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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

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2019年3月28日

4件の記事があります。

2019年03月28日やんばる国立公園で工作物発見...。【やんばる地域】

やんばる アクティブレンジャー上開地

こんにちは。

やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。

児童、学生の皆さんは楽しい春休みですね。本州だとお花見真っ盛りの時期でしょうか。

沖縄の桜はヒカンザクラなので2月には満開です。

桜も終わり、やんばるの森では一足早く春の陽気で鮮やかな新緑を向かえています。

やんばるの新緑

 

春は山の散策も楽しい季節。

 

調査や、国立公園の現場確認も気持ち穏やかに歩きます。

ですが、山道を歩いていると見慣れない物が設置されていました。

工作物

▲与那覇岳頂上付近の工作物

 

調べてみると、どうやらオリエンテーリングのチェックポイントに使われる物のようです。

周りを見ても、どんな団体がいつから付けているかは書かれていませんでした。

(写っている札は、設置に対する注意札です。)

 

実はこのオレンジ色の工作物、今少なくともやんばる国立公園内に5つ見つかっています。

  

ボウジムイ工作物大国林道工作物 

 

 

 

 

 

▲大宜味村ボウジムイ       ▲国頭村大国林道

  与那覇岳登山道沢工作物大国林道大国橋工作物

 

 

 

 

▲与那覇岳登山道中の沢     ▲国頭村大国林道 大国橋

 

国立公園の規則を定める自然公園法では、人の行為によって景色や生き物の生息地が悪化しないように、一定のルールが決められています。

特に厳正に守られているのが、特別保護地区に指定されている場所です。

 

工作物が設置されていた与那覇岳の頂上の周り一帯も、この特別保護地区になっていて、

ここではたき火等も禁止なのですが、3月の巡視で頂上の三角点でたき火の跡が見つかりました。

 

頂上たき火跡  空の手巻きたばこ缶

 

 

 

 

 

 

 

▲与那覇岳三角点のたき火跡    ▲その側には手巻きたばこの空き缶がありました。

 

自然の中でのアクティビティはとても楽しい事ですが、多くの人が同じ行為をしてしまうと、やんばるらしい森の雰囲気を壊してしまい、他の来訪者の人が楽しめなくなってしまうかも知れません。

どんな人がいつ訪れてもやんばるらしい環境を楽しめるように守るのが国立公園のルールです。

他にも各市町村や地域ごとに、決められたルールがあります。

 

看板

▲与那覇岳の登山道中の看板。ここから上は踏査圧によって道が削られている場所があり、立ち入り制限の協力をお願いしています。 

 

やんばる3村ルールブック表紙

詳しくは、やんばる3村森林ツーリズム部会HPへ

https://www.yambaru-mori.jp/rule-of-forest/

 

 

国立公園は、日本を代表する自然や景観が地域の人にも大切にされている場所が指定されます。

やんばる国立公園は2年前に誕生したばかり。

ルールについて、まだまだうまく伝えられていない部分もたくさんあります。

自然の良さだけじゃなく、ルールについても分かりやすく伝えていくのが、アクティブレンジャー含め、環境省職員の役割だと思っています。

そしてこの記事を読んでいる皆さんの協力も不可欠です。

もし、どこかの国立公園で設置者の分からない工作物がありましたら、その地域の環境省事務所に情報をお寄せ下さい。

ぜひぜひ、みなさまのご協力をよろしくお願いいたします。

○国立公園内で、工作物を設置したり動植物の採取等をする場合は、事前にご相談ください。

許可が必要な場合は、最低でも1か月の期間が必要になります。

全国の国立公園に窓口の環境省事務所がありますのでお問い合わせ下さい。

やんばる国立公園は「やんばる自然保護官事務所(やんばる野生生物保護センター内)」(ウフギー自然館HP)まで!

 

今月の一枚「咲き始めたユウコクラン」

ユウコクラン全体アジアの亜熱帯地域で見られるラン。

今年は当たり年なのか、林道の道沿いや森の林床をよく見てみると沢山の株から花茎が立ち上がっていました。

見頃はまだまだこれからですが、下の方から咲き始めています。

語源は、夕刻の時のような色合いという説と、幽谷のような霧が立ちこめるような場所で見られる事から来ているそうです。近縁種にコクラン(黒蘭)もあります。

私は夕刻の語源が好きです!

綺麗な植物ですが、どうか持ち去らないで森の中で楽しんで見て下さい。 

ユウコクラン花

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2019年03月28日ツルとの共生のあり方を探る!出水ツルフェスタ開催 【出水地域】

出水 本多孝成

出水自然保護官事務所の本多です。

1月19・20日及び2月2・3日(土・日)の合計4日間、出水のツル渡来地において、ツルとの共生を考える社会実験「パーク&ライド出水ツルフェスタ」を開催しました。今年で3年目となる取組ですが、皆様のご協力のおかげで今回も無事に終えることができました。

さて、例年イベント当日は九州地方環境事務所の職員が運営を手伝ってくれています。出水は初めてという、鳥越アクティブ・レンジャーの質問に答える形でツルフェスタの紹介をしていきたいと思います。

 

 

 ↑ツルフェスタの広報チラシ。クリック(タップ)で拡大画像が表示されます。

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■鳥越:そもそも、どうしてこの社会実験を行うことになったのですか?

●本多:近年、出水のツル渡来地にはナベヅルが世界の全個体数の9割、マナヅルが4~5割飛来しているとされ、合計1万5千羽程のツルが越冬のために飛来します。こうした一極集中の状態は、仮に出水で災害あるいは鳥インフルエンザ等の野鳥の感染症が発生した場合、ツルが大量死するリスクをはらんでいます。また、地元ではツルの食害対策として始まった人工給餌に誘引されたカモ・カラス類による食害や、一部の来訪者による危険運転・路上駐車等の迷惑行為が問題になっています。

 

 ↑路上駐車のカメラマン(左)/農地を徒歩移動するバードウォッチャー(右)

 ※現在、ツル渡来地は人や車両が自由に出入りできる場所になっていますが、ビジターによる

  路上駐車やわき見運転等が地元の農作業の妨げになっています。加えて、不用意な徒歩移動は、

  野鳥の感染症のウイルスが靴底等に付着し、他の地域へ持ち込まれるリスクを高めると

  考えられています。

以上のような地元の課題やリスクを解決する一手段として、ツル渡来地におけるマイカー規制の社会実験が3年前から始まりました。

■鳥越:今年で3年目ということですが、変化を実感することはありますか?

●本多:1年目は九州地方環境事務所と業務請負者である日本生態系協会が主体となり実施しましたが、2年目以降、徐々に地元の関係機関との連携が強まっていると実感しています。特に今回は、出水市・出水市教育委員会の共催に加え地元企業等の協賛を頂き、ツル観光の視点から出水市全体を盛り上げるためのイベント「ツルフェスタ」として実施することができました。

 

■鳥越:準備をする中で1番大変だったことは何ですか?

●本多:私が担当した中で最も大変だったことは、立入規制を行うエリア(道路)及び周知用の看板の設置に関わる許認可申請です。ツルの渡来地付近は農道・市道・県道・国道が混在するため、各担当窓口へ社会実験の趣旨説明に伺ったり、それぞれに応じた資料を作成したりすることが大変でした。

■鳥越:ツルフェスタ当日は、ガイドバスでコーディネーターを務めていましたが、参加者の皆さんはどのような様子でしたか?

●本多:ツルフェスタではツル渡来地の一部エリアにおける立入規制を実施し、代わりの観光手段としてガイド付きのツアーバスを運行しました。私は、「コーディネーター」としてこのツアーバスの進行役を担当しました。ツアーバスは三つのコース(バードウォッチングコース、歴史不思議発見コース、出水ご当地産物(海苔・農業)コース)に分かれ、ツルガイド博士(出水市主催のツルの検定試験に合格した子どもたち)と、各コースに応じた大人の専門ガイドが案内役を務めました。

 

 ↑大人ガイド(海苔コース)とツルガイド博士

 

 ↑バス車内の様子

ツアーバスにご乗車頂いたほとんどの方が満足されたご様子でした。特に、子どもガイドは自作の資料を使って説明したり、「ツルクイズ」を出題したりしてツアー全体を盛り上げてくれました。他にも、「出水ご当地産物(海苔)コース」において実際の生産現場を見学した際は、地元の方から「出水で海苔の生産が行われているとは知らなかった」との声を頂くことができました。

ツルを含む出水の様々な魅力を、現場の最前線に立つ子どもたちや大人の専門ガイドの方に発信して頂いたことは、「ツルを見て終わり」ではない今後のツル観光を考えるうえでも重要な試みになったと思います。

■鳥越:コーディネーターとして楽しかったこと、苦労したことはありますか?

●本多:苦労したことの方が多いです。ツアーバスの主役はあくまで子どもガイドや大人ガイドであるため、コーディネーターは「黒子役」として臨機応変な対応が求められました。具体的には子どもガイドが言葉に詰まったときにアドバイスしたり、ツアー時間がオーバーしないよう運転手の方にルート変更をお願いしたりする等、常に周囲に気を配っていました。また、子どもガイドの中には初対面の児童・生徒もいたため、バス発車前にガイド内容やルートを一緒に確認したり、お話をしたりして少しでも緊張がほぐれるように努めました。

一方で楽しかったこと(嬉しかったこと)は、子どもガイドや大人ガイドとの連携がうまく取れた時や、乗車して下さった方々に「ありがとう!たのしかったよ!」、「勉強になったよ!」とコメントを頂けたことです。

■鳥越:今回のイベントでいちばん印象に残っていることは何ですか?

●本多:ツルフェスタ当日、来訪者の方より「なぜ、ツルから我々を引き離すようなことをするのか詳しく説明して欲しい」と声をかけて頂いたことです。その時は私からツルフェスタの趣旨や出水の現状について説明し、ご理解を頂けましたが、後で振り返った時に「ツルを自由に観察・撮影したい方にとって立入規制はある意味、迷惑なことなのかもしれない...」と気付かされました。農業、観光、産業(特に養鶏)、ツルの保護等、様々な立場の人々が納得できる「ツルと人とのより良い距離感って何だろう?」と、自分自身に問うきっかけになりました。

■鳥越:出水のアクティブ・レンジャーとして普段から人とツルの関わりを身近で見ていると思いますが、本多さんから見て良いところ、悪いところは何ですか?

●本多:「ツルと人との距離が近い」ことが良いところでもあり、悪いところでもあると思います。良いところは、これだけ多くのナベヅル・マナヅルが飛来する地域は世界的にもほかにはなく、ここだけでしか見られない景観や、羽数調査等、独自の保護活動があることです。悪いところは、ツル渡来地に自由に出入りできることから野鳥の感染症の拡散リスクが高まったり、一部のビジターによる迷惑行為(わき見運転、路上駐車、徒歩移動)が地元の負担になったりすることです。

■鳥越:最後になりますが、本多さんが好きな野鳥は何ですか?

●本多:国内の野鳥は総じて好きですが、特にゴイサギという鳥が好きです。(ツルとは関係ありませんが...笑)。出水では繁殖期に多く、春~初夏は特に観察しやすくなります。とても可愛らしい野鳥なので是非見て頂きたいです。

  

 ↑ゴイサギ

これに関連して、出水にはツル以外にも多くの野鳥が飛来し、4~10月上旬(ツルがいない時期)にも様々な野鳥を観察することができます。田園地帯、湖沼、干潟、河川、岩礁、ヨシ原、里山、山林等フィールドも多様です。「野鳥観察」は出水の大きな見どころだと思います。

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さて、今回はツルフェスタについて、質問に答える形で紹介いたしました。次回は私から、鳥越アクティブ・レンジャーへ出水の印象やツルフェスタの感想を伺ってみたいと思います。

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2019年03月28日阿蘇山上ビジターセンターを紹介します♪Vol.2 【阿蘇地域 藤田】

阿蘇くじゅう国立公園 アクティブレンジャー 藤田

 阿蘇くじゅう国立公園内では、南阿蘇ビジターセンター(熊本県高森町)、草原学習館(熊本県阿蘇市)、長者原ビジターセンター(大分県九重町)と、様々な利用目的に合わせた施設が整備されています。

 阿蘇山上ビジターセンターは、熊本地震からの復興の取り組みとしてだけではなく、国立公園に海外から訪れる観光客を増やすために、平成28年度から取り組んでいる「満喫プロジェクト」の一環としても整備が進められ、3月17日(日)にオープンしました。

 今回は、阿蘇山上ビジターセンターの展示について紹介します。ここは、草千里ヶ浜、烏帽子岳、杵島岳、阿蘇中岳~髙岳の登山口にあたるため、『周辺の自然情報』を提供したり、モニターやプロジェクションマッピングによる『登山ガイド』もあります。特に登山ガイドを観ると登った気分を味わえますが、やっぱり自身で体感してもらうことがオススメです。

 

   

   

■阿蘇くじゅう国立公園の自然景観や生息する生き物、季節の観光情報などを、電子掲示板(デジタルサイネージ)やQRコードを活用し、より詳しく、より新鮮にお届けします。

■展示モニタ-では5カ国語で阿蘇地域の魅力を紹介し、インバウンドのお客様への対応もしています。


 

このほか、

■草原のいきものコーナーでは、『ウサギになった私』がオススメです!

■2月に世界ユネスコジオパークに再認定された、阿蘇ジオパークの紹介

■火山防災への取り組みなども紹介しています。

  

16日(土)オープンに先駆けて、阿蘇地区パークボランティアの研修会を行いました。

  

20日(水)には、九州管内のアクティブ・レンジャーが阿蘇に集まり、ビジターセンターも見学しました。

 1階の『阿蘇山上ビジターセンター』では、周辺の自然・観光情報や植物・動物などを紹介していますが、

2~3階にある『阿蘇火山博物館』では、火山に特化した展示がリニューアルされ、阿蘇中岳火口のライブカメラの映像も見られます。ここまで火山をクローズアップした博物館はここだけとのことです。こちらもぜひ、お立ち寄りください!!

 また、阿蘇火山博物館では、阿蘇ジオガイドツアーなども行われていますので、事前にご確認ください。

阿蘇火山博物館HPはこちら→http://www.asomuse.jp/

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2019年03月28日日本初の取り組み!!阿蘇山上ビジターセンターがオープンしました!Vol.1 【阿蘇地域 藤田】

阿蘇くじゅう国立公園 アクティブレンジャー 藤田

 平成31年3月22日現在、火山活動の活発化によりレベル2の1km規制がかかり、阿蘇中岳火口への見学はできません・・・・。「じゃあ、どこいこう?」となった時にオススメの施設ができました!

 3月17日(日)に、平成28年度の熊本地震により被災した『阿蘇火山博物館』の1階フロアに『阿蘇山上ビジターセンター』がオープンしました。復興支援を目的として民間の施設に、環境省の施設が入るのは初めてとなり、注目を集めています。

 

  

        阿蘇火山博物館        玄関口

  

環境省 森本事務次官による主催者あいさつ    テープカットの様子

  

               施設案内の様子 

 午後からは、阿蘇火山博物館主催で「阿蘇山上の復興と発展」をテーマにシンポジウムが開催されました。

  

   講演:荒牧東京大学名誉教授      パネルディスカッションの様子

 また、火山博物館周辺でも、様々な取り組みが始まっています。目の前に広がる『草千里ヶ浜』では、3月2日に熊本県の呼びかけで地元関係者等と協力し、草千里の野焼きが行われました。5月には青々とした草原が見られることでしょう。

  

      野焼きの様子            5月頃の草千里ヶ浜

 草千里ヶ浜展望所では、熊本県が昨年12月に展望デッキを整備し、阿蘇の外輪山の山々や阿蘇中岳火口を一望できるようになりました。

  

               展望所からの風景

 交通面では、阿蘇山上と阿蘇駅を結ぶ路線バスが『阿蘇火山博物館前』に停車することになり、雨の日などでも安心です。待ち時間にも利用でき、たいへん便利になるかと思います。

 また、熊本地震により崩落し、通行不可となっていた烏帽子岳西側登山道は、環境省事業で修復し、3月より利用が出来るようになっています。

 今後も、阿蘇山上ビジターセンターが、阿蘇地域の復興を支援する施設になるよう、官民一体となって盛り上げていきたいと思います。

 阿蘇山上ビジターセンターについての詳細は、Vol.2をご覧ください。

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