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報道発表資料

那覇自然環境事務所報道発表資料>2008年度

【通知】平成19年度沖縄島北部地域におけるジャワマングース防除事業の捕獲結果と平成20年度事業の実施計画について(お知らせ)

2008.6.2 那覇自然環境事務所

 環境省那覇自然環境事務所では、やんばる野生生物保護センターを拠点として、沖縄県と連携、分担しながら、沖縄島北部地域においてマングースの捕獲作業を行っており、塩屋−福地ライン以北からの根絶を目標に、平成17年度から外来生物法に基づくマングースの防除事業を実施しています。環境省の平成19年度事業の結果と平成20年度事業の実施計画について、お知らせします。

(1)平成19年度事業の結果
のべワナ日数: 206,621 ワナ日、 捕獲数: 672頭
※ワナ日数=設置ワナ数(T)×設置日数(D) (うち塩屋−福地ライン以北での捕獲は117頭)
 塩屋−福地ライン以北におけるマングースの分布域北上と、在来種への影響を抑えるため、平成19年度は県道2号線以南での捕獲を重点的に行いました。平成18年度に比べて捕獲地点の北上は見られないものの、分布域の縮小は見られず、さらなる捕獲努力量の増加が必要となっています。
 また、持ち運びや管理が容易で、従来使用している生け捕りワナに比較して高い捕獲効率が期待され、捕獲努力量の増加に不可欠な「筒式ワナ」の導入に向けて、筒式ワナの導入試験等を実施しました。
(2)平成20年度事業の計画
 沖縄県が行う塩屋−福地ライン以北の大宜味村、東村での防除事業と連携して、国頭村南部地域での捕獲を中心に展開し、マングースの北上防止と減少に向けた事業を引き続き実施する予定です。
 さらに、一部地域に筒式ワナを導入し、捕獲圧の大幅な増加を図る計画です。

 今後とも沖縄島北部地域のマングース防除については環境省と沖縄県とが役割を分担しつつ、連携協力して事業を推進していきますので、皆様のご理解・ご協力をよろしくお願い致します。

1.背景

 ジャワマングース(以下、「マングース」という。)は1910年に沖縄島の那覇郊外に持ち込まれた外来生物です。沖縄島南部に定着し、次第に生息数と分布域を拡大しながら北上し、1990年代には塩屋−福地ライン(以下「SFライン」という。)以北に侵入したようです。その後、マングースの捕食等により、ヤンバルクイナなど希少種の分布域の縮小や生息数の減少が明らかになっています。
 沖縄県では平成12年度より、環境省では平成13年度より捕獲を行ってきました。平成17年度からは、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づいて、10年間(平成26年度まで)でマングースをSFライン以北から根絶する防除実施計画を立て、この計画に基づいて防除事業を実施しているところです。
 沖縄県では、平成17〜18年度にSFラインにおいてマングース北上防止柵を設置しました。このSFライン以南の地域にはマングースが高密度に生息することが知られています。現在の沖縄島北部地域での防除事業は、沖縄県が主にSFライン以北の大宜味村、東村地域(マングース中密度生息地)での捕獲作業を担当し、環境省では国頭村(マングース低密度〜超低密度生息地あるいは非定着地域)での捕獲作業を実施しているところです。

2.平成19年度防除事業の結果

(1)事業実施区域

 環境省の平成19年度事業実施区域は、図1のとおりです。

(2)捕獲結果及び事業内容

 平成19年度の環境省事業での捕獲努力量はのべ206,621ワナ日、捕獲頭数は672頭(うち、SFライン以北での捕獲は117頭、SFライン以南でのワナ試験を目的とした捕獲が555頭)でした(表1、図2)。なお、マングースの他に、在来生物に悪影響を及ぼすノネコ6頭も捕獲しました。

【1】捕獲作業(通年)
環境省では、沖縄県事業の北側から県道2号線までの低密度ながらマングースが生息している地域を中心に、林道沿いでは2班(1班1名体制)、林内では4班(1班2名体制)の計10人(11月までは8名)の作業員で「生け捕りワナ」による捕獲を実施しました。また、県道2号線以北ではマングースの生息状況を把握するためのモニタリングを兼ねた捕獲をしました。 平成19年度の捕獲結果では、マングースの分布域の拡大(北上)は認められませんでした。しかし、マングースの分布域を縮小させるにはいたらなかったため、今後はさらに大きな捕獲努力量を投入する必要があります。
【2】筒式ワナの導入試験(1月〜2月)
 奄美大島の防除事業では、在来生物の混獲を回避するための改良が加えられた筒式ワナが用いられています。この筒式ワナの有効性を評価することと、沖縄島での防除に筒式ワナの導入を検討することを目的に、在来生物の混獲の可能性が低いSFライン以南において筒式ワナの導入試験を行いました。 入口の構造が違う3種類の筒式ワナと生け捕りワナを合わせた4種類のワナによる試験の結果、現在奄美大島で使用している筒式ワナでは従来の生け捕りワナや改良前の筒式ワナよりも、体の大きいオスのマングースが捕獲されにくいことが明らかになりました。しかし、3種類の筒式ワナをそれぞれ1000ワナ日設置しましたが、在来生物の混獲は改良前の筒式ワナによるジャコウネズミの1例だけで、鳥類の捕獲はありませんでした。
【3】ヤンバルクイナの筒式ワナに対する行動調査(11月〜12月)
沖縄島に筒式ワナを導入するにあたっては、混獲のおそれがある在来生物に配慮し、極力進入できない構造を検討する必要があります。従来使用している生け捕りワナにおいてはヤンバルクイナも捕獲されていることから、【2】で使用した3種類の筒式ワナに対するヤンバルクイナの行動を飼育下で観察し、混獲の回避策を検討しました。 試験の結果、現在奄美大島で使用している筒式ワナへのヤンバルクイナの進入は確認できず、ヤンバルクイナが混獲される可能性は極めて低いと考えられました。

3.平成20年度のマングース防除事業の実施計画

 平成20年度は、沖縄県と連携しながら、さらに大きな捕獲圧をかけるべく、捕獲作業体制を見直し、以下の事業を行う予定です。

(1)捕獲作業
 捕獲作業は既に4月1日より開始しています。林道は1班(1班1名体制)、林内は10班(1班1名体制)の計11名の体制で、平成19年度から進めている林内での捕獲作業をさらに強化していく予定です。今年度は約28万ワナ日(生け捕りワナのみを用いた場合)の捕獲作業を達成することを目標とします。前年度と同様に県道2号線以南の地域を中心に、マングースの中密度分布地域(SFライン以北の大宜味村、東村)から国頭村への侵入を防止するための捕獲作業を通年で行います。
(2)筒式ワナの導入
 沖縄島北部地域のマングースを根絶するためには、早急に捕獲努力量(ワナ日数)を増加させる必要がありますが、毎日の点検作業を伴う従来の「生け捕りワナ」による捕獲のみでは大幅な増加は見込めない状況です。奄美大島の防除事業でより効率的な手法として採用されている筒式ワナ(図3)は、毎日の点検作業が不要かつ軽量であることから、このワナを導入することによりワナ日数を大幅に増加させることが期待できます。
 しかし、筒式ワナでは、ケナガネズミやオキナワトゲネズミの混獲を完全に防止することは現在のところ困難と考えられるため、これらの在来生物に配慮し、筒式ワナを導入する地域を限定して行っていく必要があります。
 平成20年度については、必要な法的手続きを行った上、沖縄県事業の主要な作業域となる大宜味村、東村において沖縄県と連携して導入を開始するとともに、筒式ワナの設置条件等についてさらに検討を行っていく計画です。
 また、筒式ワナはスプリングが強く、人が触ると危険であることから、ワナには注意喚起のラベルを貼り、民家周辺を避けて設置する予定です。導入開始にあたっては事前に地元住民の方への説明会やポスターの掲示・配布等を通して周知と理解を図っていきます。
図3 筒式ワナと注意喚起のラベル
(3)在来生物の回復状況調査
 マングースの防除が進展するにつれて、マングースに捕食されていた在来生物の生息域が回復することが期待されます。従事者らによるマングースの捕獲作業中の在来生物の目撃情報などから、現在の分布域を確認し、今後の回復状況を評価していきます。

添付資料

連絡先

環境省 那覇自然環境事務所
所長 中島 慶二

担当 やんばる自然保護官事務所 自然保護官 福地 壮太 TEL0980-50-1025 FAX0980-50-1026