対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第8号

 

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フィールドノートから 検疫編


 前回第7号のこのコーナー~捕獲編~で、生態や行動を明らかにすることを目的としたテレメトリー調査のための捕獲に成功したところまでは説明したが、今回は捕獲したツシマヤマネコをどのような順序で検査していくのかについて、昨年11月13日の例で話をしよう。
 対馬野生生物保護センターの検疫室に運んだヤマネコをワナから飼育ケージに移し替える作業に入る。このときにはヤマネコはかなり動揺している。あまりストレスを与えないようにワナごと体重を測った後ケージに移す。ヤマネコがオスなのかメスなのかは気になるところだが、顔つきなどで、このヤマネコはメスだろうとか、いやいやオスだ、などと想像をふくらませながら、水入れ容器に水を入れ、ケージの扉を閉める。エサは与えない。なぜならば、検査のときに麻酔をかけるためヤマネコが吐いたりしないようにだ。それからすばやく検疫室から出る。なるべくヤマネコに影響を与えないためだ。

 翌日、前もってお願いしていた獣医師の先生の協力のもと、捕獲したヤマネコの検査をする。ヤマネコに麻酔をかけるためにケージの狭体装置で保定したあと獣医さんが麻酔を打つ。しばらくすると効いてきて動かなくなる。ケージから出し体重を測り雌雄を確認、メスであることが判明。その後血液を採取する。これは、血液からFIV(猫免疫不全ウイルス)、FeLV(猫白血病ウイルス)、FCoV(猫コロナウイルス)、FPLV(猫汎白血球減少症ウイルス)、FHV(猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス)、FCV(猫カリシウイルス)、Tox(トキソプラズマ)などに感染していないかを調べるためで、採った血液は、検査をしてくれる業者や大学に送る。FIVとFeLVに関しては、センターでも簡易検査ができる。検査結果が出るまでの3~4日は検疫室で飼わなくてはならない。もしも、ウイルスに感染していた場合には野生に戻すことができず、No.2(ウイルスに感染しているため隔離飼育しているヤマネコ)のように一生面倒を見なくてはならない。今のところ、幸いにしてNo.2だけだが…。検査の結果、今回のヤマネコはすべて陰性だった。

 麻酔が効いているうちに全長など体の大きさを測り、尿検査をして、歯の状態などもみる。このメスのヤマネコは、体重3,110g、頭胴長523mm、尾長242mm、胴周320mm、首周152mm、後足長(右)106mm (左)105mm、耳長(右前)46mm(左前)48mm、頭幅63.5mm、頭骨長99.6mmで、歯の状態は、少し欠けている部分もあるがきれいである。オトナの大きさではあるが、まだ若い個体のようだ。

 各部の計測が終わると今度は電波発信機付きの首輪を付けるわけだが、ヤマネコの行動にできるだけ影響がないようになるべく軽いものを、首が太ることも考慮して外れない程度にゆるめに付ける。首輪の色は、黄色いものをチョイスした。反射テープをつけているため、車のライトなどに照らされると分かり易くて交通事故に遭いにくく、個体識別をするときにも役立つ。
 全ての作業が終わると、麻酔を醒ますための注射を打ってケージに戻し、しばらく待つ。すると、ふらつきながらも頭を持ち上げ、しっかりと立ち上がろうとする。完全に目覚めたのを確認し、水、エサを少し与えて検疫室をあとにする。(次号につづく)  <Mk・T2>


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