対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第12号

 

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対馬野生生物保護センターの活動から


ショック! ツシマヤマネコ2例目のFIV(ネコ免疫不全ウィルス)感染

 昨年末12月20日に上県町佐護の鶏小屋にて保護されたMt‐09の検査結果が出そろいました。結果はFCoV抗体価は陰性でしたが残念な事にFIV陽性でした。
 FIVウィルスに感染しても、すぐにエイズの症状が出るわけではありません。数年かそれ以上の「無症状キャリア期」ののち、発病の初期段階には、慢性の口内炎、鼻かぜ症状、皮膚病、下痢、発熱などがみられます。エイズ期(発病)になると、これらの症状が重く、全身状態が悪くなり、死亡することがあります。

Mt-09

 獣医さんの診察の結果、現在Mt‐09に発病の兆候はなく、展示室モニターで公開中の個体(96-002)と同じ、「無症状キャリア期」の状態にあると考えられます。FIVに感染しても、ストレスの少ない生活をさせて発病を遅らせたり、また、発病してしまっても、薬を使ってなるべく楽な生活を送らせることはできます。

写真:FIV陽性だったMt-09


 現在、FIVに対するワクチンは開発されておらず、さらに、いちど感染すると、FIVウィルスが体の外に出ることはありません。環境省の調査で、対馬のイエネコの24%がFIVに感染していることがわかりました。FIVウィルスは、唾液中に排出され、喧嘩などによる噛み傷から感染します(FIVは、人間にはうつりません。) イエネコからツシマヤマネコに、FIVなどの伝染病を感染させないために、対馬では特に、ネコの飼い方に配慮していただくように、お願いいたします。

ネコを野山に捨てない。(どうしても飼えないときは保健所に相談して下さい)

ノラネコの数を増やさないため、ノラネコに餌を与えない。

センターでモニター公開中のツシマヤマネコを健康診断

 この個体(96-002)は、96年12月5日に、人工繁殖(現在も福岡市動物園で行われています。昨年4月にはメスの赤ちゃんが誕生しました。)の為に捕獲されましたが、その後、FIV等に感染していることが明らかになり、隔離飼育することになりました。捕獲当時すでに成獣であったことから、現在は、6才以上と推定され、歯のすり減り具合を見ても、老年期に入っていると考えられます。

 そこで、96-002の、健康診断を行うことにしました。3月12日に、獣医さんが麻酔をかけ、体重測定、診察、採血が行われました。FIV発病の兆候はなく、血液検査の結果も、血糖値、肝機能、腎機能など、異常ありませんでした。最近、飼育ケージを少しでも居ごこちよくするためにワラを入れてみたところ、気に入ったのか、昼間はよくワラの上で寝ている様です。

 注)この個体に感染したFIVウィルスのDNAを調べたところ、九州地方のイエネコに感染しているFIVと同じタイプのもので、イエネコから感染したと考えられます。

昨年12月14日野生復帰のツシマヤマネコ山で元気に生活

 前号で保護収容後、超小型電波発信機を装着して放逐したツシマヤマネコ(My‐08:注)をご紹介しましたが、その後をお知らせします。

 My‐08は、この個体のなわばりに含まれていたと考えられる峰町吉田近くの林道で、昨年12月14日に放逐されました。My‐08はしばらく放逐地点周辺にいた後、西南西へ約3km離れた賀佐(かさ)集落周辺、白岳方面へと移動。この頃、移動を続けているので、センター職員は、「山で餌を捕って自活できているのだろう」と一安心していました。

 ところが、対馬に数十年ぶりに大雪が降った1月13日の後のこと、ある養鶏場周辺数百m範囲に居着いてしまいました。養鶏場のご主人は、ヤマネコが近くに来ていることを喜んで下さっていました。しかし、My‐08が鶏を襲う可能性は充分にあり、それは養鶏場にとっても、自分の力で生きて行かなくてはならないMy‐08にとっても良いことではありません。

 そこでセンターではMy‐08を捕獲し現場から放逐地点に移動させる事にしました。が、My‐08は警戒心が強く、なかなかワナでは捕まりませんでした。そこで作戦を変更し、養鶏場にヤマネコが侵入できないよう外壁の補修を行いました。補修して1週間後、My‐08は、あきらめがついたのか養鶏場から約1kmほど離れた地点にいるのが確認されましたが、その3日後には、また養鶏場周辺に戻ってきました。

 その後、3月1日には養鶏場から3km以上離れている地点にいましたが、再び戻ってきてしまいました。しかし、養鶏場を離れている期間や距離が徐々に伸び、4月8日、養鶏場の近くの薮で発信器だけが落ちているのが発見されました。
 この個体は、保護当時成獣ではなく、放逐後に体が成長すると考えられたので、首が締まらないように発信器の首輪は、短期間で脱落する仕組みにしていました。現在も元気に暮らしていてくれることと思います。

(注)11号の「傷病保護されたツシマヤマネコ山に帰る」。この個体は、昨年の11月10日に上県町吉田の国道382号上で衰弱しているところを保護、収容されました。  <MIT>


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