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報道発表資料

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【お知らせ】沖縄島北部地域におけるジャワマングース防除事業の平成21年度の実施結果と平成22年度の実施計画について

2010.06.10 那覇自然環境事務所

 環境省那覇自然環境事務所と沖縄県自然保護課は、連携協力して、沖縄島北部地域において外来生物法に基づくジャワマングース(以下「マングース」という。)防除事業を行っています。この事業は、平成26年度までに塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(以下「SFライン」という。)より北の地域からマングースを根絶することを目標としています。

(1)
平成21年度事業の結果
 沖縄県はSFライン以北〜県道2号線以南、環境省は県道2号線以北で、それぞれ捕獲を実施し、合計390頭のマングースを捕獲しました。わな日を増やしているにもかかわらず捕獲頭数が500頭を下回ったのは、平成15年以降初めてのことであり、捕獲効率も過去最低となりました。このことは、事業区域内におけるマングースの生息密度が、低下してきていることを示唆しているものと考えられます。
 昨年度新たに、環境省ではマングース探索犬(以下「探索犬」という。)を導入しました。SFライン以北の防除地域においてマングースの探索を行い、マングースの痕跡を393件発見しました。
(2)
平成22年度事業の計画  平成22年度は、沖縄県はSFラインから伊地から安波を結ぶラインまで、環境省は伊地から安波を結ぶライン以北の地域で捕獲を行います。合計で115万わな日の達成を目標とします。また探索犬やセンサーカメラなど用い、マングースの分布状況に合わせた効果的な捕獲を検討し、マングースの生息数の低減と分布域の縮小を目指します。

1.背景

 マングースは1910年に沖縄島の那覇郊外に持ち込まれた外来生物です。はじめは沖縄島南部に定着し、次第に分布域を北に拡大して、1990年代には塩屋湾(大宜味村)と福地ダム(東村)を結ぶ線(SFライン)より北へ侵入したとされています。マングースの分布域拡大に伴い、ヤンバルクイナなどの希少生物の分布域が縮小したり、生息数が減少していることが明らかになっています。
 このため、沖縄県は平成12年度より、環境省は平成13年度より、マングースの捕獲を行ってきました。平成17年度には、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいて特定外来生物に指定され、10年間(平成26年度まで)でマングースをSFライン以北から根絶する防除実施計画を立て、現在、この計画に沿って環境省と沖縄県が連携して防除事業を実施しています。
 平成22年度からマングース防除事業の後半期に入ることから、前半期の結果等から防除計画の見直しを行い、やんばる地域からの根絶を目指してさらに対策を進めます。

2.平成21年度防除事業の結果

(1)実施期間

環境省 平成21年4月1日から平成22年3月31日まで
沖縄県 平成21年6月22日から平成22年3月31日まで

(2)事業実施区域

環境省 国頭村(主に県道2号線以北)
沖縄県 国頭村、大宜味村、東村(SFライン以北から県道2号線まで)

(3)実施体制

 平成21年度当初は環境省11名、沖縄県16名の計27名のやんばるマングースバスターズ(以下「バスターズ」という。)で捕獲作業等を開始しました。さらに7月には環境省が2名のバスターズを増員し、計29名の体制で事業を進めました。

(4)捕獲結果

 平成21年度の環境省と沖縄県の合計の捕獲努力量(わな日数)は1,181,581わな日(沖縄県844,517わな日、環境省337,064わな日)、マングースの捕獲数は390頭(沖縄県378頭、環境省12頭)でした。なお、捕獲作業には、従来使用してきたカゴわなに加えて、平成20年から導入した捕殺式筒わな(以下「筒わな」という。)を在来生物の分布状況に配慮しながら使用しました。
 SFライン以北でのマングース捕獲数は、平成15年度から平成20年度までは毎年500〜600頭で横ばいの状態でしたが、平成21年度は390頭と減少しました(図2)。それに伴い、捕獲効率も年々低くなってきています。しかし、平成21年度は県道2号線以北でもマングース6頭が捕獲されるなど、捕獲される地域は縮小していないため(図3)、今後も同様の捕獲努力量を投入するとともに、マングースの分布状況に合わせた捕獲を検討する必要があります。
 マングースの他に、在来生物に悪影響を及ぼすおそれのある外来生物としてクマネズミ2337頭、ノネコ5頭も捕獲されました。在来生物では、カゴわなではオキナワトゲネズミ11頭、ケナガネズミ61頭、ヤンバルクイナ112羽、アカヒゲ250羽などが混獲されました。そのうち、オキナワトゲネズミ1頭はクマネズミと誤って判断し、安楽死処分してしまいました。また、リュウキュウジャコウネズミ3頭はわな点検時にわな内で死亡していました。それ以外のカゴわなで捕獲された在来生物は、全て生きたまま捕獲地点にて放逐しました。筒わなではケナガネズミ2頭、アカヒゲ4羽の混獲(死亡)がありました。
 平成21年度は過去最高の捕獲努力量を投入した一方で、マングースの捕獲数が減少に転じたことから、やんばる地域におけるマングースの個体数は減少傾向にある可能性があります。今後も引き続きカゴわなと筒わなを併用して効果的に捕獲圧をかけていくことで、マングース個体数の減少をより明確にしていきたいと考えています。また、誤った判断による在来生物の処分などを防止するために、わな内の動物を確認しやすくしたり、バスターズの識別能力の向上にも努めます。加えて筒わなの季節的、地域的な使い分けなども含めて、混獲を避ける工夫を継続していきます。

(5)探索犬の導入

 環境省では、平成21年度よりマングースやその痕跡を探索することができる探索犬を導入し、マングースの分布状況の把握を開始しています。昨年度は合計で412kmの探索を行い、393件のマングースの痕跡(糞344件、臭い49件)を発見しました。マングースが捕獲されていない地域においても痕跡が発見されたり、痕跡のあったところでマングースが捕獲される例もあるなど、探索犬ならではの成果を上げています。今後も効果的に探索犬を利用していくことが重要と考えています。

3.平成22年度マングース防除事業の実施計画

 マングース防除事業の後半期1年目にあたる平成22年度は、新たに環境省で4000個、沖縄県で2000個の筒わなを導入し、合計で25000個(カゴわな9000、筒わな16000)のわなを林内に配置することをはじめとして、マングースのさらなる個体数の減少、分布域の縮小に向け、以下の事業などを行う予定です。

(1)捕獲作業

 環境省は4月1日より、沖縄県は6月8日より捕獲作業を開始しています。環境省は国頭村伊地-同村安波を結んだライン以北を事業区域とし、11名のバスターズで、沖縄県はSFライン以北から国頭村伊地-同村安波までを事業区域とし、14名のバスターズで捕獲作業を実施します。カゴわなと筒わなを使い分け、あわせて115万わな日の捕獲作業を達成することを目標とします。

(2)マングースのモニタリング

 環境省では、平成22年度も継続してハンドラー1名と探索犬1頭体制で、主に林内でマングースの探索作業を実施します。
 また、環境省と沖縄県ではセンサーカメラやヘアトラップ(動物の被毛だけを採取するわな)などを開発・併用し、マングースの分布状況を把握しながら効果的な捕獲作業を検討します。

(3)在来生物の回復状況調査

 マングース防除の進展につれて、在来生物の分布域が回復することが期待されます。沖縄県では、平成20年度から実施している希少種回復実態調査(主に鳥類と両生類を対象)を継続して実施します。また、バスターズがマングース捕獲作業中に発見した在来生物の情報などを継続して収集することで、現在の分布域を確認し、回復状況を評価していきます。

(4)マングース北上防止柵のモニタリング

 沖縄県は平成17・18年度にSFラインにおいてマングース北上防止柵を設置しました。その後、センサーカメラの設置や、わなを高密度に配置した捕獲などによって、継続的に柵の効果をモニタリングしています。平成22年度も継続して実施します。