対馬野生生物保護センター

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とらやまの森
環境省 対馬野生生物保護センター ニュースレター

とらやまの森第1号

 

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とらやまの森


 山のすそ野を彩ったゲンカイツツジやコバノミツバツツジに代わってヒトツバタゴが満開になろうとしています。間もなく実るクサイチゴは野山で遊ぶ子どもたちとツシマテンとで山分けされるでしょう。対馬の一番美しい季節が巡ってきました。今年は少し季節の移ろいが早いようです。ツシマヤマネコのお母さんもそろそろ出産、子育てをしていることでしょう。

 対馬野生生物保護センターのニューズレター、「季刊とらやまの森」第1号をお届けします。対馬野生生物保護センターはツシマヤマネコをはじめとする対馬の貴重な野生生物の調査研究や保護対策の実施、情報の紹介などを行っている施設で、昨年夏(1997年7月31日)上県町棹崎公園内にオープンしました。オープン以来日本全国や隣国から既に1万人近くのお客様に訪れていただき、これまで対馬にはなかった野生生物専門のユニークな施設としてご好評をいただいています。

 ツシマヤマネコはかつては対馬全島に約300頭ほど生息していて、狩猟の対象だった頃には毛皮のえりまきになったり時にはいりやき鍋の具になって食膳を賑わしたりしたそうです。場合によっては庭先で飼っている鶏がヤマネコに持って行かれるということもあったでしょう。

 しかし、ご存じのとおり現在ではツシマヤマネコはとても数が少なくなってしまって、私たちの最新の調査結果では生息数は全島で約70〜90頭と推定しています。しかも生息環境の悪化やウィルス性感染症の影響などで今後もなおきびしい状況が予想されます。そこで現在、国や県や町などの行政機関、大学などの研究機関、民間団体や地元住民の方々などが協力しながらツシマヤマネコを保護するためのさまざまな事業を実施しており、対馬野生生物保護センターはその拠点となっています。このまま放っておけば近い将来絶滅してしまうかもしれないツシマヤマネコですが、ではなぜツシマヤマネコを絶滅させないように保護しなければならないのでしょうか?

 ツシマヤマネコは何万年も前からここ対馬の森で人々と共に生きてきました。時間が育んできた対馬独特の自然とその中で人々が育んできた対馬独特の文化。野生の生き物たちも人間も懐の深い自然環境を生活の基盤として利用してきました。純肉食の哺乳類であるツシマヤマネコは、対馬の生態系食物連鎖の頂点に位置しています。対馬の自然のシンボルといわれるゆえんです。ツシマヤマネコがすむ森はヤマネコの生活を支える全ての要素を備えた健全な森であり、ツシマヤマネコの存在は自然環境の健全さの指標とも言えます。人間は少しずつ自然を自分たちの生活に便利なように改変してきました。人間の経済活動の過程である開発を否定するわけではありませんが、対馬が「対馬」であり続けるためにはツシマヤマネコが生活できるような自然環境の保全が必要になってきています。もし対馬がツシマヤマネコを失ってしまう日が来るとしたら、それは対馬が独特の豊かさを失ったただの「不便な離島」になってしまう日なのかも知れません。そのあたりのことを「とらやまの森」を介して皆様とともに考えていきたいと思っています。

 季刊「とらやまの森」は年に4回の発行を計画しています(第2号は8月発行の予定です)。対馬野生生物保護センターのニューズレターという形で今回は本センターの職員が執筆していますが、次回からは皆様からの寄稿や投書をもとにツシマヤマネコをはじめとする対馬の野生生物の現状や将来を話し合う公開誌上議論の場にしていきたいと考えています。もちろんページ数も増やしていきます。そこで皆様からのご意見を広く募集いたします。対馬野生生物保護センターを訪れてみた感想や現在行われている保護事業に対する希望あるいは反対意見、最新の生き物情報など何でも結構です。対馬野生生物保護センターまで郵便、ファクス、持参、電子メールなどでお寄せ下さい。あなたからのご意見や情報が「とらやまの森」を支えます。また「とらやまの森」は野生生物保護に関心がある方々を中心に沖縄から北海道まで全国に配布される予定です。

 虎毛の山猫という意味で昔から対馬の人々に「とらやま」と呼ばれて親しまれてきたツシマヤマネコ。そのとらやまが再び対馬の森を自由に駆けめぐり、人々と共に生きるような時代が来ますように、という願いを込めて「とらやまの森」を発刊します。


とらやまの森第1号

 

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