報道発表資料
【通知】カエルツボカビ感染調査の現状報告について
2007.11.27 那覇自然環境事務所
本年6月にお知らせしたカエルツボカビ感染調査について、全国の検査状況に関する報告が本日東京で開催されるカエルツボカビ実態把握検討会で行われますので、那覇自然環境事務所管内の概況についてお知らせします。
北海道から沖縄まで、全国の野外の両生類から採取された4,360試料のうち693試料が検査され、このうち2試料でカエルツボカビ菌が有しているものと同じDNA断片がPCR検査等により検出されました。また、22試料が詳細検査中です。
那覇自然環境事務所管内では、沖縄県及び財団法人海洋博覧会記念公園管理財団の協力を得て沖縄島内で試料採取を行ったほか、石垣島、西表島でも試料採取を行いました。また、鹿児島県奄美大島、加計呂麻島、徳之島でも試料採取を行いました。
沖縄県内では採取された1,142試料(沖縄島1,020、石垣島36、西表島86)のうち、132試料(沖縄島123、石垣島9)が検査され、このうち沖縄島で採取された2試料が陽性となり、5試料が詳細検査中です。
また、鹿児島県奄美大島、加計呂麻島及び徳之島で採取された283試料については、9試料(全て奄美大島)が検査され、陽性は確認されていません。
いずれの地域でも野外において両生類の大量死亡や継続した死亡等は確認されておらず、カエルツボカビ症を発症していると思われる情報は得られていません。カエルツボカビ菌には遺伝学的にいくつかのタイプがあることが分かってきていますが、菌の病原性や両生類の感受性等については、まだほとんど把握されていません。カエルツボカビによって在来の両生類が今後重篤な症状を示す可能性も否定しきれず、従来どおり、新たなカエルツボカビの侵入を防止するための対応は今後とも必要です。
検査結果の検討及び今後の調査等については、本日16:00から東京で開催されているカエルツボカビ実態把握検討会で検討されています。
1.調査内容
沖縄島内では、那覇自然環境事務所がやんばる地域のうち固有種や絶滅のおそれのある種が生息する国頭、大宜味、東の3村において、財団法人海洋博記念公園管理財団がやんばる地域のうち本部半島周辺において、沖縄県(自然保護課、文化課及び衛生環境研究所)がそれ以外の地域において、それぞれ試料の採取を行った。この他、那覇自然環境事務所では、石垣島、西表島ならびに鹿児島県奄美大島、加計呂麻島(奄美両生類研究会の協力を得た)、徳之島において試料採取を行った。試料は、網等により捕獲した両生類の体表面を綿棒で拭うことによって採取し、試料採取後、捕獲した両生類は捕獲地点で放した。なお、調査のためにフィールドに入ることにより、感染を広げるおそれもあるので、試料の採取等は消毒等を入念に行って実施した。試料の採取に際しては多くの方に協力をいただいた。
採取した試料については、独立行政法人国立環境研究所においてPCR検査を行った。
今までに、沖縄島では約110地点から1,020試料、石垣島では5地点から36試料、西表島では約10地点から86試料、鹿児島県奄美大島、加計呂麻島及び徳之島では約40地点から283試料を採取した。
2.検査結果
独立行政法人国立環境研究所の検査結果では、検査を行った沖縄島の123試料、石垣島の9試料、奄美大島の9試料のうち沖縄島北部で採取されたシリケンイモリの2試料において、カエルツボカビ菌が有しているものと同じDNA断片がPCR検査により検出された。また、沖縄島中南部で採取されたリュウキュウカジカガエルの3試料とヌマガエルの2試料について詳細検査中。
また、今までの分析で、塩基配列の違いから遺伝学的にいくつかのタイプがあることが確認されており、沖縄島ではAタイプが確認された。
3.今後の対応及び留意事項
今後の調査やその他の対応については、カエルツボカビ実態把握検討会での検討も踏まえて対応していく。
現在のところ、野外において両生類の大量死亡や継続した死亡等は確認されておらず、カエルツボカビ症を発症していると思われる情報は得られていない。今回の調査結果から、野外にカエルツボカビが存在する可能性が高いことが推測されるが、DNA断片が同じであることが確認されたということであり、菌の分離等が行われていないことから、確実に同じ菌であるかどうかは断定できない。また、カエルツボカビにはいくつかの変異があること、国内の両生類について感受性の有無や程度が把握されていないことから、現時点での知見では、従来どおり、新たなカエルツボカビが野外に侵入することを防いでいくこと、野外に存在が確認されたカエルツボカビについて不用意に広めないようにすることが必要である。
両生類を扱っている方は、今までどおり、飼育下の両生類を野外に放逐しない、水槽内の水や飼育資材は十分に消毒し適正管理を行う、異変を感じたら相談窓口に連絡する等の対策を継続していくことが重要であり、引き続き御協力をお願いしたい。
また、やんばる等のフィールドに調査や自然観察等で入る方は、靴や調査器具等の十分な消毒に留意していただき、カエルツボカビの蔓延防止に協力をお願いしたい。一般の方も、西表島の桟橋等、消毒を実施している施設等においては靴の消毒等に御協力をお願いしたい。
添付資料
- カエルツボカビ野外分布概況把握調査について[PDF804KB]
連絡先
環境省那覇自然環境事務所
所長 中島 慶二
担当 安田、阿部
TEL:098-858-5824 FAX:098-858-5825