報道発表資料
【お知らせ】平成20年度奄美大島におけるジャワマングース防除事業の実施結果と平成21年度事業の実施計画について
2009.05.22 那覇自然環境事務所
環境省那覇自然環境事務所では、奄美野生生物保護センターを拠点として、平成12年度から奄美大島においてジャワマングース駆除事業を行っており、平成17年度からは、外来生物法に基づくジャワマングース防除事業(以下、「防除事業」という)を実施しています。
- (1)平成20年度防除事業の実施結果について
- 平成20年度防除事業においては、合計で約190万わな日の捕獲努力を投入した結果、947頭のジャワマングース(以下、「マングース」という。)が捕獲、除去されました。平成20年度の捕獲効率(単位努力当たりの捕獲数)は、平成19年度に引き続き、平成18年度までの捕獲効率の1/5程度にまで減少しています。これまでの防除事業の成果により、マングースが低密度で維持されていると考えられます。
より効率的な捕獲作業を実施するため、マングース探索犬の育成・訓練を実施しました。4頭の候補犬のうち2頭については、野外に試験的導入できる段階に達しつつあります。 - (2)平成21年度防除事業の実施計画について
- 平成21年度防除事業では、生残しているマングースを効率的に除去するために、奄美マングースバスターズを37名から42名に増員し、マングースの生息状況に応じて戦略的に高い捕獲圧をかけることで、生息数の一層の低減化と分布域の縮小を目指します。また、マングース探索犬の訓練をさらに進めて実用段階にレベルアップすることを目指すほか、毒餌の試験的利用など新たな防除技術の開発も並行して行います。
1.平成20年度防除事業の実施結果について
(1)防除の実施体制等
奄美大島におけるジャワマングース防除事業は、平成17年度に編成された「奄美マングースバスターズ」と称する専任の作業チームを中心に実施している。奄美マングースバスターズは平成20年度には37名体制で捕獲作業等を実施した。また、特定地域(岩崎産業株式会社社有林内)における捕獲作業の充実のため、同社が雇用した従事者6名によって、平成20年8月より捕獲作業等を実施した。これにより、マングースの推定分布域の全域で捕獲作業を実施することが可能となった。
捕獲作業には、筒型捕殺わな(以下、「筒わな」という。)及び生け捕り式のはこわな(以下、「カゴわな」という。)を用いた。筒わなは、ルリカケス等が進入できないように改良したものを用いた。ケナガネズミ等の在来種の分布状況に応じて筒わなとカゴわなを使い分けた。なお、すべてのわなの設置地点をGPSで管理した。
マングースの生息状況を正確に把握するための新たな手法として、マングース探索犬の利活用を図るために、候補となる犬の育成、訓練を行った。平成20年度末の訓練達成度試験の結果、ニュージーランドから導入した2頭についてマングース探索の現場作業が可能なレベルへの達成が認証された。
(2)捕獲作業の結果等
[1] 実施期間
平成20年4月1日から 平成21年3月31日まで
[2] 実施区域
奄美市名瀬地区、奄美市住用地区、龍郷町、大和村、宇検村
なお、奄美市笠利地区及び瀬戸内町においては、マングースの侵入は確認されていない。
[3] 捕獲努力量(わな日: のべわな日数=わなの数×わな有効日数)
平成20年度: | 1,899,238わな日 |
平成19年度: | 1,379,410わな日 |
平成18年度: | 1,051,026わな日 |
平成17年度: | 630,822わな日 |
平成16年度: | 318,715わな日 |
[4] 捕獲個体数
捕獲効率* | ||
平成20年度: | 947頭 | 0.05 |
平成19年度: | 783頭 | 0.06 |
平成18年度: | 2,713頭 | 0.25 |
平成17年度: | 2,591頭 | 0.41 |
平成16年度: | 2,524頭 | 0.79 |
*捕獲効率(CPUE)は、100わな日あたりのマングース捕獲数
[5] 結果概説
- 平成20年度における捕獲努力量(わな日)は、平成19年度よりも約35%多い1,899,238わな日となった。また、マングース捕獲数は947頭で、平成19年度(783頭)と比較すると約20%増加した。一方、マングースの生息密度を相対的に反映すると考えられる捕獲効率(CPUE)は0.05となり、平成19年度(0.06)から微減するにとどまった。
- 月別にみると、捕獲頭数(239頭)とともに捕獲効率(0.14)も1月にピークが見られた(表1)。これは、前年に生まれて増えた個体が動き回ることにより捕獲されやすい時期であることに加え、新たに改良した筒わなを12月から導入したため、一時的にマングースを捕獲しやすくなったことも影響していると考えられる。
- 地域別にみると、最も捕獲の多かったのは奄美市名瀬地区(471頭)で、龍郷町(206頭)や大和村(158頭)を大きく上回っていた。宇検村においては捕獲効率が0.005となり、捕獲される個体がほとんどなくなった。また、岩崎産業株式会社の社有林内では、8ヶ月間で16頭が捕獲された(表2)。
- ここ2年間、捕獲効率は微減にとどまっているが、マングースの分布域(捕獲された範囲)は平成19年からわずかに縮小(325.8km2)した。分布域周辺部の龍郷町北部、奄美市住用地区などの地域では少数の捕獲が見られ、分布域の外縁部ではマングース個体群の孤立分断化と地域的根絶化が一層進行したと考えられる。
- マングースのほか、外来種としてクマネズミ3,588頭、ノネコ28頭が捕獲された。在来種の混獲は、筒わなではアマミトゲネズミ1頭、ケナガネズミ5頭などがあった。また、カゴわなではアマミトゲネズミ182頭、アカヒゲ26羽などが混獲されたが、死亡が確認された7個体以外は、全て捕獲地点で放逐した。
- 平成5年度から平成20年度末までに、有害捕獲(H5〜15)、移入種駆除・制御モデル事業(H8〜11)、駆除事業(H12〜16)及び防除事業(H17〜)を通じて、これまでに奄美大島において総計3万頭以上のマングースを捕獲、除去したこととなる。
捕獲頭数 | オス | メス | 幼獣 | 捕獲努力 | CPUE** | |
4月 | 39 | 5 | 0 | 4 | 134,167 | 0.03 |
5月 | 25 | 3 | 0 | 6 | 137,979 | 0.02 |
6月 | 18 | 3 | 1 | 5 | 142,401 | 0.01 |
7月 | 31 | 5 | 0 | 15 | 149,303 | 0.02 |
8月 | 40 | 3 | 0 | 24 | 140,438 | 0.03 |
9月 | 56 | 1 | 1 | 32 | 146,441 | 0.04 |
10月 | 78 | 4 | 1 | 36 | 159,807 | 0.05 |
11月 | 132 | 10 | 1 | 55 | 166,068 | 0.08 |
12月 | 165 | 9 | 3 | 38 | 193,050 | 0.09 |
1月 | 239 | 7 | 5 | 48 | 172,456 | 0.14 |
2月 | 80 | 9 | 2 | 8 | 182,723 | 0.04 |
3月 | 43 | 3 | 0 | 3 | 169,355 | 0.03 |
生残モニタリング* | 1 | 0 | 0 | 0 | 5,050 | 0.02 |
合計 | 947 | 62 | 14 | 274 | 1,899,238 | 0.05 |
* マングースの生残モニタリング調査は、カゴわなを用いて3月下旬に実施
捕獲頭数 | オス | メス | 幼獣 | 捕獲努力 | CPUE** | |
奄美市名瀬 | 471 | 24 | 9 | 128 | 852,786 | 0.06 |
奄美市住用 | 95 | 6 | 2 | 30 | 120,308 | 0.08 |
龍郷町 | 206 | 7 | 0 | 61 | 362,962 | 0.06 |
大和村 | 158 | 24 | 3 | 54 | 514,940 | 0.03 |
宇検村 | 1 | 1 | 0 | 0 | 21,422 | 0.005 |
岩崎産業社有林 | 16 | 0 | 0 | 1 | 26,820 | 0.06 |
合計 | 947 | 62 | 14 | 274 | 1,899,238 | 0.05 |
** CPUE(捕獲効率)は、100わな日あたりのマングース捕獲数
図2.平成20年度捕獲努力量(のべわな日数) 合計約190万わな日
図3.平成20年度マングース捕獲数 合計947頭
2.平成21年度防除事業の実施計画について
- ◆平成21年度の事業方針
- 本事業前期(平成17〜21年度)における最終年度の防除を効果的に実施する。また、完全排除に向けた後期(平成22〜26年度)の計画を立案するため、@マングースの低密度化と分布域の縮小・孤立分断化するための捕獲作業実施体制の再構築、A既に縮小分断化されたマングース低密度分布域における地域的根絶の確認、B毒餌を使用した防除技術の開発、の3点に重点を置く。
1.雇用従事者による防除
奄美マングースバスターズ(AMB)は、平成21年度は42名に増員して作業チームを編成し、投入する捕獲努力量は、年間200万わな日を目標とする。
これまでに得られたマングースの生息状況に応じて分布域を戦略的に縮小分断化させるため、わなの点検頻度に高低の差を付け、効率的に捕獲努力を投入する。
その他、在来種のモニタリング調査やマングースの生残モニタリング手法の有効性調査等さまざまな作業を実施し、これらの成果に基づき、後期5年間の効果的な防除の実施に向けた前期の総括を行う。
2.特定地域における防除
平成20年度から実施してきた岩崎産業株式会社の社有林内における捕獲作業については、同社が雇用する従事者6名によって、AMBによる捕獲作業と同水準の作業を実施し、年間15万わな日の捕獲努力量を投入する。
3.マングース探索犬の実用化
平成20年度に引き続きAMB3名が、探索犬の育成及びハンドラーを担当する。平成20年度にニュージーランドから導入した3頭のマングース探索犬については、野外において実働が可能になった犬から順次、フン等の生活痕跡の探索及び生きているマングースの探索に従事する。
4.毒餌を使用した防除技術の開発
探索犬の実用化によって、マングースの休息や繁殖場所等、高頻度に利用する場所が把握されることが期待される。そのような局所的な場所については捕獲以外のマングース防除技術として、マングースに有効な毒餌の開発、試験を行う。
5.マングース防除効果の評価
- (1)マングースの生息状況等モニタリング
- 平成22年3月に生け捕りわなのセンサスラインを島内各地に設定し、ヘアトラップ、足跡スタンプ及びセンサーカメラ等を併設する形で行う。
- (2)数理モデルの構築と分析
- マングース防除事業の進捗に伴う個体群動態を科学的に評価するために、数理モデルを構築し、防除効果を予測する。また、数理モデルから作業戦略を検討し後期作業へフィードバックする。
6.普及啓発
マングース防除事業の重要性について、普及活動を実施する。特にAMBの活動については、今年度新たにウェブサイトの開設やイベントを開催する等、一般へ理解を深めてもらう。