縮減している可能性があります(図3)。
 マングースの他に、在来生物に悪影響を及ぼすおそれのある外来生物としてクマネズミ4,969頭、ノネコ14頭も捕獲、排除しました。在来生物はオキナワトゲネズミ22頭、ケナガネズミ109頭、ヤンバルクイナ50羽、アカヒゲ49羽などが混獲されました。混獲された在来生物の多くは捕獲地点にて放逐しましたが、カゴわなで捕獲されたオキナワトゲネズミ1頭、筒わなで捕獲されたケナガネズミ38頭、アカヒゲ1羽はわな点検時にわな内で死亡していました。

図2.SFライン以北のマングースの捕獲数と捕獲効率の年度別推移(環境省と沖縄県)※捕獲効率=捕獲数/捕獲努力量×100
図2.SFライン以北のマングースの捕獲数と捕獲効率の年度別推移(環境省と沖縄県)
※捕獲効率=捕獲数/捕獲努力量×100

図3.環境省、沖縄県のマングース捕獲状況(左:23年度、右:22年度)
図3.環境省、沖縄県のマングース捕獲状況(左:23年度、右:22年度)

(5)マングース探索犬によるモニタリング
 環境省は平成21年度より、沖縄県は平成23年度よりマングースやその痕跡を探索することができるマングース探索犬(図4)を導入し、マングースの分布状況の把握を開始しています。平成23年度は合計で502.7kmの探索を行い、357件のマングースやその痕跡(糞356件、臭い1件)を発見しました。マングースがしばらく捕獲されていない地域で痕跡が確認されたり、痕跡の確認地域の周囲でマングースが捕獲される事例もあるなど、探索犬ならではの成果が得られました。

図4.マングース探索犬
図4.マングース探索犬

3.平成24年度マングース防除事業の実施計画

 マングース防除事業の後半期3年目にあたる平成24年度は、マングースの地域根絶を達成すること、またマングースの効果的な捕獲方法を確立するために、以下の事業などを行う予定です。

(1)捕獲作業
 環境省は4月1日より、沖縄県は5月8日より捕獲作業等を開始しています。作業を行うバスターズは合計で34名(環境省18名、沖縄県16名)、事業実施区域は平成23年度と同様に、環境省は国頭村伊地-安波を結んだライン以北、沖縄県はSFライン以北からこの伊地-安波を結んだラインまでです。捕獲作業は、カゴわなと筒わなを使い分け、あわせて年間145万わな日(環境省55万わな日、沖縄県90万わな日)を達成することを目標とします。
(2)マングースのモニタリング
 探索犬やセンサーカメラ、ヘアトラップを増やすことで、マングースのモニタリングを強化します。さらに、モニタリングで得られた情報と捕獲作業を組み合わせることで、環境省はマングースの地域根絶、沖縄県はマングースのより効果的な捕獲方法を検討します。
(3)在来生物の回復状況調査
 マングース防除の進展につれて、在来生物の分布域が回復することが期待されます。沖縄県では、平成20年度から実施している希少種回復実態調査(主に鳥類と両生類を対象)を継続して実施します。また、バスターズがマングース捕獲作業中に発見した在来生物の情報などを引き続き収集することで、現在の分布域を把握し、回復状況を評価していきます。
(4)マングース北上防止柵のモニタリング
 沖縄県は平成17年度から18年度にかけてSFラインにマングース北上防止柵を設置しました。その後、センサーカメラの設置や、わなを高密度に配置した捕獲などによって、継続的に柵の効果をモニタリングしています。平成24年度も継続して実施します。
(5)新規の北上防止柵(新規柵)の設置
 沖縄県は平成23年度から平成24年度にかけて、現在のマングース北上防止柵の南側に、新たにマングースだけでなくタイワンスジオなどの外来のヘビ類が進入できない新たな柵(新規柵)を設置する予定です。この新規柵を設置することで、沖縄島北部地域(マングース北上防止柵以北)とマングースが高密度に分布する南部地域(新規柵以南)との間に緩衝地域ができます。この緩衝地域は、北部地域の根絶の暁にはマングースの南部からの侵入を阻止すると共に北部の根絶状態の維持、タイワンスジオ等の新たな外来生物の侵入阻止に不可欠な重点モニタリング地域となる予定です。