対馬野生生物保護センター

[ ホーム ] → [ とらやまの森バックナンバー ] → [ とらやまの森第11号2ページ ]


とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第11号

 

現在のページ 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08


対馬野生生物保護センターの活動から


「ツシマヤマネコを語る集い」開催される

 2001年11月3日(文化の日)、上県町産業祭「やまねこまつり」の催し物の一環として、環境庁・長崎県の主催で「ツシマヤマネコを語る集い」が、「そば道場」研修室で開催されました。環境庁・林野庁・長崎県・上県町・鹿児島大学・琉球大学・福岡市動物園・ツシマヤマネコを守る会などがそれぞれ取り組んでいるヤマネコの保護活動や調査結果を報告し、その後、参加者を交えて意見交換や議論を行いました。

 一般の参加者も多く関係機関や報道機関とあわせて約100名もの参加がありました。意見交換では「重要な生息地や事故多発地帯にスクールゾーンのようなヤマネコゾーンを設定してはどうか」、また「センターでモニター公開しているウィルス感染ヤマネコの飼育ケージは小さすぎて少し窮屈ではないか」等といった意見が積極的に飛び出し、参加者のヤマネコに対する関心の高さがうかがえました。「集い」の中で出された意見は、今後のセンターの活動の参考にさせていただきたいと思います。

 これからも皆で力を合わせてヤマネコにとっても人間にとっても住みよい環境作りのために頑張っていきたいという思いを再認識した催しでした。

傷病保護されたツシマヤマネコ山に帰る

 11月10日21:50 上県郡峰町吉田の国道382号線上で若いオスのツシマヤマネコが保護収容されました。このMy‐08と名付けられたヤマネコは、外傷等は認められなかったものの全長約64cmに対し体重約1.7kgと大変に痩せて衰弱しており、初めの3日程はまっすぐ歩くことさえできない状態でした。再びもとの生息地で生きていけることを目標に、獣医さんや様々な方々の協力を得て、対馬野生生物保護センターにおいて治療と野生復帰訓練を行った結果、1ヶ月後には体重も約2.1kgまで増え、生きた動物を自力で捕らえ食べることができるまでに回復しました。そこで再び野生に帰すために12月14日18:43峰町吉田近くの林道のそばで放しました。
[ 写真:自動撮影で撮影された放逐後のMy-08 ]


 My‐08にはその後の行動状況を調べるために超小型電波発信機(今後も成長しそうな若い個体だったので短期間で脱落するようにしました)を装着し、放逐直後から現在もセンター職員が追跡調査を続けています。1月中旬現在、峰町賀佐(かさ)~吉田周辺で活動しており、自動撮影でも元気な姿が確認されています。

 ツシマヤマネコは山だけに住んでいると思われがちですが、実際は人間の生活域で行動することも多く、車がビュンビュン走っている道路の近くでも活動しています。前号でもお伝えしたヤマネコのロードキル(交通事故)死体発見地点も「えっ!あの道で?」と思うような場所がたくさんあります。ヤマネコを山に放してそれで終わりというわけにはいきません。今後My‐08が事故にあって再び収容されたりすることがないよう、野生の状態で無事くらしていけるように、車の運転やイヌの放し飼いには充分気をつける等といった皆様のご協力をお願いいたします。

収容されたツシマヤマネコウィルスに感染か?

 2000年12月20日朝、上県郡上県町佐護友谷(さごともや)の民家で鶏小屋のニワトリをノラネコから守るために仕掛けられた箱ワナでツシマヤマネコが捕獲されているのが発見され、同日8:00に当センターに保護収容されました。このMt‐09と名付けられたヤマネコはオスの成獣で、全長は約82cm、体重は約3.8kg。
 住民の方の話では、現場はノラネコの多い地域で、3日前から連夜ニワトリを捕られていたとのことです。これらももしかするとMt‐09の仕業だったのかも知れません。

 センターではツシマヤマネコを捕獲したり死体を収容したりした場合は、個体の健全性を把握するために専門の検査機関に血液を送って健康状態やウィルス感染について検査してもらっています。Mt‐09は検査の結果、猫コロナウィルス類(FCoV)の抗体価が少し高いことが判明しました。FCoVに感染した場合、ウィルスの種類によっては猫伝染性腹膜炎(FIP)という致死率の高い病気を引き起こす可能性があります。また感染個体に直接接触しなくてもフン尿を介して間接的に感染することがあるため、フンや尿をマーキングに使うことのあるヤマネコにとっては、非常に怖ろしい病気であるといえます。FCoVに感染した可能性のあるツシマヤマネコの確認例は、人工繁殖のために1996年12月に上対馬町で捕獲されたオス(この個体はイエネコ由来の猫免疫不全ウィルスにも感染しており、現在センターで隔離飼育中。展示室モニターで観察できます。)に次いで2例目です。

 Mt‐09は今のところFIPに特徴的な症状はみられず、またFCoV感染についてはまだ確定的ではないため再検査が必要ですが、この個体は他の猫特有のウィルスにも感染している可能性があります。これらのウィルス感染がツシマヤマネコ野生個体群に拡がった場合には、種の絶滅の引き金となる可能性があることから、再検査による確定的な結果が得られるまではセンターの検疫隔離飼育施設で隔離飼育することになりました。

 Mt‐09が生活していたと考えられる生息地には、ノラネコはもちろんツシマヤマネコでもこれらのウィルスに感染している個体が生息している可能性があります。対馬野生生物保護センターでは緊急にこれらの感染状況を把握するとともに、ノラネコ(イエネコ)由来のウィルスがツシマヤマネコに感染拡散することを防ぐ具体的な手だてについて皆さんとともに考えていきたいと思っています。  <T2・Ask>


とらやまの森第11号

 

現在のページ 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08


[ ホーム ] → [ とらやまの森バックナンバー ] → [ とらやまの森第11号2ページ ]