九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
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はじめまして。今年4月から石垣自然保護官事務所に着任しましたアクティブレンジャーの江川です。どうぞよろしくお願いします。
環境省では国立公園をフィールドとして、自然にふれあいながら環境について学ぶ機会を作るために子どもパークレンジャー事業(以下JPR)を行っています。
今回はJPRの一環として地元の小中学校向けに行っているサンゴ学習についてご紹介します。
川平小中学校の校舎からは美しいエメラールドグリーンの海が眺められ、サンゴ礁の海を身近に感じられます。神奈川県から来た私にとってはうらやましい限りですが、地元の子どもたちにとっては見慣れた景色なのかもしれません。それでも、意外と深くは知らないサンゴの世界。今年は総合学習の時間を5回使って、わくわくサンゴ石垣島の皆さんと一緒に楽しくサンゴについて学んでいく予定です。
第1回目は教室にて事前学習としてサンゴの基本的な生態についてゲームも交えながら授業を行いましたが、今回第2回目は実際にフィールドに出て行う授業です。今サンゴのすむ海はどうなっているのかを知るために、近くの海岸にて「マイクロプラスチック調査」を行いました。
まずは、マイクロプラスチックはどこからやってきて、どのようにできるのかについて考えていきます。
マイクロプラスチックとは 直径5mm以下の小さなプラスチックのことをいいます。ゴミとして人の手を離れたプラスチック製品は、風や川によって海岸へ流れていきます。すると、石垣島の近くを流れる大きな海流「黒潮」によって、さらに流されていきます。黒潮の秒速は1mから2m。ちょうど私たちが歩くスピードです。黒潮になったつもりで、ゴミを持って歩いてみます。
黒潮の幅は最大で100kmとも言われているので、あっという間に多くのゴミを運んでしまいます。その間に、紫外線にさらされたり、生き物にかじられたり、波によって砕かれたりして、プラスチックの劣化が進み段々と細かくなっていきます。
その後、海中を漂うマイクロプラスチックの一部は波によって砂浜へと打ち上げられます。
そして、いよいよ海岸へ向かいます。まだ梅雨明けしていない時期なので、時折通り雨が降ります。海岸に到着した頃、雨雲がすぐそこまで来ていました。
25cm四方の枠の中で、どれくらいのマイクロプラスチックがあるのか採集して調べます。
枠を基準にちりとりを使って砂をすくい、その中からなるべくマイクロプラスチックを取り出すために、5mmの目合いのふるいでこし、水に浮く性質を利用して海水をくんだバケツに入れ、浮いたものだけをすくって取り出します。
わかりやすいように、黒い布を敷いたトレイの上に取り出します。この一連の作業を、場所を変えて2回行います。
海岸の様子。潮が引いた後にできる波の跡に注目。マイクロプラスチックが溜まりやすいポイントです。
また、砂浜を近くで見るとこのような様子。貝殻やサンゴの骨格にまぎれて一見シーグラスのようなプラスチックもありました。
そして、教室に持ち帰りルーペやピンセット、指の触感を使って細かく分類していきます。
班ごとに採集する場所が違っていたので、マイクロプラスチックの量や種類に差がありました。プラスチックの原料となるレジンペレット、触ってみるとふかふかする発泡スチロール、カラフルなもの......。ルーペで見分けるには限界があるかもしれませんが、繊維のものもマイクロプラスチックである可能性があります。
さて、これらマイクロプラスチックは甲殻類の体内からも確認され、自然生態系への影響が懸念されています。今回の調査で行った採取では、区間が狭いとはいえ取り出すのに細やかな工程を要しました。これらが広大な海に漂っていると思うと、全てを回収するのは想像を絶する作業になるでしょう。
私たちが普段の生活で利用しているプラスチック製品は、私たちの手を離れた後どうなっていくのか、プラスチック製品にふれる機会があまりに多いので、いちいち考えることはないかもしれません。今回のサンゴ学習で、砂浜に混じっていたマイクロプラスチックの粒を改めて細かく見ることで、買い物の際になるべく過剰包装でないものを選ぶなど普段の生活を見つめ直すきっかけとなりました。
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アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園、奄美群島国立公園があります。
はじめまして。今年4月から石垣自然保護官事務所に着任しましたアクティブレンジャーの江川です。どうぞよろしくお願いします。
環境省では国立公園をフィールドとして、自然にふれあいながら環境について学ぶ機会を作るために子どもパークレンジャー事業(以下JPR)を行っています。
今回はJPRの一環として地元の小中学校向けに行っているサンゴ学習についてご紹介します。
川平小中学校の校舎からは美しいエメラールドグリーンの海が眺められ、サンゴ礁の海を身近に感じられます。神奈川県から来た私にとってはうらやましい限りですが、地元の子どもたちにとっては見慣れた景色なのかもしれません。それでも、意外と深くは知らないサンゴの世界。今年は総合学習の時間を5回使って、わくわくサンゴ石垣島の皆さんと一緒に楽しくサンゴについて学んでいく予定です。
第1回目は教室にて事前学習としてサンゴの基本的な生態についてゲームも交えながら授業を行いましたが、今回第2回目は実際にフィールドに出て行う授業です。今サンゴのすむ海はどうなっているのかを知るために、近くの海岸にて「マイクロプラスチック調査」を行いました。
まずは、マイクロプラスチックはどこからやってきて、どのようにできるのかについて考えていきます。
マイクロプラスチックとは 直径5mm以下の小さなプラスチックのことをいいます。ゴミとして人の手を離れたプラスチック製品は、風や川によって海岸へ流れていきます。すると、石垣島の近くを流れる大きな海流「黒潮」によって、さらに流されていきます。黒潮の秒速は1mから2m。ちょうど私たちが歩くスピードです。黒潮になったつもりで、ゴミを持って歩いてみます。
黒潮の幅は最大で100kmとも言われているので、あっという間に多くのゴミを運んでしまいます。その間に、紫外線にさらされたり、生き物にかじられたり、波によって砕かれたりして、プラスチックの劣化が進み段々と細かくなっていきます。
その後、海中を漂うマイクロプラスチックの一部は波によって砂浜へと打ち上げられます。
そして、いよいよ海岸へ向かいます。まだ梅雨明けしていない時期なので、時折通り雨が降ります。海岸に到着した頃、雨雲がすぐそこまで来ていました。
25cm四方の枠の中で、どれくらいのマイクロプラスチックがあるのか採集して調べます。
枠を基準にちりとりを使って砂をすくい、その中からなるべくマイクロプラスチックを取り出すために、5mmの目合いのふるいでこし、水に浮く性質を利用して海水をくんだバケツに入れ、浮いたものだけをすくって取り出します。
わかりやすいように、黒い布を敷いたトレイの上に取り出します。この一連の作業を、場所を変えて2回行います。
海岸の様子。潮が引いた後にできる波の跡に注目。マイクロプラスチックが溜まりやすいポイントです。
また、砂浜を近くで見るとこのような様子。貝殻やサンゴの骨格にまぎれて一見シーグラスのようなプラスチックもありました。
そして、教室に持ち帰りルーペやピンセット、指の触感を使って細かく分類していきます。
班ごとに採集する場所が違っていたので、マイクロプラスチックの量や種類に差がありました。プラスチックの原料となるレジンペレット、触ってみるとふかふかする発泡スチロール、カラフルなもの......。ルーペで見分けるには限界があるかもしれませんが、繊維のものもマイクロプラスチックである可能性があります。
さて、これらマイクロプラスチックは甲殻類の体内からも確認され、自然生態系への影響が懸念されています。今回の調査で行った採取では、区間が狭いとはいえ取り出すのに細やかな工程を要しました。これらが広大な海に漂っていると思うと、全てを回収するのは想像を絶する作業になるでしょう。
私たちが普段の生活で利用しているプラスチック製品は、私たちの手を離れた後どうなっていくのか、プラスチック製品にふれる機会があまりに多いので、いちいち考えることはないかもしれません。今回のサンゴ学習で、砂浜に混じっていたマイクロプラスチックの粒を改めて細かく見ることで、買い物の際になるべく過剰包装でないものを選ぶなど普段の生活を見つめ直すきっかけとなりました。