九州地域のアイコン

沖縄奄美自然環境事務所

報道発表資料

2011年06月21日
  • その他

お知らせ:沖縄島北部地域におけるジャワマングース防除事業の平成22年度の実施結果と平成23年度の実施計画について

那覇自然環境事務所

 環境省那覇自然環境事務所と沖縄県環境生活部自然保護課は、連携協力して、沖縄島北部地域において外来生物法に基づくジャワマングース(以下「マングース」という。)防除事業を行っています。この事業は、平成26年度までに塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(以下「SFライン」という。)より北の地域からマングースを根絶することを目標としています。

(1)
平成22年度事業の結果
 沖縄県はSFラインから国頭村伊地から安波を結ぶラインまで、環境省は国頭村伊地から安波を結ぶライン以北の地域でそれぞれ捕獲を実施し、合計199頭のマングースを捕獲しました。平成21年度に引き続き、100万わな日以上の捕獲を実施したにもかかわらず、捕獲頭数が大幅に減少しました。このことは、事業実施区域内におけるマングースの生息密度が低下してきていることを示唆しているものと考えられます。
 環境省は平成21年度に引き続き、マングース探索犬(以下「探索犬」という。)を用い、SFライン以北の防除地域においてマングースの探索を行い、マングースの痕跡を354件発見しました。このうち、マングース分布域の北端周辺で発見したマングースの糞から、沖縄島では初めて、オキナワトゲネズミ、ケナガネズミの捕食が確認されました。
(2)
平成23年度事業の計画
 平成22年度と同じ事業実施区域で捕獲を行います。合計で120万わな日の達成を目標とします。また探索犬やセンサーカメラ、ヘアトラップなどを用い、マングースの分布状況に合わせた効果的な捕獲を検討し、マングース個体数のさらなる低減と分布域の縮小を目指します。

1.背景

 マングースは1910年に沖縄島の那覇郊外に持ち込まれた外来生物です。はじめは沖縄島南部に定着し、次第に分布域を北に拡大して、1990年代には塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北へ侵入したとされています。マングースの分布域拡大に伴い、ヤンバルクイナなどの希少生物の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになっています。
 このため、沖縄県は平成12年度より、環境省は平成13年度より、マングースの捕獲を行ってきました。平成17年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいて特定外来生物に指定され、10年間(平成26年度まで)でマングースをSFライン以北から根絶する防除実施計画を立て、現在、この計画に沿って環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施しています。
 平成23年度はマングース防除事業の後半期の2年目に入ることから、マングースの分布情報を得ながら効果的な捕獲を行い、マングースの分布域縮減を目指します。

2.平成22年度防除事業の結果

(1)実施期間


図1.平成22年度防除事業実施区域
環境省
平成22年4月1日から平成23年3月31日まで
沖縄県
平成22年6月8日から平成23年3月31日まで

(2)事業実施区域

環境省
国頭村(伊地-安波ライン以北)
沖縄県
国頭村、大宜味村、東村(SFライン以北から伊地-安波ラインまで)

(3)実施体制

 平成22年度当初は環境省13名、沖縄県16名の計29名のやんばるマングースバスターズ(以下「バスターズ」という。)で捕獲作業等を開始しました。さらに環境省が2名、沖縄県が5名のバスターズを増員し、計36名の体制で事業を実施しました。これとは別に米海兵隊による北部訓練場内での事業も実施されています。

(4)捕獲結果

 平成22年度の環境省と沖縄県の合計の捕獲努力量(わな日数)は1,193,092わな日(沖縄県823,489わな日、環境省369,603わな日)、マングースの捕獲数は199頭(沖縄県184頭、環境省15頭)でした。これとは別に米海兵隊により110,057わな日の捕獲が行われ、マングース31頭が捕獲されています(環境省、沖縄県、米海兵隊の合計で230頭)。なお、捕獲作業には、従来使用してきたカゴわなに加えて、平成20年から導入した捕殺式筒わな(以下「筒わな」という。)を在来生物の分布状況に配慮しながら使用しました。
 SFライン以北でのマングース捕獲数は、平成15年度から平成20年度までは毎年500~600頭で横ばいの状態でしたが、平成21年度は390頭に減少し、平成22年度は過去最高の捕獲努力量を投入したにもかかわらず、199頭とさらに減少しました(図2)。それに伴い、マングースの捕獲効率(100わな日あたりの捕獲数)も年々減少しています。これらのことから、沖縄島北部地域におけるマングースの個体数は減少傾向にあると考えられます。さらに、平成22年度は国頭村の西側でほとんどマングースが捕獲されなかったことから、マングースの分布域が縮減している可能性があります(図3)。今後は探索犬等のモニタリングで得られたマングースの分布情報と比較を行い、マングース個体数の減少及びマングース分布域の縮減をより明確にしていきたいと考えています。
 マングースの他に、在来生物に悪影響を及ぼすおそれのある外来生物としてクマネズミ3,687頭、ノイヌ1頭、ノネコ14頭も捕獲、排除しました。在来生物はオキナワトゲネズミ5頭、ケナガネズミ164頭、ヤンバルクイナ34羽、アカヒゲ50羽などが混獲されました。混獲された在来生物の多くは捕獲地点にて放逐しましたが、カゴわなで捕獲されたアカヒゲ2羽、筒わなで捕獲されたケナガネズミ5頭、アカヒゲ1羽はわな点検時にわな内で死亡していました。


図2.SFライン以北のマングースの捕獲数と捕獲効率の年度別推移(環境省と沖縄県)
※捕獲効率=捕獲数/捕獲努力量×100

図3.環境省、沖縄県のマングース捕獲状況(左:22年度、右:21年度)

(5)探索犬によるマングースのモニタリング


図4.マングース探索犬

 環境省では、平成21年度よりマングースやその痕跡を探索することができる探索犬(図4)を導入し、マングースの分布状況の把握を開始しています。平成22年度は合計で417kmの探索を行い、354件のマングースやその痕跡(目視1件、糞320件、臭い33件)を発見しました。マングースが捕獲されていない地域においても痕跡が発見されたり、痕跡のあったところでマングースが捕獲される例もあるなど、探索犬ならではの成果が得られました。
 また、探索犬がマングースの分布域の北端周辺で発見したマングースの糞(21個)を調べたところ、オキナワトゲネズミの被毛(1件、図5)、ケナガネズミの被毛(3件、図6)、ヤンバルクイナの羽毛(1件)が確認されました。沖縄島においてマングースによるオキナワトゲネズミ、ケナガネズミの捕食が確認されたのは初めてのことです。マングースの分布域の北端周辺では、希少な在来生物の捕食が高頻度で起こっていると考えられます。


図5.マングースの糞から
発見されたトゲネズミの被毛

図6.マングースの糞
ケナガネズミの被毛が含まれています。

3.平成23年度マングース防除事業の実施計画

 マングース防除事業の後半期2年目にあたる平成23年度は、新たにヘアトラップ(動物の被毛だけを採取するわな)を導入することをはじめとして、マングースのさらなる個体数の減少、分布域の縮減に向け、以下の事業などを行う予定です。

(1)捕獲作業

 環境省は4月1日より、沖縄県は5月10日より捕獲作業等を開始しています。作業を行うバスターズは合計で33名(環境省17名、沖縄県16名)、事業実施区域は平成22年度と同様で、環境省は国頭村伊地-安波を結んだライン以北、沖縄県はSFライン以北から国頭村伊地-安波を結んだラインまでです。捕獲作業は、カゴわなと筒わなを使い分け、あわせて年間120万わな日(環境省50万わな日、沖縄県70万わな日)を達成することを目標とします。

(2)マングースのモニタリングと効果的な捕獲方法の検討

 環境省では、平成23年度も継続してハンドラー1名と探索犬1頭体制で、主に林内でマングースの探索作業を実施します。沖縄県でも平成23年度から新たにハンドラー1名と探索犬1頭を導入する予定です。また、環境省、沖縄県とも、センサーカメラやヘアトラップを用いてマングースの分布状況をモニタリングします。
 さらに、モニタリングで得られたマングースの分布情報や過去の捕獲結果等を基に、捕獲努力量を分配するだけでなく、わなの配置を変更したり、わなやエサの種類を変更する等、より効果的なマングースの捕獲方法を検討、実施します。

(3)在来生物の回復状況調査

マングース防除の進展につれて、在来生物の分布域が回復することが期待されます。沖縄県では、平成20年度から実施している希少種回復実態調査(主に鳥類と両生類を対象)を継続して実施します。また、バスターズがマングース捕獲作業中に発見した在来生物の情報などを継続して収集することで、現在の分布域を確認し、回復状況を評価していきます。

(4)マングース北上防止柵のモニタリング

 沖縄県は平成17年度から18年度にかけてSFラインにおいてマングース北上防止柵を設置しました。その後、センサーカメラの設置や、わなを高密度に配置した捕獲などによって、継続的に柵の効果をモニタリングしています。平成23年度も継続して実施します。

(5)新規の北上防止柵(新規柵)の設置

 沖縄県は平成23年度から平成24年度にかけて、現在のマングース北上防止柵の南側に、新たにマングース及びタイワンスジオなどの外来のヘビ類が進入できない柵(新規柵)を設置する予定です。この新規柵を設置することで、沖縄島北部地域(マングース北上防止柵以北)とマングースが高密度に分布する南部地域(新規柵以南)との間に緩衝地域を作ることが来ます。その緩衝地域は、北部地域の根絶達成の暁にはマングース根絶状態の維持、タイワンスジオ等の新たな外来生物の侵入阻止に不可欠な重点モニタリング地域となる予定です。